4月ともなると、いよいよ、夏のきものシーズンが視界に入ってきます。
今年は例年にないほど「夏の着物は力を入れたい!」というご依頼が多いです。
コロナウイルスの影響で去年の春夏が吹き飛んだ関係もあるのでしょう、今年は絶対二年分楽しむ!という気合がひしひし感じられます。
去年から、春夏を素敵に演出する別注品を仕込んでいますが、いよいよ、大物が入荷しました。
当店でも高い人気を誇る、ビーズジュエリー作家「濱守櫻子(Sakuraco)」さんの羽織紐です。
こちらは、中央のストーンをはじめ、配色や柄、素材に至るまでを作りこんでいただいた、当店限定の作品(別注)となります。
まず、作品担当こと 私、井上英樹は着物や帯といった作品はもちろん、ヴィンテージバイヤーだったころの経験から「コスチュームジュエリー」という世界にもある程度の経験があります。
特にシャネル、グリポワのパート・ド・ヴェールなんてのは得意分野だったりします。
シャネルのコスチュームジュエリーは女性を豪華に見せるのではなく、美しく魅せるもの、という哲学が非常に有名ですが、その世界観にはほれぼれしますね。
さてさて、濱守さんの作品は、どこかゴシックだったり、重厚な配色だったり、力のある構成が印象的。
作品自体の印象が強く、着物や帯の上に「on」することで強力なアクセントになります。
ですが、今回の作品については「当店の薄羽織地」の軽やかさにイメージを持っていただき、どちらかと言えば、静かなトーンや透明感を意識して、制作をいただきました。
中央のストーンは高級感のある「天然の水晶」を贅沢に使用しています。
これは、当店が別注品として勝山さと子さんに制作をお願いしている薄羽織の透明感へのオマージュです。また、多面のカットが光を反射して含みのある色彩に輝き、高級感があります。
ビーズの重なりで色味の雰囲気は変化しますが、「ピンク系:mauve」「ブルー系:bleu」「パープル系:Tulip」と全てグレイッシュな色調で整えていただき、飛び柄でシルバーを入れていただきました。柄部分は一際に輝くスワロフスキーを使用しています。
紐の部分は柄を計算してビーズを通した糸をかぎ針で編み上げる「ビーズクロッシェ」という技法でつくられています。
パーツをつなぎ合わせていくだけではなく、しっかり感のある組上りとなっています。世界観だけではなく、あくまでも実用に耐える、質実剛健さがまた濱守さんらしい。
中央のクリスタルは10mmと小ぶりで、手に取ると実は小ぶりな印象を受けます。艶めきや輝きはあるのですが、あくまでも上品。羽織のコーディネートを格上げする名バイプレーヤーとしても完璧です。
先に書きましたシャネルの哲学「豪華ではなく美しく」、そんな一言が頭をよぎります。他にない羽織紐だと思います。
普段の世界観に比べると、ちょっと無茶を言った気がしますが、やはりプロのビーズジュエラーは違います・・・さすがの落としどころ、本当にありがとうございます。
作品担当 井上英樹