当店の最新コーディネートは「きれいめの夏」。トップ画像の着尺は東郷織物さんから入荷した夏の大島紬です。着尺は墨黒ですので、合わせる小物を黒にしてカッコ良さを極めるのも良いでしょう。でも、大人の黒を少し涼し気に柔らかく着こなしたいという際は、こちらのコーディネートのように合わせる色に黒より少し明るく優しい紺を選んでみるのはいかがでしょうか。
さて、今回ご紹介するコーディネートは、この夏をすっきりとしたお洒落系で着こなしたいという方におススメする夏大島・夏塩沢の4選をご紹介いたします。
東郷織物 「夏大島」 着尺 に 成謙 「雪の結晶 千成堂別注」 夏九寸名古屋帯 を合わせる
着尺は都城の本場大島紬織元である東郷織物さんが手掛けた夏の大島紬「夏大島」。この作品は、絣糸を使用せず、経糸と緯糸が重なることで網代を織り出した、ベーシックなデザインのもの。雰囲気の良さと着心地の良さが価格以上のものというところもポイントが高いです。
シャリ感と透け感があり、盛夏の着物に合う生地ですが、さらに、落ち着いた色味を活かして夏の前や秋風が吹く前など、気温の高い時期に単衣としてもおすすめです。また、反物の幅が40cmで、耳を抜かして約39cm(一尺五分)と広く、裄のある方や男性の着物としても仕立てることができます。
合わせた帯は、京都 工芸染匠 成謙の「雪の結晶」九寸名古屋帯。
成謙さんは、上質な手描き友禅を中心に手仕事を追求する工房です。独自の感性と現代的な感性には定評があります。
そんな工房へ依頼して制作いただいた夏帯 千成堂別注の「雪の結晶」。冬に見る雪の結晶もそれはそれは美しいですが、夏に雪の結晶で涼をとることは、やはり夏に楽しみたい一つでもあります。
そんな想いを込めた新作帯は、白よごし地に雪の結晶が銀や青の濃淡で表現されていて、実に上品に華やぐ帯です。通常、雪の結晶のモチーフはインパクトがありますが、こちらは実にすっきりとしていまるため、その分、幅広いコーディネートをご堪能いただけます。
ポイントとして夏の涼し気な雰囲気も考え白を基調としているため、お写真より実物の方がはるかに良い作品ではないかと思います。細部までこだわり抜いた染色作品をシャリ感と透け感のある夏生地を選び制作いたしました。芯は「夏芯」を選び最適にお仕立ていたします。
本田利夫 「夏塩沢 絣二色 着尺 千成堂別注」 に 斉藤佳代子 「風 透る夏」 夏九寸名古屋帯 を合わせる
こちらの着尺、夏塩沢は、新潟県南魚沼市にある本田利夫さんの工房が手掛けた夏の洒落着物の代名詞です。この着物は、強撚糸ならではのシャリ感と美しい透け感が特徴で、伝統工芸士でもある本田さんと地場の大手産地問屋さんにご協力いただき、弊店発案の別注色として制作しました。(副反はあります)
洒落感のある「黒に近い濃紺」の地色に白とブルーの絣を配色した越後上布の復刻柄が特徴です。先染の絣糸を職人の手により調整された織機で丁寧に織り上げています。非常に質感が高く、また帯の合わせやすい配色も魅力的です。上級者はもちろん、夏着物を初めて着る方にもお勧めできる作品となっています。
合わせた夏帯は、斉藤佳代子さん(国画会会友)の手掛けた作品。
題は「風 透る夏」、生絹(すずし)と練絹を併用、吉野織で柄を織り出した作品です。
斉藤さんは2012年の独立以来、国展での入賞を重ねる実力派。また使いこなす技法は幅広く、着尺も帯も強烈なオリジナリティーと完成度を誇ります。毎回、国展の会場でこの方の作品を見るたびに、鮮烈な感動を受ける染織家さんです。
この帯地は、練らない糸で透け感を出す地と、練った糸で密度を上げた柄の部分に分けられますが、そのどちらも、控えめで上品な艶があり実に美しいです。透明な中にしゅっとした線が折り重なり、吉野織の格子を浮かび上がらせる姿は、今までに見た事の無い世界観で目を楽しませてくれます。
「光注ぐ夏、爽やかな風が吹き抜ける情景をイメージしました」
とコメントが書かれていますが、それはイメージを超え、その場面全てを閉じ込めたような感覚すら受けます。一言で言うのは難しいのですが、単純な誉め言葉では足らない、素晴らしい帯です。
シンプルに静かに響く、美しい重なり。感性の豊かなあなたにも最大の満足を演出してくれること、間違いなしです。硝子の帯留など、アレンジも楽しめます。
本田利夫 「夏塩沢 十字絣二色 着尺 千成堂別注」に 松寿苑 「吉祥雲」 夏九寸名古屋帯 を合わせる
こちらの夏塩沢も本田さんの作品です。やはり弊店発案の別注品。
「清涼感のある白」の地色にグレー系と青の絣を配色した越後上布の復刻柄が特徴です。先染の絣糸を職人の手により調整された織機で丁寧におりあげています。非常に質感が高く、また帯の合わせやすい配色も魅力的です。上級者はもちろん、夏着物を初めて着る方にもお勧めできる作品となっています。
合わせた帯は、丸みのある愛らしい雲文を、シャリ感・透け感のある薄機の生地に、手描きの糸目友禅で染め上げた上質な夏の染め帯です。制作は京都の工芸的な染織品を扱う「松寿苑」
常にその形を変える雲には古代より吉凶を占うものとしての役割もありました。中でも吉祥を表す雲を形どったこちらには「吉祥雲」と題が付けられています。
際立つのはこの配色のセンスです。雲文は染織のモチーフとしてよく見かけますが、ニュアンスのある墨色とトーンを押さえた配色でセンス良く現代的に仕上げています。
また、撚りの強さの異なる糸で十字の地紋を浮かばせた上質な生地は、染め帯に一層の豊かな表情を演出しています。
夏のお洒落は清涼感と透明感を意識して
お洒落って何でしょう、やはりそれは組み合わせの妙。そう、コーディネートなのです。
今回ご紹介したコーディネートは、色だけを簡単に表現すれば白×黒という感じ。この白黒が、着尺×帯または帯×着尺でコントラストになっています。やはりこれは基本、配色での爽やかさと引き締めの出し方は間違いないところと言えるでしょう。
お洒落な印象を残すのは引き算が出来ているかな?ということもポイントになると思います。楽しくなり過ぎて足し過ぎないこと。アクセントを考えたら後は引いてみる。その引き算が自然と着姿に清涼感や透明感を引き出してくれることと思います。
夏大島や夏塩沢は、まさに間違いなしの夏着物。断然、夏のお洒落が楽しくなります。
<スタッフ マキコ>