こんにちは。スタイリストの井上和子です。
早いもので春も終盤、桜が咲いて散るころには軽く汗ばむ日もあるようになります。
四季の移ろいが楽しめる日本も、近年では4月でも25度以上の夏日があったり、10月でも30度を超えたりと夏の季節が長くなっています。気温は衣食住あらゆる分野に影響がありますが、衣替えの時期も早めになってきているように思います。
本来6月が衣替えとされていますが、これに関しては柔軟に考える人達が増えています。袷から単衣に替わる着物ですが、いくら暑いからといっていきなり薄物とはいきませんので、さらりとした肌障りの綾織やお召など透け感のないもの、そしてやや透け感のある夏紬などになり盛夏用の紗、上布、絽のような薄物になります。
前回は袷の着物の袖口と振りからのぞく重ねの色目についてお話ししましたが、今回はスタイリストの目線から見た、夏の長襦袢コーディネートについてお話したいとおもいます。着物の下に着る長襦袢ですので、そんなに違いがあるのと思われるかもしれませんが、今、長襦袢は色や生地も非常に魅力的で豊富になっています。特に薄物の場合はそのごく薄い二枚の布地が重なりあってすかし絵のように見えますので、いかに涼やかに透かして見せるか、逆に見えないように落ち着かせるかが長襦袢の選び方で決められます。
例えば、黒い着物に白い襦袢はこのように色のトーンを上げます。
ところで、あなたは夏の長襦袢は何種類お持ちですか?
ほとんどの方が麻の白か洗えるシルクの白と言う方が多いのではないでしょうか。確かに白は一番夏らしく涼やかにみえますが、真夏感がでますので暑い日に少し早めに薄物を着てしまいたいときには違和感がありますね。その場合にはカラー襦袢のグレー系を着ると透け感が抑えられおちつきます。又透けない単衣で中を麻襦袢にするかたもありますが、白ではいかにも夏の物ですとなりますのでカラー襦袢のほうが違和感がありません。
写真をご覧ください。着物は同じでも見え方がかなり異なることがわかります。
また美しい地紋の織りだされた紋紗の長襦袢もエレガントな透け感を演出します。沢山の種類の中からごく一部をお話ししました。夏の着物姿は格別美しいのですが、汗という大敵がありますので機能性も大切ですが、一日着物を着ますと肌着から襦袢までは、その日のうちに洗いたいですね、夏物は乾きもはやいですから翌日に着ることも出来ます。白を何枚も持つよりも、色や素材を増やして夏着物を楽しむこともよいのではないでしょうか。一枚の着物が長襦袢の変化によって二つの表情を見せてくれます。
「夏の長襦袢は複数を着まわすこと」これは、上級者から初心者の方までにお伝えしたいことなのです。
スタイリスト 井上和子