「白?」
「そう、白」
「?」
「自分自身が上質になった気がするでしょ、白」
作品担当 井上英樹です。
突然ですが、これは長襦袢の話です。
スタイリスト 井上和子は私の母。常に目指しているのは「着物コーディネートを完成すること」です。
着物と帯をどう合わせるか?
カラーコーディネートはどうか?
小物を変えると、変わるのか?
という視点は通過点で、今、凝りたいのは圧倒的に長襦袢だそうです。
長襦袢は着物の下に着るもので、なんとなく後回しにされている印象があります。
洗える絹の襦袢をはじめとする、機能的な部分で長襦袢を選ばれる方も多いと思います。
ですが、長襦袢は袖口から「結構な分量」が動くたびに見える、コーディネートの「勘所」なのです。
機能的な部分はもちろん、一種のアクセサリーとしても見ないといけません。
「白い地色で、大人っぽい差し色、程よく飛び柄」
スタイリスト井上和子より、そんなテーマがあがり、早速 当店の別注品として長襦袢を制作いたしました。
制作をお願いしたのは、長襦袢や八掛、肩裏といった「裏もの」を専門とする製造卸、「桂商店」さん。
他の追随を許さない品質の高さ、対応力(常時500色以上の八掛を在庫、完全オリジナル色の染出しもいただいています)は、まさに信頼と実績の桂さんならでは。
当店もおかげさまで取引先として末席に加えていただいております。
今回の制作は桂商店社長 桂 公保さんに色々と相談しながら、形にしました。
「飛び柄の飛び具合はどうしましょう?あと、指定の色味だと大人っぽいというよりも、可愛い感じになるかもしれませんね、こちらではどうでしょうか?写真送りますね」
桂さんとはLINEでよくやり取りをしているのですが、その的確なレスポンスと作家性にはいつも、勉強をさせていただいています。
「厳しい先さんに、いつも鍛えられてますからね」
とは桂さんの言葉ですが、京都を代表する染匠や老舗、日本各地の工芸染織を扱う専門店からの依頼で鍛えた審美眼は本物です。
桂商店の襦袢は、専属の織屋さんで制作されオリジナル生地で染められています。
生地自体が非常に高品質です、「とろみ」や「なめらかで、しっとりした手触り」は驚くべきものです。
さらに、程よく主張した地紋はデザインとしても完成しており、また、染め上がりもきれい。
生地からありえなくクオリティーが高い。
今回、そのオリジナルの生地の中から「青海波と梅楓」を選びました。
また、程よく散らした飛び柄に染め、大人っぽい「江戸茶色」をコーディネートしました。
「あ、いいね、この感じ、さすがねえ・・」
と母和子も納得の様子。
白い生地は生地の色を生かしていますが、その白が実に良いのです。
染ものは生地で染め上がりが本当に左右されますが、生地自体に華があるとはこのこと。
清潔感のある白は、本場結城紬など上質な紬に合わせても良いですし、色無地をはじめとするやわらかものにも実にお洒落なワンポイントになります。
繰り返しますが、長襦袢はインナーと言うより、着物のアクセサリーです。
シンプルで合わせやすく、初心者の方も襦袢と着物のコーディネートを難なく楽しめます。
さらに、内側までもこだわりを持つ、そんな気合の入れ方こそが「素敵なあなた」をつくっていくのです。
まさに、あなたを一歩先に進める長襦袢。
凝っていただきたい、もう一度言います、ここには凝っていただきたい。
「前には基本的に出ませんし、店を大きくもしません、堅実な仕事をするだけですから」
実直に磨き上げた仕事が作る本物の長襦袢。
ぜひ、コーディネートに生かしていただきたいです。
もちろん、着物に合わせて配色をオリジナルにデザインすることも可能ですので、着物に合わせた襦袢を始めたい方は、私までご相談ください。
作品担当 井上英樹