
お正月は、嬉しいことにいつもより着物を目にすることが増えますね。普段は洋服の方も、お着物を着たくなる方が増えるのではないでしょうか。そこで気になるのはお正月に装う着物の「ルール」です。
今回は、井上和子の「折角だから、お正月っぽいコーディネートをしたいね。」という想いから生まれた華やかなコーディネートをご紹介いたします。
まずは、菱一の京友禅とまいづるの袋帯のコーディネートです。
松葉の吹き寄せ柄の着尺は、今は解散した東京を代表する染匠 菱一 (ひしいち) 制作 京友禅の付下げです。
上品な艶のあるちりめん地に、しぼは小さくなめらかで、とろりとした質感の高級生地を贅沢に使用しています。 少し青みがかった明るさのあるグリーン系の色みがここにしかない繊細な色で、ぼかしも入るエレガントな地色に、柄は松葉の吹き寄せ、アクセントの松葉には銀糸の日本刺繍も入り、さらに高まる質感です。
吹き寄せ柄は、秋のイメージがあるかもしれませんが、松葉のすっきりとした縁起物の柄ですので、お正月にも是非楽しんでいただきたい逸品です。

美しい着尺に合わせるのは、また美しい帯。西陣織、名門老舗のまいづるの袋帯です。
白の引き箔地に螺鈿を織り込んだ曲線の帯です。 「耀虹螺鈿」と題がつけられていますが、金彩と螺鈿で細かなラインが入った5つの曲線が右上がりに配されています。 螺鈿がふんだんに使用されており、その繊細な仕事には圧倒されるほどです。
豊かな輝きがもたらす表情は、たいへん美しく魅了されます。 上品な華やかさとはまさにこの帯のことですね。


逸品を上品にまとめ上げる小物は、帯揚げ、帯締め、共に渡敬さん。扇子は橋爪玲子さんの蒔絵の扇子です。こちら3点は晴れやかなコーディネートにご満足いただける特におすすめする小物たちです。

続いてご紹介するコーディネートは、染の川勝の付下げ訪問着と鈴木織物の袋帯。(※仮絵羽仕立ての着装です。掛け襟の波打ちは、本仕立てではでませんのでご安心ください。)

美しい京友禅の染卸として信頼の厚い、染めの川勝が表現する、内側から光を放つような上品な勿忘草色。空色から何段にもわけた暈し。 多段に染め分けた地は見惚れるような上質感です。
愛らしい六角箱を手描き糊糸目と金彩、ぼかしを駆使して繊細に描き込んだ工芸的な味わいの逸品です。花に、蒔絵に。箱一つ一つの模様に質感があります。さらに駒刺繍を効かせて作品を引き締める。 これが「京都のそめもの」・・職人の仕事に圧倒されます。
絵羽となっており、すっきりとした柄付けの訪問着という印象。生地はとろりとしたしぼ感の控えめな最高級ちりめん地です。
合わせる帯、織文意匠「鈴木」は、能装束や古典柄からインスピレーションを受け、上質な糸を惜しみなく使い織り上げる唐織や、季節を問わず締められる水衣錦など、古典的な美しさと現代的な雰囲気に定評のある名門です。 絹糸の艶めきを最大限に引き出す、ふんわりと盛り上がった唐織りは圧倒的な上質感があります。
こちらは「笹に波濤文様」の題を持つ袋帯。 その唐織の技法を生かした作品です。 立体感のある金糸で美しく表現した波、繊細な配色の笹。季節感を問わず楽しめる柄行きです。 白い地のすっきりした印象ですが、その糸の質感で袋帯の上質感を作りこんでいます。
合わせやすく、また一際に美しい。完成度の高い逸品に仕上がっています。


付下げ訪問着と唐織の袋帯でつくるベーシックなコーディネートは、ワントーンの小物使いがポイントです。帯揚げ、帯締め共に渡敬さん。扇子は上と同一の橋爪玲子さんの扇子になります。
さて、迎春に相応しい華やかなコーディネートはいかがだったでしょうか。その昔、新調した綺麗な着物を着て新年を迎える「着衣始め」という文化がありました。現代ではそこまでとは言わないものの、やはり華やかに晴れやかに新年をお迎えしたいものです。お正月の着る着物に「こうでなくてはいけない」というルールはありません。ルールは無いのですが、言葉に「言霊」があるように、私は纏うものにも想いが宿る気がいたします。ぜひ、晴れやかな着物のコーディネートに、皆様の幸多い一年となりますよう祈りを込めて。
スタッフ マキコ