「これは一生ものです!」「一生着られます!」
良く聞く営業トーク、あなたも一度は耳にしたことがありますよね?
今日はこの一生着られる着物というものについて、考えてみようと思います。
和装のものは、お値段の張るものが多いですから、大切に長く着られるものが良いですよね。
振袖や訪問着は一生着られるの・・?
ひと昔前、もしかしたら、今もかもしれませんが、
・ 着物は一生ものだからといって、高い訪問着と帯を勧められた
・ 振袖は袖を切れば訪問着として着られると言われた
という話がありました。
結論からいえば、私はどちらも無理だと思っています。
染の着物は経年劣化します
振袖も訪問着も、柔らかい絹の白生地に、友禅染などの技法で文様を描き染めを施した後染めの着物。
年月がたてば、生地の傷みや色褪せがおこります。
また、柄の流行もあります。
振袖に至っては、若いお嬢さんに相応しい大輪の牡丹や菊、松竹梅などが柄付けされますので、袖を短くすればいいというものではありません。
柄の配置を工夫すれば、切ることで「訪問着の柄付け」になる振袖は確かにありますが、これは少し違和感があります。
どうしても、一生ものというのは乱暴だと思います。
一生着られる、紬という着物

では、一番長く着られる着物は何でしょうか?
一番長く着られる着物、それは紬です。
一言で紬と言っても全国で織られてますので、染めや織りの特徴があり、それぞれにブランドの名前か付いています。紬は糸を先に染める先染めが共通の特徴です。
なぜ永く着られるのかというと
- 生地がしっかりしていて丈夫
- 暖かい
- 先染め糸なので洗い張りをして裏返しに仕立て直すこともできる
- 着るほどに馴染んで、着心地がよくなる
- 洗い張りをすると、真綿紬は表面の毛羽立ちが取れていき、滑らかになる
この様な生地の特徴によります。
代表的なものでは本場結城紬は三代着られると言われています。また、牛首紬は別名くぎ抜き紬とも言われるほどに丈夫な紬です。
永く着るためには・・色

もう一つ長く着るために大切なことがあります。
それは色柄の選び方です。
洋服ほどではありませんが、着物、帯、小物に至るまで流行はあります。
たとえば、以前流行っていたダーク系の着物から今は明るい白系や、柔らかくほんのりとした色味を感じる例えばグレイッシュな灰桜色などが人気です。
こんな色味でしたら20代から長く着られます。帯で変化もつけやすいです。
柄については、小柄な物がよく、無地の方がより飽きずに楽しめます。
永く着る、永く楽しむ
着物は洋服に比べると、流行が緩やかで、また、紬を選ぶと非常に丈夫です。
解いて水洗いする「洗い張り」など、適切なアフターケアを繰り替えせば、更に風合いは柔らかく良いものになってきます。
永く楽しむ、という意味では紬の着物に勝るものはないでしょう。
いわゆるやわらかものは、その華やかな染めがとても美しいのですが、丈夫さという意味では、やはり劣化を避けることは難しいのです。
もし、永く着られる、楽しむ、という観点で着物を選ぶなら・・
私は「素敵な紬を楽しむ」とご案内することでしょう。
コーディネート担当 井上和子