作品担当 井上英樹です。
今は1月ですが、当店的にはいよいよ「単衣と夏」の立ち上げとなります。「喜如嘉の芭蕉布」や「上布」「自然布」は、実は年末や1月にお問い合わせを多くいただきます。
そんな絶好のタイミングで・・あの「新里玲子さんの宮古上布」が到着いたしました。
新里玲子 宮古上布 九寸名古屋帯地
一目見て、これは綺麗だ!と唸りました。
藍と槐(えんじゅ)で染めた手績みの苧麻糸は、美しい「金糸雀色(かなりあいろ)」を湛えています。
島に育つ苧麻の糸を細かく裂き、糸を績み、島の草木でゆっくりと染める。あまりにも糸の準備に時間と手間と技術を擁するため、つい、そちらを話したくなるのですが、今回の作品についてはその色味の美しさを伝えていきたいと思います。
明るい色味の宮古上布帯に想う、祈り
新里さんの全ての作品を見ているわけではありませんので、断言はできませんが、最近は濃藍や生成色を基準に制作された帯や着尺を目にすることが多かったです。そこで突然目に飛び込んでくる、この「黄」がまさに鮮烈でした。ある意味で、この作風の登場を私は待っていました。
喜如嘉の芭蕉布もそうなのですが、沖縄の黄色や緑は独特な発色を見せます。鮮やかさとどこか陰のあるような深みは、島の日差しや風、そのたどってきた歴史を感じさせます。
新里さんの作品は、新里さんのその時々のインスピレーションで図案や配色が決められます。そのため、自身の感じた想いや、見た風景などが必ず反映されています。
作品で勝手に妄想を膨らませるのもあれなのですが、今の混乱した時勢に明るい気持ちを届けるような、「祈り」のようなものを感じてしまいました。
新里玲子さんの帯は実際に締めて素敵です
染織作品としても屈指の完成度を誇る新里さんの宮古上布ですが、女性の感性から生み出される、「実際に着たくなる、締めたくなる」お洒落な作品としても、私は非常に素敵だと思っています。
白い着物にも、濃地の着物にも、藍にも生成の着物にも良いですね。写真はコーディネート担当 井上和子の考えたコーディネートですが、白緑の爽やかな下井紬・薄機とのコーディネートです。
上布の帯は特に盛夏に限定せず、締めていただく事ができます。(冬は透け感がちょっとあれですが・・)ぜひ、お気に入りの帯として、コレクションに加えてあげてください。
作品担当 井上英樹