今、着物コーディネートではシンプルな着こなしが注目されています。しかし、最近では単にシンプルだけでは物足りないという人が増えてきており、少しアクセントを加えたコーディネートも注目されています。では、どうやったらシンプルさの中にひとつ洒落た「アクセント」をつくれるのでしょうか。
草木染の帯揚げで「とけ合わせる」
今回、ベースになるコーディネートはこちら。亀本冴さんの名古屋帯と柳川千秋さんの着尺を合わせ、優しい色同士を調和させました。まさに同系色のシンプルな着こなしのお手本。
しかしです、良く見ると「縞(ストライプ)」の着物と「型染めの帯」のコーディネートです。言葉だけなら、粋でしゃっきりしたイメージを持つかもしれません。これを、あくまでも優しいイメージに仕上げたのは「色」です。柳川さんの紬の着物は草木染の透明感のある色味ですし、亀本さんの帯もクセの無い透明感のある色味です。
両者を中野みどりさんが手がけた草木染の帯揚げを使ってつなぎます。三者の効果が溶け合ったコーディネートをつくります。
帯留めには小室えみ香さんの「Window」
帯留めには、コンテンポラリージュエリー作家の小室えみ香さんが手がけた「Window」を選びました。この作品は、内と外をつなぐ「窓」というモチーフを使い、心象的な風景を表現しています。細かなディテールにまで気を配った繊細な作品は、着物や小物の全体の調和を崩さずに、ほんのりとしたアクセントになります。
シンプルだけではない、アクセントが効いた着こなしを考える
アクセントの手法は「強い色味を差し込む」だけではありません。色のトーンを合わせた着こなしの場合、その強すぎる色は逆効果にすらなります。
「無地ではなく、優しい縞の着物を選ぶこと」
「型染め帯の柄は、華やかでも落ち着いたニュアンスのものを選ぶ」
「アーティスティックで深みのある帯留めをつける」
まとめると、全体の雰囲気を崩さず、ニュアンスでアクセントをつけるといったところでしょう。
さりげない心配りも、実は着こなしのアクセントになります。
作品担当 井上英樹