「今年の夏も猛暑の恐れ」そんな言葉が毎年聞こえますが、着物好きは夏の装いだけにしかない素敵さを味わうべく、計画を練っているのではないでしょうか。
夏の醍醐味と言えば上布と芭蕉布で間違いありません。特に、復帰から50周年の節目であり、NHKドラマをはじめ見かけることが多い”沖縄”の至宝「喜如嘉の芭蕉布」は今年は特に注目度の高い染織作品で間違いありません。
沖縄の作家さんの帯を合わせる

はっきり言って、選べるほどの数が市場に存在しない芭蕉布の着尺。何点か集めていましたがコレクションも残り1点となっています。(美しいキモノ本誌の企画に参加いたしましたため、仮仕立てになっています。)
今、持っているのは藍コーザーのヤシラミーのという、非常にシンプルで無地感の一反。質感の高い夏帯なら、意外に合わせる範囲の広い着物。撮影では現代の沖縄を象徴する染織作家のひとり「上原美智子」さんの主催する工房の作品を合わせました。歴史と現代の感性がクロスする、見応えのあるコーディネートが完成いたしました。(不思議なのですが、産地の織物は同じ産地の作品と合わせると、しっくりいきやすいです。)
濃い色の着物にトーンを合わせた明るい色の帯を合わせるのは定番ですが、決まりやすいお勧めの配色です。
米沢 佐藤新一さんの帯を合わせる

「産地を合わせる」と言いつつも遠く離れた東北・山形県の染織を合わせてみました。米沢の「佐藤新一」さんと言えば、センスの良い着物と帯に定評のある人気の工房「白たか織」の代表です。シャリ感のあるバナナ茎繊維(芭蕉の一種ですね)からとった糸をざっくりと織り上げた八寸帯はシンプルで静かな雰囲気がここらしい作品。

シンプルですが、この「バナナ茎繊維」使いの妙もあり、芭蕉布の着尺の強さに負けない調和を見せてくれました。帯揚げは麻のグレイッシュなものを選び、帯締めは濃い目・柄物を合わせました。着物、帯、小物と迫力のあるものが揃いましたので、帯揚げは抜け感のある品を選びたいところ。
感じたままに喜如嘉の芭蕉布を着る

本当の本当に希少性が高く、選んで買うことが難しいレベルになってきた喜如嘉の芭蕉布ですが、どうせなら素敵に今っぽく着こなしたいもの。私が思うに、まとめやすいのは「同産地の染織でまとめる」なのですが、あまりそこに捉われず、感じたままに帯を選んでみるのも良いと思います。
今回は佐藤新一さんの帯を合わせましたが、これはまさに直感です。芭蕉布の着物は非常に主張があるため、体の中心を行く帯締めも力の強いものを選びました。
着物の風合いに合わせた帯まわり。
まとめると一言ですが、中々奥深くて楽しい世界です。
作品担当 井上英樹