単衣を着るタイミング──私ならこう考えます。
■「今日は暑いな」と思ったら、単衣
→ 最近は5月でも夏のような日があります。体感を大事にする。
■おしゃれ着なら、気温や気分に合わせて自由に
→ 紬や小紋などの装いは、自分の心地よさを優先する。
■フォーマルな場では、まわりとのバランスも大切に
→ 式典や改まった席では、季節の決まりを優先して選ぶ。
単衣を着るタイミングは「気温優先」で大丈夫?
10から5月は袷(裏地あり)、6月と9月が単衣(裏地なし)、7月と8月が夏物(裏地なし・薄物)が着物の基本の季節感です。とはいえ、ここ数年の気候変動を考えると、暦にこだわるのではなく、“その日の体感”にあわせて柔軟に装うことが、もっとも理にかなった着こなしです。
これは特に「洒落着(紬・小紋・織の着物など)」においては、重要な考え方。洒落着はあくまで日常や趣味、食事会など「個人の感覚」が尊重される装いなので、気候や気分を優先した着分けが自然です。
たとえば──こんな単衣きものもおすすめです。

山形・渡豊工房が手がけた、希少な純国産絹糸を使った夏御召。細やかな織り柄が特徴で、シャリ感としなやかさのある上質な一反です。
夏御召と銘がありますが、透け感はごく控えめなので、春〜初夏、晩夏〜秋までの単衣の時季にぴったり。盛夏を避ければ、幅広い季節に活躍します。やさしい灰ピンクは、さくらんぼの実からとった草木染めによる自然な発色。帯合わせもしやすく、着る人の肌にやわらかくなじむ色合いです。
単衣を着るベストタイミングとは?──4月〜11月の着回し術
近年は4月後半から5月にも夏日が増え、袷では暑く感じる日も少なくありません。そんなときに、さらりとした単衣の着物は頼れる味方になります。
とくに「初夏の暑さなら単衣を」といった調整は、見た目にも軽やかで、快適さも段違い。逆に10月になっても日差しが強く残暑が続く年には、9月と同じように単衣や薄物を活用するのも理想的です。場合により11月も単衣で大丈夫かもしれません。
現代の気候から言って、「暦」よりも「体感」を優先することで、季節を先取りしながら美しく快適に装うことができます。
一方、礼装の場面では…
ただし、これはあくまでも洒落着としての単衣の捉え方。たとえば式典、厳格な季節感の茶席、格式ある訪問先など、礼装としての着物(訪問着・付下げなど)を着る場では、「その場の格調」や「出席者との調和」も大切にしたい要素です。
そうした場では、「基本どおり単衣は6月・9月」とするのがやはり無難。いくら暑いからといって、フォーマルな場面でいち早く単衣(特に絽など透ける薄物)を着てしまうと、装いの格が揃わず、かえって目立ってしまうこともあります。
何を着るかは、ご出席の先輩方・先生に聞いてみて、イメージをつかむのも良い方法だと思います。
まとめに代えて:単衣の“自由”と“品格”のバランスを楽しむ
洒落着では「気温と気分」で、礼装では「場の空気と格式」を含んで。
この2つの視点をもって季節を見つめれば、単衣は着物好きの強い味方になってくれます。単衣のきものがお手持ちにない方は、今年こそ始めてみるのはいかがでしょうか。
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