内藤早苗さんの日傘──大人ゆかたの筆頭、竺仙の藍染に際立つ「工芸」の趣

浴衣や夏着物を美しく着こなしたい大人世代にとって、日傘選びは“ただの日除け”ではなく、“装いの完成度を高めるための最後のひと工夫”。今回は名店・竺仙の長板本染と、工芸的な日傘を掛け合わせた、一歩先の夏の装いをご紹介します。
注染×木工。工芸の美をまとう日傘という選択肢

今回ご紹介するのは、注染作家・内藤早苗さんと、木工作家・大湯建太郎さんの共作による日傘「おはな」。かわいい題名です。
白地に黄や緑、橙を散りばめた布は、内藤さん独自の注染技法で綿麻に染められた一点もの。華やかな配色ですが、技法ならではのにじみや揺らぎがあり、抑え感のある発色に仕上がっています。色の重なりが格別に美しい表情を生み出しています。
その持ち手は、木の温もりと精緻な技が宿る大湯建太郎さんによる木工細工。全体として派手さはなくとも、確かな存在感と、持つ人の品格を引き立てる完成度が魅力です。
“日傘の下に人が入ってこそ作品が完成する”という内藤さんの言葉どおり、装いに溶け込み、かつ、雰囲気を引き上げてくれる──まさに、夏着物にふさわしい一本です。

浴衣は「長板本染」、帯は「葛布」で整える上質さ

合わせた浴衣は、竺仙の代表作「長板本染」。
板張り・藍染という難易度の高い伝統技法を用いた手染めの生地は、藍の深みと白抜きの美しさが際立ち、浴衣という枠を超えて“夏着物”としても成立する風格を持ちます。
帯には、日本工芸会準会員の小田島克明さんの工房おだきんさんによる「葛布」の八寸名古屋帯をセレクト。緯糸に葛、経糸に絹を用いた軽やかな質感は、浴衣の持つナチュラルな風合いとも非常に相性が良く、織りで表現された菱文様がさりげなくアクセントになります。落ち着いた藍緑の色味は涼やかで、単衣の時期にもお使いいただける“重宝な”一本としてもおすすめです。
小物で味を添えて、コーディネートを完成させる

帯留めには、ガラス作家・山口美妃さんによる「夕景」をセレクト。
硝子と真鍮が繊細に組み合わさり、小さな中に大人の情緒が詰め込まれたような作品です。甘さを抑えた色調と細工の美しさが、帯まわりに控えめな華やぎを添えます。


さらに、帯揚げは和小物さくらの絽の格子柄、三分紐は衿秀による白茶の一本。いずれも“主張しすぎず、調和を導く”ことを意識した選択で、素材感の上質さが全体の完成度を高めてくれます。

そして、足元には、弊店が手掛ける胡麻竹下駄。
舟形の台には滑り止めのゴムも貼られ、見た目の美しさだけでなく履き心地や機能面でも優れています。鼻緒には、解いた絞り染の古裂を仕立てた一点もの。時間の積層を纏うような感覚が、大人の夏姿に深みを与えます。工芸の趣を持つ上質な下駄は大人にこそ相応しい。
日傘が作る夏姿の余韻、大人に似合う逸品を
夏の着物や浴衣は、色や柄の涼やかさも大切ですが、本当に装いを洗練させてくれるのは「質感」と「調和」です。
大量生産では得られない、手仕事のニュアンスや、時を経た素材の味わい──そうした要素を静かに支えてくれるのが、日傘や下駄、小物たちです。
中でも、日傘は遠目にも効くアクセント。内藤早苗さんと、木工作家・大湯健太郎さんの手がける日傘、ぜひご注目下さい。きっと、この夏の装いを格別なものにしてくれるはずです。
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