「染ものは生地で決まる」
とは、着物の世界では良く聞く言葉です。
型染や友禅染で描き出す色とりどりの世界は、生地の風合いや質感で全く異なった表情を見せます。
特に、質感や風合いにこだわる紬好き、染織好きの間では、いかに生地を選び着物や帯を完成させるかがポイント。
染色作家さんの作風にぴたりと合った生地を見つけ、選ぶことはまさに喜びそのもの。
さて、そんなこだわり派のあなたに、ぜひご紹介したい帯地が入荷しました。
「寒ずきの諸紙布 八寸帯地(雪さらし済)」です。

これは、新潟県十日町市にある、とある織元さんに制作をお願いした、当方オリジナルの帯地になります。
程よい生成りみのある白と、品よくまとまった節の具合が最高。どんなテイストが良いかと思いが膨らみます。でこぼこは控えめですので、かなり幅の広い作品へと対応できるのではないでしょうか。
上布や芭蕉布の着物に合せてもきっと映える。その上質感もかなりのものです。(そして、意外に価格は控えめ・・)
この織元さんは和紙を使った紙布をはじめ、自然布など高度な織物を得意としており、その技術力と作家性で業界では一目置かれる存在。
現在は受注生産的にしか基本的に動かず、こだわりの作品を手に入れるには、なかなかに苦労があります。
今回の紙布の帯地は、雁皮の状態で雪さらしを行ったのち、手すきを行い、機にかける「寒ずき」という技法で制作された紙布です。
経緯ともにその糸を使った「諸紙布」であり、型染の生地に適応するべく、織上がり後もう一段階の雪さらしを加えてさらに白さを出してあります。

雪さらしをしている写真を送っていただきましたが、まだかなり色が残っていますね。ここから、あの白さに持って行くというのだから自然ってすごい。(4日かかったそうです)
主に型染めなのですが、帯にした時の面白さや、力のある紬地の着物に負けない表情が生地にあると、何倍にも素敵に魅せることができます。
今回の帯地は二点上がっており、一本は当方のオリジナル作品として何らか制作、もう一点はお客様の別注品(または無地帯へのお仕立て用)として、当店で保管しておこうと思います。
と言いますのも、糸の準備から途方もなく時間がかかり、また雪さらしが必須のため、気候条件で雪が少なければいつになるかが全く読めません。
秘蔵の帯地、気になった方はお早めにお問合せ下さい。
作品担当 井上英樹