佐竹孝子さんの九寸帯「牡丹」
今回ご紹介するのは、佐竹孝子さんが手がけた九寸帯「牡丹」です。佐竹孝子さんは日本工芸会に所属する染織作家。風通織の絵羽や帯を工芸展に出展。多くの作品で入選し、さらに2022年に新人賞を受賞。準会員として精力的に活動をしています。
繊細な紫の濃淡と緑の調和を楽しむ
この帯も風通織で織られています。隣り合う経糸と緯糸の濃淡が互いに影響し、多彩な色彩が表現されます。手に取って、またはかけて作品を眺めた時には、音が聞こえてくるような無限のリズムと奥行きを感じさせます。絹糸ならでは質感と上品な華やぎは佐竹さんならでは、鑑賞にも堪える一作です。見事なセンスです。
通常、風通織の技法は木綿の織物によく用いられますが、佐竹さんはこの技法を絹糸に応用することで、繊細さの中に微細な空気を含むような優しい質感を生み出しています。外見の力強さはもちろん、その触り心地や風合い、また、着たときの完成度までが素晴らしい。
久保原由佳里さんの織りの着尺と合わせる
染織作家 久保原由佳里さんによる紫紺染めの着尺と合わせました。久保原さんの草木染めによる紫の色味と透明感、そして佐竹孝子さんの帯のグラデーションが相まって、見る者に「おお・・!」と唸らせるような完璧な一体感が生まれたと思います。
小物は和小物さくらさん。ワンランク上の帯揚げを合わせ、帯締めは帯の良さを殺さない一体感のある色味のゆるぎを選びました。
ワントーンの着こなしは風合いの合わせ方も大切です。さらりと軽く控えめな艶のある着尺に、すっきりと程よい帯の風合いが、出過ぎないアクセントとして素敵に効きました。羽織を合わせるのも良かったです。
鑑賞にも堪える、そして、合わせやすい
この帯は非常に合わせやすいもの魅力の一つ。上質な紬や御召、色無地、小紋など、さまざまな着物に素晴らしく合います。さらに、濃い色や薄い色、どんな色にも馴染みやすいこの配色も加えて魅力的です。
私自身、この作品の第一印象として「見栄えの良い、鑑賞できる帯」というのがありました。鑑賞できる帯は合わせるのが難しい時がありますが、この作品は実際にコーディネートしてみると、意外なほどに合わせやすく着物と溶け合った印象すら持ちます。
合わせやすく、また、鑑賞にも堪える。そう出会うことのできない絶妙のニュアンスを持った見事な作品です。一点ものにつきお求めをご検討の方はお早くお問合せ下さいませ。(写真にはリンクが張ってありますので、公式オンラインショップもご覧くださいませ)