「工芸の気配をまとう夏」― 本田利夫 × 北村武資 × 武村小平 ―

夏の装いに求められるもの。それは「軽やかさ」と「涼感」だけではありません。着る人の感性と、作り手の思想が響き合うとき、そこに初めて“豊かさ”が生まれます。
今回ご紹介するのは、三人の作り手による共演が叶えた、静謐でありながら奥行きのある夏のコーディネート。
その背景にある物語をご紹介いたします。
本田利夫さん(本田織物工場)― 越後の伝統を織り継ぐ人

着物に使用したのは、本田利夫さんの工房が手がけた夏塩沢の着尺。
本田さんは、越後上布・夏塩沢の織元として新潟・南魚沼にて活動を続ける伝統工芸士。この一反は、黒地にわずかな青みを湛え、夜空に小さな星が瞬くような絣が浮かびます。すっきりとした柄行きの中に、夏塩沢特有の透明感と素材感が静かに息づいています。
その涼やかさと静謐な佇まいは美しく、そして洒脱。一線を画す存在感を放つ作風です。
北村武資さん ― 羅を現代に甦らせた人間国宝

合わせた帯は、北村武資さんの八寸名古屋帯「上品羅(じょうぼんら)」。
ご存じの通り羅と経錦、二つの技術で重要無形文化財技術保持者(人間国宝)に認定されました。
上品(じょうぼん)は仏教的には「清らかで、徳の高い境地」という意味があります。「飾り立てず、ただ清らかであることの美しさ」とも言えるかもしれません。非常に高度な織組織によって生まれる立体感と、美しい陰影はまさにその概念を映すかのようです。しかも、その美しさだけでなく、実際に締めたときのしなやかさと安定感も、使い手を唸らせるポイントです。
2022年、惜しまれつつ世を去った北村さんですが、その技術と哲学は工房「織匠 北むら」にしっかりと受け継がれています。今回の帯も、その工房の正規作品となります。その貴重な継承の中で織られた逸品です。
武村小平さん ― 型染に静かな革新をもたらす作家

帯揚げは、型染作家・武村小平さんに弊店が別注した一枚。限定作品になります。
1980年大阪生まれ。金沢美術工芸大学大学院を修了後、熊野工芸工房で染色技術指導員を務め、栗山工房での経験を経て、2013年に独立。現在は滋賀県を拠点に活動されています。
伝統的な型染の技術をベースにしながら、どこか静かな遊び心を感じさせる図案は、見る者の記憶に残ります。
本作「矢羽根」は、二色のワントーンで染め上げられており、シンプルなモノトーンのコーディネートに工芸的な奥行きを添えてくれます。確かな実力を持ちながら、日常に寄り添う染めを生み出す姿勢が魅力の作家です。
“涼やかな知性”をまとう夏の装いへ
着物・帯・帯揚げ、それぞれが「今、この時代に工芸を継ぐ人」の手によって生まれたもの。
夏の着物を、ただの季節の装いではなく、「美意識をまとう時間」へと昇華してくれます。
軽やかで気品あるお洒落着として、夏のお出かけや美術館、お食事の席にもおすすめの一揃え。
風の変わる季節に、ぜひ手に取っていただきたい装いです。
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