
今回は洛風林の新作「萩」九寸名古屋帯のコーディネートをご紹介いたします。ポイントはまさに帯です。まさにこれからの季節にぴったりの萩ですが、季節に合わせただけの新作ではありません…実は秘密のストーリーがあるのです。
洛風林 「萩」 膨れ織 九寸名古屋帯 白茶色



「真実に美しいものは常に新しい」の言葉を残した初代 堀江武氏の図案に関係する帯です。氏が三宅清次郎商店に奉公していた時代に手掛けた図案から制作された作品です。原案は昭和11年に制作、細部を変更した再図案化は平成3年の堀江武氏一周忌に合わせて行われたそう。
こちらは数年に一回程度・不定期に限定的に発表される図案とのこと。洛風林の帯の中でも希少な作品の一つです。
鈍く輝く金属糸を織り込んでありますが、フォーマルではなく趣味性によるもの。結城紬をはじめとする真綿紬や御召、つやのある織の着物、色無地や江戸小紋などに合います。萩は秋を感じるモチーフですが、他の帯同様こちらもかなり抽象的なまさに洛風林さん!な表現です。そのため、そこまで季節は限定せずに楽しめることと思います。心がくすぐられる作品です。私も含め。
染の川勝 色無地 着尺・共八掛つき 白茶(ニュアンスのあるベージュ系)× 花唐草


帯をメインに合わせた着尺は友禅染匠 京都 「染の川勝」の色無地。気品のある繊細な染めには息をのむような圧倒的な美が存在します。
花唐草の地紋が浮かぶ川勝オリジナルの生地で、生地は絹糸の中心部分、最も美しい箇所の糸のみを使用。経糸は通常の二倍、緯糸には天蚕糸を織り込んでいます。品の良い艶としわになりにくさ、そして美しい染め上がりを追求した「最高級の品質」が随所に感じられます。
京都の名染匠が加工を担当しますが、熟練の職人が一点一点丁寧に引き染めを施し、高級感のある色味を実現。圧倒的に美しく際立つ美しさのある色味をご堪能ください。
こちらは「白茶」奥底にほんのりと温かさを感じる美しい色味です。逸品の深みがあるからこそ、一色の色無地とはいえ光で濃淡を醸し出し豊かな表情を持つ色無地です。店頭で色見本から色を選びあなただけのオリジナル色を染めることも可能なことが何よりも嬉しい(はず)。
色無地を1枚は持ちたいと思う方も、2.3枚めには手持ちとは別にご自身に合った似合う色を増やしたい方、お気に入りの帯をさらに魅せる色で作りたい方、など、様々なシーンや想いに添う色無地は、是非トップクラスの品質の色無地を当店のオーダーでお楽しみください。
橋爪玲子 漆絵の扇子 「四つ葉 / 五色」 千成堂別注色 黒染の竹(黒系)


今回のコーディネートでとても良いアクセントになっているのがこちら、和歌山県の漆作家 橋爪玲子さんが手がけた扇子です。当店の提案を含んで制作をいただいたオリジナル作品となります。
親骨は黒染めの竹に漆絵の技法で両親骨に一つひとつ手仕事で四つ葉の絵付けを施してあります。グリーンやブルーの絵は色漆によるもの。美しい色彩、落ち着きの良い上質感のある作品です。ひとつひとつ丁寧に手間をかけ何度も塗り重ねられた漆は、その独特の温もりのある艶に表れます。
割れにくく、欠けにくく、そして軽い漆は、長くご愛用いただけます。
配色として使われているのは5色。繊細で力の入った仕事は「帯に挿して華やかに見せる」というコンセプトへ共感をいただいたものです。最近、ドラマなどの衣装がとてもカラフルになっているのを感じませんか?黄色にピンクを合わせるなど、私はドラマの中のコーディネートを見ては驚きながら楽しんでいます。ですが、そこまでの色合わせは女優さんだから…ドラマだから…とも思ったり。それでも、そんな華やかなカラーリングを感じては、自分なりの色を取り入れたくなったりはします。そんな時に、気分を満足させてくれるのが華やかな配色の小物です。
和装はもちろんのこと、洋装にも素敵です。まさに「今」の色を散りばめたオリジナルの逸品で、上品なコーディネートの仕上がりをお楽しみください。
渡敬 帯締め 新ゆるぎ線筋切房 (細ゆるぎ) 紫紺に生成色

最後のご紹介はこちらの帯締め「渡敬 × 江戸組紐 中村正」。帯締めの定番、ゆるぎ組とはなりますが、こちらは大変お薦めできる帯締めです。やや細め幅のゆるぎを合わせることですっきりとした帯回りを演出できますし、何よりこの美しいラインで想像以上の洒落感が堪能できます。
今一度、今日ご紹介したコーディネートをご覧いただけるとお分かりいただけると思いますが、この帯締めのラインの有る無しではコーディネートの仕上がりがだいぶ違います。まだお持ちで無い方は是非お手持ちに増やしていただけたらと思います。着姿のまた違う表情を堪能できる1本となります。
「実は」を含めて旬バランスを楽しみましょう
魅力を放つものの背景とは…その背景は、今回の様に帯の発表が数年に一度ある希少なものであったり、自分のマイカラーを決めて楽しむ色無地だったり、旬の配色の選択であったり、メリハリを魅せる小物だったり。背景まで知り、お気に入りを纏ったら何より自分の心や表情が変わるはず。まずは、自分だけの「実は」を感じて少しずつ秋の始まりを楽しみましょう。
<スタッフ マキコ>