「作り手の春化秋冬」小野正嗣 / 監修:太田馨 希少な一冊をいただきました

「作り手の春化秋冬」小野正嗣 / 監修:太田馨

こんにちは、作品担当 井上英樹です。

知っている人は知っていますが、私の趣味は子供のころから読書です。

仕事柄、着物や民藝に関する書籍はたくさん読んでいますし、現代アートや美術の書籍も読みます。経営者の一人としてビジネスに関する書籍や、販売や営業、マネジメントや心理学なども月に最低でも10冊以上は読んでいます。

中でも、趣味として楽しい時間がもらえるのは、そうです、着物の本を読む時です。

着物の本はなかなか普通の書店で数多く置いておらず、インターネットで探したり、見つけて気になったら必ず押さえるようにしています。

今回、ご紹介する一冊は、ただでさえ貴重な着物の本の中でも、さらに貴重な通常の流通に乗らない限定本?です。

「作り手の春化秋冬」小野正嗣 / 監修:太田馨

これは美しいキモノ(ハースト婦人画報社)2017年夏号(No260)~2019年春号(No267)に連載された企画を再編集した一冊です。

作家 小野正嗣さんが個性豊かな染織家を訪ね、その時の話や作品への想いを取材して、書き上げています。

登場する染織家は「添田敏子さん」「福永世紀子さん」「山下芙美子さん」「伊藤峯子さん」「上原美智子さん」「松尾鏡子さん」「福井貞子さん」「天羽やよいさん」の八人。その道を切り開いた、力と個性ある染織家たちです。

本の中で小野正嗣さんは「ご自身は染織や着物のプロではなく、評価する立場ではない」と書いています、その分、染織家自身の魅力や個性に注目したそうです。

結果として、作り手の想いや背景、活き活きとした表情までもが見えてくるような、何とも瑞々しい本に仕上がっています。

そして、今回、この本を拝読することができた経緯ですが、監修である太田馨さんから、ひょいっと、本をいただいてしまったということがあります。

太田馨さんは、工芸作家作品や産地の染織の別注品を手掛ける京都の問屋さんの代表であり、私の手掛ける別注品の一部のアドバイザー的な人です。また、お願いの勘所などを指導いただく先生の一人でもあります。

太田さんの取引先の中では最も若い私ですが、なんやかやと面倒を見てくれています。本当にありがたいことです。

今回、その太田馨さんが「もっと勉強しなさい」と一冊送ってくれたのです。これは、まさに学生と先生の間柄です。

もちろん、美しいキモノ本誌でも読んではいましたが、当時は、自分自身今よりもさらにまだ染織の理解が追いついておらず、咀嚼できていませんでした。

時がたち、今回、私自身もどのくらい、理解度が上がっているかを確認できるいい機会とも率直に感じました。

染織作家の手掛ける作品は「作家もの」と呼ばれています。

大量生産品にはない個性豊かな表情や、染めはもちろん、糸からもこだわり抜いた上質な織上がり、唯一無二の世界観が染織ファンを魅了しています。

基本的に一人か少人数の家族的工房で制作されているため、ある意味で、際限なく作品を練りこみ、作り上げられています。

ですが、催事やオンラインショップでよく見かける「民藝の遺伝子と美!」や「絶え間ない修行の成果!」や「大変な苦労が!」のようなニュアンスの、盛りに盛った表現は私は正直に言ってピンと来ません。

こちらの本に登場する染織家さんにも何名にか会っていますが、その誰もが呼吸をするように自然と染織に向き合って、純粋に作品を生み出すことを楽しんでいらっしゃいました。

もちろん、相当の苦労や努力は積み重ねてきた方たちですし、柳先生や芹沢先生の流れをくむ、いわゆる民藝の道の方もこの本には登場します。

ですが、その方たちの持つさりげない生き方や、ホッと心が満たされるような優しい作品には、そんな盛りに盛った、大きな声はいらないと思うのです。

「手間暇知ってもらうより、作品を見て ああきれい、いいわねだけでいいと思う」とは伊藤峯子さんの言葉ですが、染織作家の作品には、自身の感性を研ぎ澄ませて、そのいうなれば「小さな声」に耳を傾けるような、純粋な視点と静寂な心もちが必要だと思うのです。

少し脱線しましたが、この本を読み終えて、率直の想いは私自身の染織との向き合いかたを再確認する意味でも、非常に価値のあるものでした。

さて、本についてお礼を言うべく、太田さんに早速電話をかけました。

そうすると、この本に隠された思いを伺うことができました。

まず、この本のカバーは因州和紙でできています。

これは染織家 山下健さんの紹介で縁を結んだ和紙問屋さんから仕入れた紙だそうです。というのも、山下さんは和紙の会社で働いていたことがあるほど、その道に造詣が深く、当然ですが、このクオリティーの本に合わせて対応ができる和紙を扱う先も案内ができたそうなのです。

また、値段が付けられていないことにも意味がありました。

この本に登場する方は太田さんの会社でも取り扱いのある作家さんです。

太田さんは問屋さんです。ただ作品を卸す相手というわけではなく、自身の分身ともいえる作品の流通を預けるパートナーです。太田さんに言われた言葉で「私は、作り手の方を向いているからね」というのは、私的にも非常に印象的な言葉でした。

これは、別に私のような小売店を軽視するわけではなく、作り手と真摯に向き合うことでしか、想いのこもった作品が生まれないこと、そして、作り手からの信頼を得られないことを意味していると思います。

(この話をすると、いつも「そんなこと言ったかなあ・・?」といわれるのですが)

「この8人と、小野さんの仕事と時間に値段を付けることに抵抗があってね。値段付けなかったんだ。」と伺いましたが、それだけに大切にしたいことがあったのです。

また、この本の巻末には小さな裂が張り付けてありました。

話では8人全員の裂があり、一冊一冊異なるそうなのです。また、いわゆる見本裂の中から、特別に分けていただいたのだそうです。

これも聞いた話ですが、通常見本裂というものが、流通に乗ることはありえないことです。それはそうです、この見本を見ながら、問屋さんは注文して、織り上がった作品が納品されてくるからです。

この時に、同時に見本裂を手放すことは無く、次回にも生かして使われるものです。これは太田さん自身が、一人一人に頼み込んで特別に実現した特別なことだそうです。

「へー、貼ってあるんだ、すごい」ということだけではなく、この小さな裂にこそ想いが隠されていました。

「一本の糸というか人と人のつながりを意識した本だよ」

とも教えてくれましたが、内容はもちろんのこと、その背景や想いのつながりにも深く、感動した一冊です。

なんと言いますか、今回のブログは読書感想文というより、自分の考えをひたすらに並べただけのような。

小野さんの言葉を借りれば、私は書評の専門家でもないですし、ましてや、文章を書く作家でもありませんので、この文章も井上英樹 私自身への向き合いだということにしておこうかな・・と。

作品担当 井上英樹

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