竺仙の名作「本藍の浴衣」をどう着こなしましょう?

「夏の着物に、そろそろ変化が欲しい」──そんな方へ。
いつもの着姿にさりげなく奥行きを与える、大人のための本格ゆかたコーディネートをご紹介いたします。
今回取り上げるのは、竺仙が手掛ける長板本染のゆかた。単なる浴衣にとどまらず、衿を付ければ夏着物としても通用する本格派の逸品。そこへ、染色作家・佐藤碧さんのアート性あふれる半幅帯を合わせ、さらに田上惠美子さんの硝子細工で帯まわりを整える──。品格を宿しながら、涼やかな「余白」を演出する・・まさにワンランク上の装いです。
長板本染「牡丹唐草」──ゆかたの枠を超える上質感

藍と白──ただそれだけで、これほどまでに装いが決まるのは、やはり竺仙ならでは。
天保十三年創業の老舗が今なお守る「長板本染」は、生地の両面に異なる型紙で防染を施し、藍甕に浸けるという古典技法によるもの。現代において、制作できる職人は限られるため、世に出る数も極めてわずかです。
今回セレクトした「牡丹唐草」は、緻密な柄ゆきと染めの冴えが魅力。目の肥えた着物好きが手にする「浴衣」というジャンルの中でも、別格の存在感を放ちます。衿を付けて単衣感覚で楽しむこともできる「上質さ」も、大人の装いにはうれしいポイントです。
アートを纏う帯──佐藤碧「逆光」半幅帯

帯は、染色作家・佐藤碧さんによる「逆光」。枝のみで構成された大胆な構図ながら、灰青の濃淡は美しく、静かなエネルギーを帯びています。生地には紬地を使用し、表面の節感が立体感を与える一方で、締め心地も軽やか。
「リバーシブル仕様で二通り楽しめる」「藍の濃淡に合わせやすい」といった実用性の高さも魅力ですが、何よりもこの帯は帯まわりを今様に仕上げる「強さ」を持っています。きものに負けず劣らずの存在感でありながら、全体の調和を崩さないバランス。芸術性と実用的な感覚が見事に融合した、唯一無二の作品です。
光をまとう帯留と簪──田上惠美子さんの硝子作品

帯まわりに添えたのは、硝子作家・田上惠美子さんの帯留と簪。透明な硝子と箔を重ねた繊細な意匠は、夏の光を受けて美しくきらめきます。大人のゆかたコーディネートには最高のアクセントです。

ひと目で感じ取れるのは、ただの「可愛らしさ」ではなく、奥行きある品格。とんぼ玉やコアガラスといった技法をベースに練り上げられた世界観は、静かながら強い存在感を放ちます。それぞれに異なる表情を持つ「一点もの」。選ぶ楽しさもまた嬉しい。
「寒ずきの諸紙布」八寸帯で着姿を格上げする

装いの質を一段上げる、静かな存在感──それが「寒ずきの諸紙布 八寸帯」です。合わせた品は異なりますが、田上さんの作品とゆかたのコーディネートの実例として、ご紹介いたします。
雁皮を雪にさらし、手すきした後に織り上げる「寒ずき」の技法は、時間と手間を惜しまず注ぎ込まれた手仕事の結晶。織り上がった後にさらに雪さらしを施し、ほのかな白みをたたえた上品な薄生成色に仕上げられています。上質なカジュアル感は浴衣の格上げにおすすめです。
この夏、“新調する理由”がここにある
年齢を重ねるごとに「もう十分持っている」と感じる方こそ、新調の妙味を知っているはず。
単なる追加ではなく、装いの質を引き上げる“刷新”こそが、新しい季節を心地よく迎える第一歩です。
竺仙の藍、佐藤碧の染め、田上惠美子のガラス──それぞれが放つ素材感と空気感が、まとう人の存在をそっと引き立ててくれます。
今年の夏は、あたらしい一式で装いの格をひとつ上へ。
「目に見える上質」と「手に馴染む心地よさ」を備えた装いを、どうぞお楽しみくださいませ。
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