作品担当 井上英樹です。
ファッションとして着物や和装を考えたときに、どうしてもアレンジの幅が狭く、なんとなく窮屈さを感じていました。
帯留めや扇子、日傘など様々なアクセントを考えてきましたが、今回の提案は中でも最も新しいものになると思います。
それは、「ピアス」です。
古川莉恵 アメリカンピアス 「モノトーン / 18K」 濃藍 千成堂着物店別注
こちらは、人気の硝子作家 古川莉恵さんに当店のオリジナルとして制作をいただいた揺れるピアスです。アメリカンピアスやチェーンピアスと呼ばれています。
素材はメッキではなく、18金を使用しています。
基本的に着物において、アクセサリーをすることは一般的ではありません。
指輪やネイルはもちろん、腕時計など現代の生活においての必需品すらも、制限があります。
その理由として、着物を傷つけるから、ということがありますが、よほど尖ったものでもない限り、そこまで着物や帯はダメージを受けるとは私には思えません。
伝統的な民族衣装である着物は、歴史を遡れば当然アクセサリーというものは存在しないでしょう。
ですが、すでに時は令和。伝統的な工芸品をいかにして現代のファッションと同じ土俵に上げるか・・と考えると、もう少しこのあたりの広がりが欲しかったのです。
ですが、大人の女性のファッションとしてベーシックで上質感の高い着物を追求する私たちです。
あまりにも突拍子もないものは、紹介できるわけもなく・・私はずっと悩んでいました。
さて、そんな私がなぜピアスを考えたかと言いますと、古川莉恵さんの作品に出合えた、という点が大きいです。
古川さんは、マットで繊細な硝子作品を得意とする作家さん、とある問屋さんの帯留めにパーツなどで参加していたりはしましたが、和装の畑の作家さんではありませんでした。
クラフト系の人気セレクトショップやギャラリーで作品を主に発表していることもあり、良い意味で和に留まらない、世界観が持ち味です。
そこで発表されていた、ピアスを見たときに、「この雰囲気なら、きっと着物にも合うはず」と思いが沸き上がりました。
私は、完成度と世界観がある作品たちに強く惹かれるのですが、古川さんの作品を見たときに、和装のへのプレゼンテーションを「あえて」挑戦していただきたく、思ってしまったのです。
本当は、この作品はチェーンがもっと長く、モードなテイストを感じる作品でした。
そのため、私は和装にも共通利用が可能なように、チェーンの長さを短くしていただく事を頼みました。
メッキパーツではその要件を満たすものは無く、18K素材のチェーンのパーツから加工をいただきました。
結果として、ラグジュアリー感のある作品が出来上がったのです。
シンプルでも、表情が豊かで、そして、和装にも洋装にもお洒落に映えること。
もしかすると、耳まわりのアクセサリーは新たな和装の地平を切り開くかもしれません。
テーマは宵、空の一瞬の表情を映した帯留め「はなび」と「かすみ」
今回、3点が入荷していますが、帯留の二点は「宵」という共通のテーマがあります。
宵というのは「夜になって間もない時間」のことです。
空に夜の帳(とばり)が下りて、夕から夜に移り変わる一瞬の情景、これをテーマにした配色です。
当初は江戸紫という色をテーマに考えていましたが、コーディネート担当の井上和子との打ち合わせ時に「これは、宵の闇というか、soir(ソワール、フランス語で夜)というか、そんな風情ね」という言葉をもらい、作品が上がってから急遽まとめたテーマです。
作品が上がってから、想いが沸き上がることって、少し素敵ですよね。
硝子の作品はどうしても夏のもの、という感覚がありましたが、今回の三作品はいずれもシーズンを超えた、落ち着いた艶のある作品となっています。
その繊細な煌めきと、輝石にも劣らない上質感。
大人の女性にこそ、挑戦をいただきたい作品に仕上がっています。
作品担当 井上英樹