鞄であり、インテリアであり、アート。木彫家 亀井勇樹さんの「樹の鞄」にご縁をいただく

ある日、川崎市から車で約3時間、長野県は八ヶ岳にむけて車を走らせていました。

instagramでふと目を止めた作家さんに会いに行くためです。

私、作品担当 井上英樹は一日の結構な時間をinstagramに使っています。

もちろん、千成堂着物店としての投稿はもちろん、素敵な写真からインスピレーションを得たり、アクティブな活動をしている作家さんたちを探していたりと色々に活用しています。

弊店の投稿にいいねをつけてくれた方は必ず覗きに行くのですが、あまりにも完成した世界観をもつ「樹の鞄」さんのアカウントを見て、その感動のままに車に乗っていました。

instagramで活動を公開している作家さんなら、大体の場合、作品展のスケジュールや告知をしていると思います。亀井さんのアカウントを見ると、週末に八ヶ岳山麓の会場で作品展を行っていると告知があり、これは行くしかない!と。

参照:樹の鞄 亀井勇樹 / 千成堂着物店 公式オンラインショップ

さて、渋滞に巻き込まれつつ、八ヶ岳の近くの展示会場「八ヶ岳高原ヒュッテ」につき、まずは、その清涼な空気に感動。川崎に比べると気温は涼しく、また、月並みな表現ですが空気がおいしいのです。

八ヶ岳高原ヒュッテは、文化財にも指定される建物で、時間を経てしか生まれない深みのある空気、艶のある木の素材感を体験できる素晴らしい建物。階段を登り、展示会場につくと、穏やかな音楽が流れる部屋に、樹の鞄たちがおさまっていました。

会場をうろうろしていると、亀井さんの奥さまが優しく声をかけてくれました。色々と話をしましたが、一番驚かれたのは、「展示会のためだけに私たちが川崎から来た」ということでした。私的には、とにかく作家さんには会いに行くことを大切にしていますが、そう言っていただけるのも嬉しかったり。

そんなこんなで、亀井さんご夫妻にご縁をいただき、晴れて、樹の鞄をご紹介できる機会をいただきました。

亀井勇樹 樹の鞄 千成堂着物店
参照:樹の鞄 亀井勇樹 / 千成堂着物店 公式オンラインショップ

樹の鞄は、亀井さんが樹齢100年を越すシナノキの素材と向き合い、そのインスピレーションで制作を行う木彫作品です。その昔、亀井勇樹さんが奥さまにプレゼントした木彫りの鞄にルーツをもち、現在はめでたく30周年(2020年時点)を迎えました。

色々な作風や配色が存在するのですが、今回は当店に到着した作品について、書こうと思います。

まず、この「樹の鞄」という作品は、実用品である、ということです。

ファンタジックな雰囲気があり、童話の登場人物のような空気を漂わせていますが、漆を使い、幾重にも仕上げされた表面は、防水性にも富んだ強い仕上げです。あくまでも滑らかに仕上げられた表情は、キズも付きにくく、ある意味での「強さ」を持っています。

ハンドルはキンモクセイの枝を彫り上げて制作されています。

亀井勇樹 樹の鞄のハンドル 千成堂着物店
参照:樹の鞄 亀井勇樹 / 千成堂着物店 公式オンラインショップ

使い込むに連れて、細かいキズや擦れなどが発生すると思います。ですが、漆の表面にどこか馴染み、家の片隅にある代々使い込まれた、磨き込まれた古いピアノのような、良い空気を纏っていくのです。

また、最も私がインスピレーションを受けたのは奥さまの言葉で「この鞄を買った方が、飾るための棚を自身で作った」という一言でした。そのとき、この「樹の鞄」という作品は実用的な鞄の枠を越えた、オブジェであり、アートであると、理解ができたのです。

丁寧に彫り上げられた内側には亀井勇樹さんのサインとシリアルナンバーが刻まれています。世界に一つの作品です。

亀井勇樹 樹の鞄の内部 千成堂着物店
参照:樹の鞄 亀井勇樹 / 千成堂着物店 公式オンラインショップ

今、新型コロナウイルスの影響で「お家時間」という単語が聞こえてきます、もしかして、この「樹の鞄」という作品は「外の空気が恋しい時間」に、一つの楽しみを作ってくれるのでは?ということです。

外出の時にはもちろん、お家のなかで愛でてその風合いを深める。この発想は天然の素材から産み出される、奥深いアートなのだと思いました。

そして、底の部分にも、一つとして同じもののない「アート」が刻まれています。こちらの樹の鞄はグラデーションのある幾何学的な模様が刻まれています。本体部分と、底に隠された模様が密かな楽しみを感じさせてくれます。

亀井勇樹 樹の鞄の底部分
参照:樹の鞄 亀井勇樹 / 千成堂着物店 公式オンラインショップ

現在、千成堂着物店の活動は、文字通り、着物店としての活動がメインになっています。

ですが、正直な話、着物を着る方に染織作品を提案するだけでは、私の思いは伝わりきりません。

着物から解釈を大きく広げて、使う人の「人生を豊かにする工芸作品」を提案できる媒体に進化しようと、強く感じたのは、この樹の鞄という作品からです。

ターニングポイント、というものが人生にあるとするのならば、きっと、この亀井勇樹さん、奥さまとの出会いが、それなのかも知れません。

作品を語っていく、ことよりも、実際に見て、触れて、感じていただくこと。

私は、この「樹の鞄」という作品から、色々な「想い」を受け取っていただきたいと思います。

作品担当 井上 英樹

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