色無地×名古屋帯に差がつくのは「質感」です
「色無地に名古屋帯」という組み合わせは、初心者はもちろん着物通の方にもなじみ深いコーディネートの一つです。そのシンプルさは「上質な素材かどうか？」を明らかに浮かび上がらせます。
今回ご紹介するのは、弊店が生地から制作している「伊予生糸」の色無地と、上質な絹糸の一つ「ブラタク」の糸を使った大文字屋庄兵衛さんの名古屋帯を合わせたコーディネート。お茶席など和のお稽古はもちろん、式典にも通用する王道コーディネートをどのように素敵に楽しむか・・弊店流に考えてみました
素材の良さで装いが変わる──濃色の色無地と名品帯でつくる、格調あるきもの姿をご案内いたします。
上質な糸が映す艶と深み──「鳶茶色」の色無地
着物は、千成堂別注の色無地。京都丹後の機屋さんに特注する白生地を「鳶茶色」に染めた一反です。紫をふくんだ茶系の色味は、落ち着きと華やかさの両方を感じさせ、知的な大人の雰囲気を演出します。
使われているのは、光沢としなやかさに優れた伊予生糸（いよいと）。嵩高（かさだか）にふんわりと作られた糸ですが、落ち着いた艶めきがあり、遠目でも伝わる上質感には他にないものがあります。
柄は控えめながら、品格ある古典文様「葡萄唐草」、中でも繊細で美しい文様を数多の資料の中から厳選して制作しています。名古屋帯だけでなく、袋帯と合わせての礼装にも使える汎用性の高さも魅力の一品です。
糸の力をありありと感じさせるのは、色無地ならではかもしれません。
名品帯「松籟」がもたらす、格調と静謐な華やぎ
合わせた帯は、西陣の老舗「大文字屋庄兵衛」による九寸名古屋帯「松籟（しょうらい）」。松に吹く風の音を意味するその名のとおり、静けさのなかに奥行きある美をたたえた作品です。
白みがかった地色に、金銀糸がさりげなく織り込まれ、華美にならず品よく光をたたえます。柄も控えめでありながら、奥行きを感じる力のある帯です。今回のような濃い色の着物はもちろん、淡い着物でもでもよく映える、絶妙な中間色の帯です。
使用されているのはブラタク糸。ふんわりと空気を含むような締め心地で、長時間の着用でも疲れにくく、安心感があります。帯まわりに着馴染みがあり、それでいて一目で「良い帯」と分かる存在感を放ちます。
こちらも間違いなく、素材感が質感として生きた帯です。
細部にまでこだわることで、着姿が洗練される
帯まわり小物にも、素材の観点から徹底的なこだわりを加えました。丹後の機屋さんに依頼して織り上げる生地の帯揚げも弊店の別注品です。銀糸を忍ばせた「鱗」地紋は、しっとりとした質感と柔らかさを持ち、控えめな煌めきが品格を添えています。豊かな質感と濃灰桜色という絶妙な色合いが、濃色の着物とのバランスをとり、帯をより際立たせています。
帯締めには、和小物さくらの「高麗真砂組み」。金糸とニュアンスカラーを絶妙に織り交ぜたデザインは、表と裏で色味を変えられる仕様です。組上がりも良く、まさに上質感に迷いのない帯締めです。
質感の際立つ着姿を整える「楽しみ」
色無地に名古屋帯というスタイルは、定番ですがこだわる箇所には事欠きません。なかでも、最も際立つのは質感です。
今回ご紹介したような、控えめでありながらしっかりと「質感」が宿るコーディネートは、究極的には「失敗しない装い」の最適解とも言えるでしょう。特別な場面でも、日常のお稽古でも。「質にこだわる」という視点は着物の楽しさをもっともっと深めてくれるはずです。
コーディネートは色だけをさす言葉ではありません。ぜひ、質感にもお目を止めてみてくださいませ。和装の持つ驚くほどの奥深さと素敵さにきっと気が付くはずです。
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