
今回、ご紹介するコーディネートのテーマは、繊細な色と織りの技を極めた「上質なカジュアル」です。
こちらは、首里織を代表する染織作家 山口良子先生の貴重な作品です。( 山口先生は首里織の人間国宝である宮平初子氏・染織家 柳悦孝氏に師事。那覇伝統織物事業協同組合の前理事長。)
首里道屯織の着尺を、藍と薄藍で、実にシンプルに活かした作品です。藍染に使用している琉球藍は、沖縄の伝統染色には欠かせない染料ですが、栽培方法が過酷なため、現在は大変貴重なものとなっています。全て空気媒染からなる、独特な深みを持った琉球藍には、沖縄の文化の色が伺えます。
「藍」だけでお話しますと、個人的に藍色は日本を感じる色。「ブルー」とは違い少し「黄色味」が入るからでしょうか、その若干感じる「黄」が肌の感覚に合い、日本人にとても相応するのだと思います。一着は持ちたい色であり、神秘的で、自分のお気に入りの藍を探し求めたくなる色です。
首里織は、琉球大国の王妃が着用した高貴な織物がルーツです。その首里織の中で、「首里花倉織」や「首里花織」などの技法がある内の、こちらは「首里道屯織」(ロートン織りとも呼ばれる)ものになります。首里道屯織は、平織地の中に部分的に糸の密度を濃くして織られる特徴があり、そのことから両面使用が可能です。裏も美しいため、単衣におすすめいたしますが、もちろんお好みで袷にもお仕立ていただけます。
手織りならではの空気を感じる風合い、角度によって変わるいきいきとした織物の表情、穏やかな艶めきを魅せる繊細な感覚をぜひご堪能ください。
合わせます帯は、山岸幸一氏作 八寸帯「最上」です。当店の作品担当 井上が、山岸先生と直接お会いする機会があり、これ以上ないご縁をいただいた作品です。 山岸先生は、自然の全てに気を配り、創作の全てにこだわりを持って、自らの「最高」を追及し続けています。伝統的な紅花の染めはあまりにも手間と時間、そして技術が必要です。その結果として生まれる究極の色彩と、質感全てが、生涯の大半を捧げた「作品」となります。
山岸先生の技術は勿論のこと、何より魅力なのはその「心」です。実際に身に着ける方に想いを巡らせ、着た時に幸せになってもらいたい。その「想い」が、独自の技術による染めや織りなどの細部にまで宿る一つ一つの作品です。
複雑に絡み合う色彩は、どれも活きていて活かされています。それら糸が醸し出す雰囲気は果てしなく優しい。真の素晴らしさの追求は「素朴」であり、「純粋」であり、「本物」です。自然の恵みである「太陽」「風」「水」全てを感じ、「糸の声」を聞き、何年もの歳月をかけて目の前にある作品、それは1度見れば簡単には忘れられない「かたち」となります。
自然を集めて「かたち」になるまでには、それはそれは気が遠くなるような工程があります。それでも行き着くところ、「可愛い」「美しい」、それだけで良い気がいたします。本物は伝わるものです。溢れる想いは伝わっていくもの。ぬくもりは感じるもの。手から手へ、人から人へ、こうして作品は生き続けていきます。
ご覧いただくと分かりますが、垂れの部分には水色の横段が増え、やわらかい格子に模様が変わるところがお気に入りです。黄色いラインも、よく見ると途中から消えたりして、これらの見え隠れするラインが絶妙です。パステルカラーは歳を重ねると敬遠しがちですが、この帯はアクセントに入る濃い色が効いて一気に大人が楽しめるパステルカラーとなっています。実際に合わせてみると分かりますが、濃い色から淡い色まで幅広いお着物でお楽しみいただける帯です。
上質なカジュアルをまとめる小物は、和小物さくらさんの帯揚げ、衿秀さんの帯締め、季節を楽しむ帯留めは関口まゆみさんの作品です。最後のアクセントに帯留めでその時々の季節感を出すことは、お着物の初心者でも取り入れやすいのでおススメです。
スタッフ マキコ