本場久米島紬のコーディネートは帯で決まる。選び方と楽しみ方のコツ

お世話になります。千成堂着物店 作品担当 井上英樹です。

今年最も注目をしたい工芸紬は「久米島紬」で間違いありません。

本場結城紬や本場大島紬など高級な紬織物は多くありますが、久米島紬はそのどれとも異なる風合いです。

島に自生する植物で染めた濃い茶の色味、控えめな艶は、工芸的な雰囲気と応えられない高級感を併せ持ちます。見ても美しいですが、身にまとってこそその真価に気が付く紬です。

今回、その久米島紬の魅力やコーディネートの秘訣に迫ってみようと思います。

本場久米島紬とは

国の重要無形文化財( 平成16年7月16日指定 )本場久米島紬。 「堂の比屋」 という一人の人(役職という話もある)が中国から渡来した人から養蚕を学び、その後紆余曲折を経て、その完成度から本土への価値の高い貢納布(税)として扱われた歴史のある紬、久米島紬。そのため、詳しい製法なども記録を残しており、限りなく当時の雰囲気を残す織物でもあります。

現代でも最高級品として流通する紬のひとつであり、結城紬をはじめとする工芸紬織物の源流とされる由緒正しい名品です。一人の職人が一貫して制作を行うことも特徴。厳選された糸つかい、久米島を原産とする植物染料で染め、手括りの絣で柄を織り出す。まさに、作家性のある産地の工芸織物です。

久米島紬の特徴はその高級感。

一番最初に高級感について触れましたが、本場久米島紬は本当に高級感があります。

紬といえば素朴でふんわりとした風合いを思い浮かべますが、鞣した革のようなシックな艶とぎゅっと締まった風合いは一線を画します。それを実現するのは、久米島紬の最終行程にある「砧打ち」です。

熟練した職人が重い木槌で反物を絶妙な加減で数百回叩きます。その工程により繊維全体を馴染ませ、また、艶を出します。この艶やかさが、素朴さを越えた質感を産み出します。

また、草木の染めは糸の一本一本に異なる表情を産み出します。無地場に細かい格子を感じますがそれが理由。単色ではなく、空気を凝縮したような質感があります。

艶めきと草木染めならではのニュアンス。それが高級感の秘密です。

また、絣の足も必見です。すっ・・と消えていくように絣糸のグラデーションがその柄に印象深さと味わいを添えてくれます。

豆知識:経糸と緯糸両方に混んだ形で紬糸を使う本場久米島紬を「モロ」と呼びます。生産数が非常に少なく、反物の時点で三倍くらいの価格で流通する最高級品です。評価は分かれるところですが、経糸を通常の糸にした場合、独特の品の良さがありますので、希少性をとるか、その雰囲気をとるか・・というところです。個人的にはモロの久米島が好きです。

久米島紬の着物をどう着こなすか。

本場久米島紬は歴史のある紬です。工芸的な味わいも強く、落ち着いた色味そのまま、コーディネートにクラシックな味わいを残します。言ってしまえば「旧い(ふるい)」、そんなコーディネートに陥りがちです。

2020年代の着物として、久米島紬を新鮮な印象で着こなすにはどうしたらよいのでしょうか。

久米島紬に合う帯

まず、帯を新鮮な印象に変えたいと思います。

シンプルな落ち着いた柄ゆきの着物を選ぶのは当然として、帯の選び方で雰囲気をぐっと今風に変えることは可能です。

例えば、型染めの帯はいかがでしょうか。型染め作家「武村小平」さんの帯を合わせました。氏の作品は男性作家特有のきちんとした空間使いがあります。また、抽象的な表現が上手く、手の仕事の風合いと、現代的な雰囲気を同時に達成する希有な存在です。

合わせ帯はブナを題材にした作品。グラフィカルな表現は秋限定の柄ではないと思います。配色とデザイン優先で選びました。

本場久米島紬の持つ高級感の九割九分は、その手仕事の空気感によるものです。

その手仕事雰囲気を崩さず、現代的な着物に昇華するには、氏の帯は完璧なチョイスです。

また、久米島紬には銀灰色のゆうな染めという技法があります。その色合いはどことなく都会的な雰囲気が漂います。 グールと泥染めよる濃茶とは全く違う感想を見る人は持つはずです。

そんな一反には上質な帯をこれでもかと合わせます。「人間国宝 北村武資」先生の経錦の袋帯を合わせましたが、雰囲気で負けません。強いコーディネートが生まれます。

久米島紬と北村武資の帯コーディネート

北村武資先生の経錦は濃い地色、これもまた強い印象を残す帯です。最高品質の紬織物「本場久米島紬」なら、強い帯に合わせても、互いの質感を受け止め合い最高のコーディネートを表現するのです。

新しい表現の久米島紬も注目です。絣ではなく、緯糸の浮かせで立体感を演出した「組織織」も味わい深いです。

手括りの絣をつかわないため、いわゆる「伝統工芸マーク」はつきません。ですが、その制約を超えた表現は、次世代に向かう強さを感じさせます。

しょうざんの型染め袋帯を合わせて、色味を生かしたコーディネートをしてみました。実に新鮮です。

伝統的な草木と泥染の作品も素敵ですが、現代の感性を生かした軽やかな久米島紬も見逃せません。染織作家 柳崇さんの帯を合せて、優しい色味の女性らしいコーディネートもお楽しみいただけます。

久米島紬の価格帯。リユースからお値打ちに見つけるという方法

さて、久米島紬は一貫して高級品という論調で進めてきましたが、実は意外とお値打ちな価格帯で手に入る紬です。数百万という相場も不思議ではない結城紬などに比べると、はるかに手が届きやすい価格帯です。現代の若手職人が手掛ける久米島紬には新鮮な魅力を感じます。間違いなく素敵です。

また上記で触れましたがリユース品からヴィンテージを見つけるということも、可能です。

その場合、柄行きは慎重に選ぶ必要があります。どうしても素朴に見える柄と、現代の着物として通用する柄は違います。また、産地で織られる新作はさらに現代の感覚があり、昔のものとはかなり異なります。

当店はご存知の通り希少な紬はリユースでも取り扱っています。その場合現代的に見えるかどうかは重要なチェックポイントです。選び抜いた逸品をご用意しております。

久米島紬をどう合わせるか、まとめ

久米島紬の選び方、コーディネートの仕方は「高級感を活かすこと」「帯を現代的かつ、手仕事のものにすること」が最大のポイントです。

もちろん、柄行きの選び方、技法の見分けなどにも細かいノウハウはありますが、まずは素敵な作品を見つけて、自分のものとして着こなしていくことが大切です。

高級感のある着姿を目指すなら必ずお勧めしたい本場久米島紬。この機会にぜひ挑戦してみてください。

「着たい」「似合う」が間違いなく揃います

「自分の着物にあう帯を選んでほしい」
「ネットの掲載品を実際に見たい」
「合うサイズの草履がない」
「お洒落なコーディネートで揃えてほしい」
「着物が着にくいので、仕立て直したい」
「紬をはじめたい」
「似合うものをオーダーメイドしたい」
「式典のコーディネートを任せたい」
「芭蕉布や上布など、特上品が欲しい」
「染織家の●●さんの作品が欲しい」

お応えしてきた一例です。ご来店(予約制)はもちろん、メールやLINEでもお気軽にご相談ください。

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