最も希少な本場結城紬「本場夏結城/野村半平工房」のコーディネートを考える

こんにちは、千成堂着物店 井上英樹です。

当店の傾向で12月くらいから夏物が動きます。特に動きが速いのが、希少な紬・工芸作家関係です。安定生産ではない「 ある時にしか無い 」ものだからでしょう。

産地で年間●●反しかできない。作家の気分でしかできない。糸の絶対数が少なく、そもそも織れない。当店でも仕入れるチャンスはバラバラ。季節に関係なく仕入れて、お好きな方に真っ先にご案内するしかないのです。

さて、そんななかでも、もっとも希少なお品があります。今回ご紹介する「 野村半平工房 本場夏結城 」です。

野村半平 本場夏結城 : 千成堂着物店 公式通販サイト

どのくらいの希少さなのでしょうか。まず、比較したいのは「越後上布」。こちらも産地での年間生産数は10反程度。その知名度と完成度で探す人も多く、ご存知の通り入手困難です。

重要無形文化財 越後上布着尺 :千成堂着物店 公式通販サイト

比べて、こちらの本場夏結城、なんと「数年で一反 」程度の生産となっています。点数だけでいうなら、越後上布を超える少なさです。

織物の希少さを決めるのは、なんといっても糸と織の難易度です。織ることが難しければ、量をつくることができないためです。例えば、越後上布は極細の手績み苧麻糸を使いますが、これは現時点 福島県の昭和村が唯一の産地です。上質な糸をつくることができる職人さんたちも、高齢化もあり、仕事を続けることが難しくなっています。この時点で、最も大切な糸の確保が難しくなります。

野村半平 本場夏結城 : 千成堂着物店 公式通販サイト

本場夏結城は緯糸にその極細の苧麻糸を二割程度使用します。そして、残りの八割は同じくらいの細さの「真綿の手紬糸・手括りの絣糸」をつかいます。これは160亀甲以上の本場結城紬につかわれるものです。

結城紬の産地では、亀甲の細かさにより、糸を作る職人さんが異なります。160亀甲以上の本場結城紬自体、結城紬の産地でも作られておらず、職人さんも減少の一途。とにかく、良質な糸の確保が難しい。

この糸がなければ、羽根のような質感がでません。替えは効かないのです。

さて、素材は何とか手に入りました。次に立ちはだかるのは・・超技術の地機織です。

本場結城紬産地には現在も数十件の機屋さんが存在しますが、本場夏結城を織ることができるのは、「野村半平 工房」一軒のみと聞いています。

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本場夏結城は、絣の本場結城紬と同じ地機で織ります。地機織りは高機と比べて、大きな筬をつかいます。筬というのは緯糸を打ち込むときにつかうあれです。筬を力強くガンガンと二回打ち込むのが、地機の本場結城紬の特徴です。極細の糸をつかう本場夏結城の場合、その力強い打ち込みが難易度を上げます。打ち込みが強すぎると、ぎゅうぎゅうに緯糸が詰まってしまい、織り目に空間ができません。それでは夏物らしい透け感がでません。

ルーペで見るとよくわかるのですが、本場夏結城には適度に作られた糸と糸の空間があります。適度な打ち込み、これが難しいのです。

そして、地機織りは右手と左手の力加減を間違えると、どんどん曲がってしまいます。絣を合わせながら、打ち込みに気を付けて、繊細な力加減でまっすぐ織り進む。その難易度の高さも、「苧麻糸を使った結城紬」を知り尽くした、野村半平工房でしかできない理由です。

本場夏結城は最も細かい絣でも80亀甲。100亀甲以上が現時点存在しないのは、それも理由です。

今、絣糸に触れましたが、今回ご紹介する80亀甲の本場夏結城は、反物すべてに絣を入れた、総絣。産地では「 ベタ 」とよばれるものです。

亀甲絣は、経糸と緯糸に先染めの糸を使う、非常に手間と技術が必要な経緯絣(たてよこがすり)です。絣糸の量、手括りの数が多く、高価な糸となります。無地→飛び柄→総絣と価格が全く異なるのも紬の特徴。こちらのように、一反すべてを埋め尽くす総絣ともなれば、その価値もトップクラス。

では、その最上級の糸と、手間のかかる絣柄と、極限に難しい地機織の技術で表現したいものはなんでしょうか。

本場夏結城はその薄さに魅力があると思います。暑い時期に爽やかに着こなしたい、夏の着物。その薄さが格別な雰囲気です。そして、真綿の手紬糸を使った独特の質感、控えめな光沢感、本場夏結城だけが持つ魅力です。

いろいろな意見があるとは思いますが、本場夏結城はあの越後上布にも勝る織物かもしれません。

越後上布は全てを手績みの苧麻糸で織る、本場夏結城より、さらに薄手の織物。素朴な織物の究極であり、手仕事の味わいは本場夏結城をしのぎます。ですが、その素朴さはどうしても、女性的なエレガンスにやや欠ける。

紬の着物にエレガンスを見つけたい当店としては、やっぱり、本場夏結城のエレガンスも評価したいのです。(もちろん、越後上布も最高ですよ。当店もコレクションしています。)

さて、そんな本場夏結城。どのようにコーディネートすると素敵に着こなせるのでしょうか。

今回セレクトした本場夏結城ですが、白よごしの地色に黒系の亀甲絣ですので、遠目にはグレー系に見えます。グレー系の着物は、モノトーン系の帯はじめいろいろな帯が合います。ということは、非常に合わせる帯が多い着物ということです。

ですが、その独特な質感と高級感に負けない帯を合わせることが原則ではないでしょうか。

そうなると、手仕事の上質な織の帯を選びたいです。質感の高い原始布や、工芸作家さんの手織紬帯が合いそうです。

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例えばですが、こちらの宮古上布はいかがでしょうか。自然布の帯ですが、格子の柄で現代的。落ち着いた配色が着物のもつ雰囲気をさらに引き上げてくれます。足元はこれまた希少なパナマの草履。足元までこだわりたい。

数ある夏の着物の中でも、最高に希少で、最高に美しい一反、野村半平工房の本場夏結城。最上級の夏姿をお探しのあなたに、ぜひ、おすすめの一反です。

諸事情により、インターネット上での価格発表ができません。お気軽にお問合せください。店頭では資料やこの一反にまつわる裏話もご用意してお待ちしております。