
今回は、春らしい爽やかな甘めコーディネートのご紹介です。年齢と共に合う色、合わせたい色は変化するものです。迷った時のコーディネートの配色の基本を、抑えておきましょう。
こちらは、松寿苑さんが制作を手掛けた、しけ引き染めの着尺反物です。「しけ引き」とは、限られた専門職人さんが手掛ける、高度な友禅染めの一技法です。全て手仕事のため、色も線も一つとして同じ物は無く、一期一会を感じていただけるしけ引きのお着物。種類は小紋になりますので、分類は普段着となりますが、実に繊細で優雅なしけ引きですので、色無地の感覚で、普段使いからセミフォーマルへと、帯や小物を変えて楽しみながらぜひ幅広いシーンでお召しいただけます。
しけ引きは、小紋の中でもモダンさが香る、個人的に一押しの小紋です。中でも当店で扱う色は厳選しておりますので、自信を持っておすすめ出来るしけ引きが揃っております。こちらの着尺は、淡い水色地に斜めに入る白のラインが実に美しく味わいがあります。ぜひ、手仕事の妙を感じていただけたらと思います。
合わせる帯は、中国三大刺繍の一つ「相良刺繍」の九寸名古屋帯。中国三大刺繍は他に、蘇州(そしゅう)・汕頭(すわとう)がありますが、その三大刺繍の中の相良刺繍は、撚糸という、撚り合わせた糸を使用して、縫い込む際に、一針ずつ生地の表面で玉結びを作る技法を用います。ひとつひとつ玉結びを作り、結び目を密集させているため、最も丈夫な刺繍と言われ、その丁寧に刺された柄には美しい立体感が出ます。他の刺繍と比べて光沢感が無く、落ち着いた上品な雰囲気が特徴です。
純白ではない柔らかな白よごしの地色は、合わせやすく、すっきりとした着こなしが楽しめます。チリチリと模様が浮き上がる風合いがなんとも可愛らしく、浮き上がる色全体が優しいニュアンスカラーのため、どんなお着物にも合わせやすく、重宝すること間違いなしです。帯地はさらりとした薄地ですので、単衣のお着物まで幅広くお楽しみいただけます。オリエンタルな装いをぜひご堪能ください。
私は服装のコーディネートは基本、全身を3色までに抑えれば大きな失敗は無いと考えています。色使いを3色までにしておくと、自然とまとまりやすいのです。そのことから、今回のコーディネートを見てみますと、お着物は水色+白、帯地が白、刺繍の配色からニュアンスのピンク(灰桜)をピックアップ。これで大まかな基本の3色は、「水色、白、灰桜」となります。まず、この3色を考えて全体をまとめます。帯揚げは灰桜を少し淡い方へ、帯締めは濃い方へ振っています。「水色×灰桜」を「水色×ピンク」にしてしまうと、甘めが加速します。ピンクにはせず、ニュアンスカラーの灰桜にすることで甘くなり過ぎないのがポイントです。
コーディネートが苦手な方は、このように、まずその日の基本の3色を決めてみてください。そして3色が決まるようになったらアクセントを入れていきます。自分らしさを加える気持ちで1色足してみてください。その1色を足す遊びがアクセントとなります。この時に足す色は、着物や帯のどこかにあると足し易いものです。繰り返しますね、基本の3色を押さえた上でのアクセントが効果的!
今回のコーディネートで見ると、基本3色に加えた帯締めの「黄」がアクセントとして効いています。効かせたアクセントの「黄」は、帯の花刺繍の中央に少し入ってる色です。帯の配色から足された1色が、さりげないアクセントとなり、甘すぎず上品にまとまる「わけ」となります。
コーディネートの色遊びに小物は必須アイテム。帯揚げは絶妙な色めが揃う和小物さくらさん、帯締めは美しさを追及する老舗ブランド渡敬さんです。
スタッフ マキコ