麻や綿だけではない、「絹の涼」を知る

夏のきものといえば、麻や綿のざっくりとした風合いを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、絹ならではの光沢と透け感を持つ夏の着物には、また格別な美しさがあります。
今回ご紹介するのは、新潟県十日町市で織られる「明石縮(あかしちぢみ)」の着尺を用いた、初夏から盛夏にかけての洗練されたコーディネート。淡く透ける生地の美しさを最大限に活かした一式です。
明石縮の魅力──透け感と肌ざわりの妙
明石縮は、夏着物・薄羽織として愛される高級な薄機の織物。経糸に生糸、緯糸には強撚糸を使い、織上がりを縮ませることで生まれる独特の質感を持っています。蝉の羽のような繊細な透け感と、さらりとした清涼感のある肌触りを併せ持ち、まさに“涼をまとう”一枚と言えるでしょう。

この明石縮、実はその起源を19世紀終わりごろにさかのぼります。京都の西陣の夏織物から着想を得て、越後の縮織の技術を絹に応用し誕生しました。汚れや難の目立ちやすい強撚糸、絹糸の中でも得に上質な中央付近を用いることで美しい織上がりを実現するのもこだわりの一つです。
絹の透明感が映える、淡彩の着こなし

今回の着尺は、淡い水色、薄黄緑、グレージュといった涼感のある色合いが絣によって織り出され、静かながらも印象的な佇まい。光の加減で色がふんわりと浮かび上がる様は、まるで初夏の木漏れ日を纏っているかのような趣があります。
淡彩ながらも深みを感じさせる色づかいは、大人の女性の気品を引き立て、見る人にも涼を届けてくれるような、清潔感と華やぎを両立した一反です。
帯とバッグで、装いに格を添える
合わせた帯は、人間国宝 故・北村武資の工房「織匠きたむら」による「上品羅」。羅ならではの透け感と緻密な織りの表情は、明石縮の軽やかな絹と調和し、涼しげながらも確かな品格を添えてくれます。やわらかな地色と繊細な幾何文様が、淡い色合いのきものに奥行きを与え、夏のお洒落着としての完成度を一段高めています。

さらに、利休バッグは和装小物の名門「衿秀」さんに別注した、総本革の一品を合わせました。弊店から直接国内のタンナーに制作を依頼するレザー素材はあえて真っ白ではなく、少しアイボリーを帯びた色合い。夏の着物とも自然になじみ、清楚でありながら上質感のある佇まいが完成します。

涼を愉しむ──大人だからこそ選びたい一枚
麻や綿の趣味性も捨てがたいところですが、この透け感を活かした「きれいめ」のコーディネートの楽しさは、絹の夏物ならではの特権です。
日常をほんの少し上質に。気負わず、それでいて格を忘れない。そんな大人の夏のお洒落に、ぜひ一枚仕立てていただきたい「明石縮」。
弊店では、お求めのお客様のお好みに合わせた帯や小物のご提案も承っております。ぜひ、光をまとうような明石縮の世界に触れてみてください。
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