その1、最近、本当に注目を集めている「白の紬」
そのすっきりした表情とエレガントな空気が、まさに、旬を感じる色です。
その2、そして、シーズンの解釈が変わった「単衣」
秋も春も気温が高い今、季節を問わずお仕立てする方、季節を問わずお召しになる方が増えてます。
二つの長所を持った、自信を持って紹介できる作品が沖縄から届きました。
「生」の紬糸を使った本場琉球絣です。
本場琉球絣 着尺 大城一夫 (大城廣四郎織物工房)
これは、日本工芸会正会員 大城一夫さんの本場琉球絣です。
絣糸の染めは草木染、熱帯の植物 カテキュー(阿仙薬)で出す茶系です。
絣の足を長く残すことにより、ただの十字絣とは全く異なった表情を織り出しています。
大城一夫さんは、本場琉球絣という伝統織物を芸術の域に高めた染織家、あの大城廣四郎(おおしろこうしろう)先生の御子息。
制作の技術はもちろん、現代的なセンスは高い評価を受けており、私も大好きな工房・作家さんの一人です。
この本場琉球絣は、生の紬糸を使っています。
そのため、通常の絹糸や紬糸で織った作品と異なり、さらりとして軽いハリがあります。
軽い透け感もあり、まさに単衣向きの風合いです。
問屋さんに詳しく聞いてみる
これを当店につないでくれた問屋さんの話を聞くと、このテイストは工房の得意技であり、昭和のころなどはもっと見ることができた作品だそうです。
ですが、現在となっては、制作反数は激減しており、なかなかに見ることができない希少品となっています。
正直に言って、私も欲しい時には必ず品切れしているイメージで、今回のように素敵な作品が、よいタイミングで入ってくることは珍しいです。
今、秋に向けて「袷」向きの反物を紹介する時なのでしょうが、私は、あえて単衣向きの紬は一年中ご紹介したいと思っています。
「あるときにしか、ない」という入手難易度の話はあるのですが、それは置いておいて・・
一番の理由は「旬の白・紬の単衣」の便利さ、素敵さに気が付いていない方が多いということ。
とにかく手に取って、このテイストをはじめて欲しいのです。
お仕立てに時間もかかりますので、単衣はいつでも作るべき
ご存じ、着物はお仕立てに時間がかかります。
春や秋の良い時期に着るなら、年中の仕立ては検討する必要があります。
そのためです。
帯回りをどう考えるか
沖縄の染織品は、その太陽の光に負けない、強い配色が印象的です。
ですが、落ち着いたあたたかみのある白や、草木染のやさしい茶を配した、大城さんの琉球絣は、その文脈を超えています。
ある意味で都会的ともいえるでしょう、本当にお洒落な感性の織物です。
合わせた帯は「喜如嘉の芭蕉布」これは、私が沖縄を訪ねたときに、平良美恵子さんにお願いした別注品となります。
この芭蕉布をはじめ、自然布の帯も実は「単衣~盛夏」にあう帯です。
そのため、この単衣向きの本場琉球絣と合わせると、かなりベストな単衣のコーディネートが完成します。
帯揚げには正絹の縮緬、しぼり。
帯締めは細めの二色使いのものを合せて、軽く。
蒔絵を施した扇子をアクセントに挿して。
そんな、コーディネートでいかがでしょうか。
着物はどうしても仕立てを考えなければいけないので、「夏には冬物」「冬には夏物」のような、半年先を見越した行動が、実は大切なのです。
結果として・・単衣は一年中お勧めしているのです。
作品担当 井上 英樹