濃色同士の組み合わせに、“抜け感”をつくるには
濃い色の着物に、同じく深みのある帯を合わせる──最近よく見かける、少し先行くお洒落な方の着物コーディネート術です。
このイメージを上手に取り入れ、さらに「こなれて見える」コーディネートを完成させるには、ほんの少しの“色の差し引き”が大切。
今回は、濃色の着物と帯の美しさを引き立てながら、華美にならず、装いを整える「大人のアクセント・カラー」をコーディネート例とともにご紹介します。
濃墨の着物に宿る、静かな存在感

主役となるのは、千成堂別注「野蚕白着尺・吉野格子文」の濃墨色。黒に近いトーンでありながら、完全な無彩ではなく、ほんのわずかにニュアンスを含む絶妙な発色。地紋には、吉野格子から着想を得た幾何学の織り文様。野蚕糸を緯糸に使うことで、ハリ感と品の良い光沢を備えています。

このような濃色の着物には、強い色を添えるより「ニュアンスのある、上質なきれい色を差す」のが似合うポイント。ここが「大人のアクセント・カラー」の第一のコツです。
深い帯色に合わせる、“抜け感”のある帯まわり

帯は、大城一夫さんによる花織の名古屋帯。黒鳶色(紫がかった焦茶)を草木染で織り上げた作品で、花織の表情が控えめに浮かび、深みのある仕上がりです。濃墨の着物との間にトーンの差が少ないぶん、帯揚げと帯締めに「色の抜け」をつくることで、装い全体に明るさとリズムが生まれます。

今回のコーディネートでは、淡い「鴇鼠(ときねず)」の絽の帯揚げを採用。グレイッシュでありながら、わずかに紅を含むその色合いは、濃色の中に柔らかさを添え、自然な抜けを演出します。この場合季節のイメージとしては「夏と単衣のあいだ」くらいです。時期により透けないものを選ぶと良いと思います。

また、中村航太さんの手組帯締めは、薄梅鼠と白よごしの二色づかい。落ち着きのある彩度とわずかな色差が、着姿に繊細な“アクセント”を添えてくれます。
「光」と「透明感」を加える帯飾りの役割

着姿の印象をもう一段引き上げているのが、ガラス作家・田上惠美子さんの帯飾り「さいころ」。透明な立方体の中に金箔と色を閉じ込めた小さなアートピースは、光を受けてわずかに輝きます。
この帯飾りが担っているのは、“色”というより“光のニュアンス”。重くなりがちな濃色の組み合わせに、静かな輝きを添えることで、装い全体がぐっと締まります。
ここでもやはり、発色の強さよりも「質感」で選ぶという視点が活きてきます。
色は“添える”もの──整え色が着姿を変える
ここまでにご紹介した小物に共通するのは、「主張」ではなく「調和」を導く色選びです。濃色の着物に明るい色を差すのではなく、彩度を抑えたニュアンスカラーや、質感をともなった素材を“添える”ことで、装い全体の輪郭が整い、奥行きが生まれます。こうした“整え色”こそが、大人のコーディネートを一段引き上げるアクセント・カラーです。
派手ではない。でも確実に目を惹く。その理由は、「考えられた色選び」にあります。“色の整え方”までを含めたご提案ももちろん大歓迎。ぜひ、一際に素敵なお品を見つけにいらしてください。
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