初夏の風を纏う、新作「明石縮」と織楽浅野の帯

初夏の陽ざしがやわらかに差し込むころ、着物もまた、涼やかさと軽やかさを求めた装いへと変わっていきます。
暑さを感じる季節だからこそ、素材や織りの質感がもたらす「涼感」は、装い全体の印象を左右する大切な要素です。今回は、そんな季節にぴったりのコーディネートとして、新作「明石縮」の着尺と、織楽浅野の九寸名古屋帯をご紹介いたします。
着物は、伝統的な製法で織られた明石縮の着尺。
良質な部分だけを選りすぐった絹糸を強く撚り合わせた“強撚糸”ならではのシャリ感が、肌にさらりと心地よく、また「蝉の翅(せみのはね)」にも喩えられる美しい透け感が、目にも涼やかな印象を与えてくれます。
淡いブルーやグリーン、ベージュが重なる縞模様は、まるで水彩画のように柔らかで透明感にあふれ、まさに大人の夏のリアルクローズとしておすすめしたい一反です。
明石縮は、兵庫県明石を発祥とし、現在は新潟県十日町にて制作されています。伝統的工芸品にも指定されており、なかでも「波筬(なみおさ)」という特殊な機で織られたものは、独特の揺らぎを生み出し、着姿に工芸的な趣を加えてくれます。落ち着いた色みながらも、清らかさと華やかさをあわせ持つ、まさに“選ばれた一反”です。
合わせた帯は、「織楽浅野」さんによる九寸名古屋帯。
天平時代の文様から着想を得た愛らしい丸文が、生成の地色に白と銀糸で立体的に浮かび上がり、控えめながらも確かな存在感を放ちます。その織りの陰影と立体感が、無地感の中にも上質な趣を添え、高級感と洒落感を兼ね備えた一本に仕上がっています。芯を工夫することで、単衣帯としても夏帯としても仕立てが可能で、初夏だけに留まらず、長くお楽しみいただけるのも嬉しいところです。シンプルでありながら計算された美しさの逸品、織楽浅野さんならではの世界観をご堪能ください。
帯締めには、和小物さくらさんの「ゆるぎ」を。帯揚げは衿秀さんの紗のものを使っていますが、質感を引き締めるため帯締めは通年のものから選んでいます。ほんのり淡い黄色が装いにやさしく溶け込み、着姿にほどよい明るさと品を添えます。

足元には、パナマの草履を。ナチュラルな風合いと通気性に優れた素材感が、夏の着こなしに粋な軽やかさを加えてくれます。
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