染織家 築城則子氏の小倉織(小倉縞)の作品を、正規取扱開始いたしました。
先生のお仕事や制作の状況によりますが、色のお誂えもご案内できるようになりました。
小倉織とは
小倉織とは、驚異の質感を持った綿織物
「小倉織」とは、豊前小倉(北九州市)で織られる木綿織物の一種です。
極細の綿(めん)を経糸と緯糸に使って織り、「なめし皮のよう」とも称される、滑らかさが特徴です。なかでも経糸には独自の工夫があり、密度は緯糸の3倍程度使います。非常に丈夫で地厚な織物です。
かつては、産地では武士の袴や帯として織られていました。あの徳川家康も好み着用したと言われています。
途絶えた小倉織を復元した、築城則子氏
嘉永年間(1843-53)が最盛期とされ、幕末における長州藩との戦争や専売制度の失敗などにより急速に規模を縮小。かろうじて残った織家さんが細々と生産を続けていましたが、日清戦争などの影響もあり、時代の移り変わる昭和初期までには、350年以上続く歴史は途絶えてしまいました。
築城則子氏は、この小倉織の袴地(端切れ)に魅せられ、自身で集めた古い資料を元に、小倉織を1984年に復元されました。
現在は小倉織再興の第一人者として認知されています。
今日では、その高いデザイン性も高い評価を受けています。
銀行の通帳やホテルの内外装はじめ、様々なプロダクトやアート作品にも採用されています。
実用のなかに美を宿す、まさに現代を象徴する工芸品です。
小倉織を究極の洒落帯として、味わう
築城則子氏の作品は希少性が非常に高く、極限られた流通となっています。
工芸作家の作品を多く取り扱う呉服専門店でも、なかなか実物を見ることは難しいです。
また、その時々に異なるインスピレーションを反映させた作品であり、二度と同じ作品が流通することはありません。逃してしまうと再度手に入れることは難しいです。
作題 梅林(ばいりん)
今回、ご紹介させていただく作品は「梅林」と題された作品です。氏の作品には直筆の署名と作題が記載されています。
シューッと真っ直ぐに引かれた縞が実に爽やか。築城則子氏は「曲がったことや交差が嫌い」との話を伺いましたが、筋の通った気質がこの美しい縞を生み出すのでしょうか。
ただの縞ではない、その立体感を感じる
築城則子氏の小倉織はその規則的なリズムと立体感に鑑賞のツボがあります。
梅で染めた灰桜色に丁子色の縁取り、緑の濃淡の線・・。透明感はありますがその各色は深い含みを感じます。長い年月の研究で蓄積した天然染料を使うことにより、一朝一夕には出せない色合いです。他にはない、美しさを感じるのはそこが理由です。
築城則子氏の小倉織帯にみる、先進性
なぜ、こちらの作品「梅林」を当店で取り扱うと決めたのか、それには理由があります。
今回、作品のプロデュースを手掛けたのは京都の紬問屋さん、当店も少なからずご縁をいただいています。中でも氏の作品の流通を聡明期から手掛けてきた、社長氏の言葉が印象的でした。
「これは、これからの帯です」
これからの着物コーディネートを実現する、配色
当店、千成堂着物店は紬や小紋など、いわゆるお洒落着物と帯を主に取り扱っています。
旬の空気を捉えて、スタイリングで表現することには、最もこだわりを持っています。
今まではお洒落な着物と言えば、”グレイッシュ・都会的・モノトーン”をモチーフにしたコーディネートを中心に行っていました。ですが、確かに大きな変化がありました。
それは、これからの着物、特に紬の着物にはエレガントさや女性らしさが必要になるだろうということです。
築城則子先生の活動は多岐に渡り、小倉織の帯も今までに発表された作品が存在します。
その縦縞の意匠と武士に愛された柄であるという歴史から、すっきりと男性的な作品が多く発表されていました。
今まで提案してきたグレイッシュな着こなしには、きっと抜群の相性だったと思います。
しかし、今回入荷した作品は柔らかい配色であり、どこかホッとするような表情があります。
もちろん、すっきりシュッーとした縞には、小倉織の持つ独特の緊張感があります。ですが、この帯には、どこかたおやかな女性らしさを感じます。
そうです、緊張感や都会的なスタイリッシュさではなく、これからのキーワードになりうる、女性らしさや、エレガンスがある帯なのです。
また、この緑もポイントです。
紬好き界隈では緑色は通が好む色であり、少し”際(きわ)”を感じる色です。
その分、手に入れて、使いこなしている層は多くなく、これから挑戦していきたい色ではないでしょうか?
築城則子氏 小倉織の帯をコーディネートする
さて、築城則子先生の「梅林」を使った、スタイリング担当:井上和子のコーディネートをご覧いただきたいと思います。
小倉織の帯に、横山俊一郎さんの三才山紬の無地を合わせたコーディネートです。
帯回りの小物は和小物さくらさん、南部表の草履は菊之好さんのお品です。
この小倉織の帯「梅林」の持つ色あいを活かして、カラーコーディネートしました。
ご覧の通り、素朴さや手仕事の領域に偏らない無い、新しい感覚の紬コーディネートです。
ですが、上溝桜や梅などから抽出した植物染料、手織りの味わいが、さらに高い質感と高級感を醸し出してくれます。
エレガントな色味のコーディネートですが、若草色の帯締めを合わせることにより、さらに新鮮で爽やかな味わいを加えることができました。
緊張感や素朴さを強調せず、女性の普遍的なエレガンス表現する、紬のコーディネート。
これからきっと本流に乗っていくであろう、新鮮な感覚の紬コーディネート。
今回、入荷した「梅林」はこれからの帯と思うのは、ここからです。
今回ご縁をいただきましたが、正規取扱店として、お仕立てやアフターケアまで含めて、万全な体制でご案内が可能です。
また、トータルコーディネートももちろんお任せください。
他にない帯をお探しのあなたに、心からお勧めいたします。
築城則子氏のプロフィール
築城則子 (ついきのりこ)
日本工芸会正会員
福岡県北九州市 遊生(ゆう)染織工房 主宰
1952年
福岡県北九州市生まれ
1974年
早稲田大学文学部中退
染織研究所、久米島、信州で紬織について学ぶ
1984年
小倉織復元
1994年
小倉縮復元
1996年
北村武資氏による文化庁伝承者養成研修者に選出
北九州市立美術館にて個展「築城則子染織展」
1999年
東京銀座 和光ホールにて個展「築城則子染織展」
※1999年・2003年・2013年
2004年
東京国立近代美術館「非情のオブジェ-現代工芸の11人」に出品
2005年
第25回伝統文化ポーラ賞 優秀賞 受賞
「Wings Of Cicada 織の挑戦者たち」(ロンドン)に出品
2007年
文化庁芸術家海外派遣 ロンドンにて研修
2008年
第42回日本伝統工芸染織展 文化庁長官賞 受賞
京都 堺町画廊「築城則子染織展」
2009年
九州国立博物館 特別展「工芸のいま 伝統と創造」
-九州・沖縄の作家たち-に出品
財団法人民族衣裳文化普及協会よりきもの文化賞受賞
2012年
文化庁主催海外展「日本のわざと美:近現代工芸の精華」(フィレンツエ)に出品
2014年
北九州市立美術館分館 「築城則子―縞の今―」
2015年
菊池寛実記念 智美術館「工芸の現在」展
第一回菊池寛実賞受賞
2016年
ミラノデザインウィーク2016 ミラノ大学「Parabolic Stripes」出展
作品収蔵
2004年
東京国立近代美術館 小倉縞木綿帯「分水嶺」収蔵
2006年
東京国立近代美術館 小倉縞木綿帯「丹心」収蔵
2006年
Victoria&Albert Museum(London)
小倉縞木綿帯「瀑音’04」収蔵
2017年
北九州市立美術館 小倉縞「連鼓」 小倉縞木綿帯「芳福」「奔流」「紅丹奔流」
2017年
財団法人日本伝承染織振興会 絹混小倉縞木綿帯「月想夜曲」
作品受賞歴
1983年
紬織着尺「水沢」福岡県美術展/福岡県美術協会賞
1986年
小倉縞木綿帯「草笛」西部工芸展/福岡県知事賞
1991年
小倉縞木綿帯「梅の頃」西部工芸展/朝日新聞社銀賞
1992年
小倉縞木綿帯「SATURN 土星」西部工芸展/
KBC九州朝日放送賞
1997年
小倉縞木綿帯「如月」西部工芸展/日本工芸会賞
2002年
小倉縞木綿帯「瀑音」西部工芸展/長崎県知事賞
2003年
経錦帯「天空の宴」西部工芸展/福岡市長賞
2006年
小倉縞木綿帯「花待ち」西部工芸展/大分市長賞
2008年
小倉縞木綿帯「月影」日本伝統工芸染織展/文化庁長官賞
2010年
小倉縞木綿帯「朧影」西部伝統工芸展/朝日新聞社大賞
小倉縞木綿帯「面影」日本伝統工芸展/日本工芸会奨励賞
2013年
小倉縞木綿帯「奔流」日本伝統工芸染織展/京都新聞社賞
デザイン制作
1991年
北九州市立医療センター
1993年
リーガロイヤルホテル小倉
1994年
サンアクアTOTO
1998年
ステーションホテル小倉
2000年
北九州市勝山橋・橋面デザイン
2008年
九州労災病院 インテリアデザイン
※2008〜2010年
2013年
福岡銀行北九州本社ビル
2015年
井筒屋80周年記念包装紙デザイン
2016年
永照寺歸命殿オブジェ制作
2017年
ミクニワールドスタジアム北九州壁面装飾