作品担当 井上英樹です。
色々な意味で厳しかった冬が、ほんのりと春に変わっていきます。
風もどこか穏やかになり、気のせいか、花の香りもかすかに漂っているようです。
そんな今日この頃、人気の硝子作家 古川莉恵さんから、「春」が届きました。
2021年 春の限定色は「さくら」です
確か、あの時は12月の年の瀬、クリスマス頃だったと思います。
前回「月の光」コレクションを発表したあと、次回作の相談をしたときです。
「納品の時に、行けると良かったんですが・・」
と、そんなお話を伺ったのを覚えています。
あの時はコロナウイルスで自粛が最も必要な時でしたし、クリスマスという一大イベントも、お家で過ごすことが基本で、なんとなく、もの寂しい。
仕事とはいえ、中々その中を突き進むのは難しく、古川さんともオンラインでのやり取りでした。
ですが、メールの結びに
「ではでは 引き続きどうぞよろしくお願いいたします。そして メリークリスマス!」
とお人柄そのままの明るい言葉があり、ホッと心が温かくなりました。
その時思ったのは
「・・そうだ、次は、古川さんにあたたかい作品を頼もう。」
ということ。
切子の帯留「かすみ」と「はなび」を、さくら色に
古川さんの作品をご紹介する時、必ず「シーズンレス」という言葉を使ってきました。
それは、硝子の彩色のトーンや濃度に気を付けて、寒く感じなくするという視覚効果を狙ったもの。
今回はもう一歩進めて、あたたかみのあるカラーリングに挑戦していただいたのです。
かつて、古川さんが手掛けたピアスの配色のバランスを参考に、「春」を感じる色目のオリジナル配色を考えていただきました。
実は、途中の段階ではもう少し青の部分が濃く、コントラストが効いた作品でした。
拝見した段階で、青みを少し落としてもらい、春のイメージを強調していただきました。
「ほんのりと、香りが風に漂うように」
「桜色から菜の花のような色、そして、風の色」
うーん、これは素敵。
切子のラインがキラリとアクセントになって、すっきりと見せてくれるのも、また良い感じ。
「pebble」と「はなび」のピアスも、さくら色に
前回・前々回と一瞬で完売いたしましたが、古川さん制作する「ピアス」は、本当に素敵。
帯留めと統一したコレクションを展開するべく、ピアスたちも春色に染めていただきました。
古川さんの定番として展開されている「pebble(ぺブル)」は、少し角丸にアレンジしてもらい、帯留「かすみ」とリンクするように、「はなび」はもちろん帯留め「はなび」とリンクします。
写真ではなかなか表現が難しいのですが、色の裏に潜ませた鏡が光をふんわりと反射して、とってもきれい。
ポストの部分は高級感のある18金イエローゴールドにアップグレード。
やさしさの中に、エレガンスを潜ませたジュエリーに仕上げてあります。
私は「耳まわり」というのは、和装小物に残された最後の聖域だと思っています。
古典にはないものですが、アップにした髪型に素敵なピアスは着こなしのバランスも取れます。
今こそ、挑戦をいただきたい最新の和装小物です。
(もちろんですが、洋服にも合います。)
全作品、各1点限定で発表いたします
古川さんにお願いしている硝子の作品は基本的に再制作をせず、限定品として発表します。
といいますのも、先に書きました「ストーリー」や想い、時代の空気感を一気に描き切るため、同じ雰囲気をさらに頼むのは、ちょっと違うような気がしています。
今回は、クリスマスにあったどこか寂しい空気から、ほんのりと温かい春の情景に変わり、心もゆるみ、解けていく・・そんなところを込めました。
古川さんの作品に流れているのは「その時代の空気や風」。
今回の作品に込められたなにかも、感じていただければ幸いです。
もちろん、「シーズンレス」で制作していますので、ふと、思った時に手に取って、その素敵さを楽しむのが第一ですけれど。
時には、あの時に想いを馳せてみるのも、いい。もう春だからね、いいでしょう。
作品担当 井上英樹