桜が少しずつ咲き始め、本格的な春の装いが楽しめる季節となりました。しかし、暦から考えるとまだまだ袷の季節。そんな中、温かい日中は単衣でも良いかな・・となってしまいますよね。着物には色々な決まり事がありますが、それを知っている上で、気温を優先として袷や単衣を自由自在に着こなすのも現代きもの的発想ではないでしょうか。今回は、そんな自由な気持ちをスタート地点に、春に着たいコーディネートをタイプ別に5つご紹介いたします。
- 『スタイリッシュ』に着る 米沢紬 板締め絣の着尺 に フォリアのレース九寸名古屋帯 を合わせる
- 『クール』に着る 千成堂オリジナル色無地 着尺 に 多ち花 ガルーダ更紗 九寸名古屋帯 を合わせる
- 『ロマンティック』に着る 窪田織物 薩摩花織 着尺 に 多ち花 古渡金更紗 手描金彩 千成堂別注 九寸名古屋帯 を合わせる
- 『レトロシック』に着る 山口良子 首里花織(首里織) 着尺 に 武村小平 ササユリ 千成堂別注 九寸名古屋帯 を合わせる
- 『ポジティブ』に着る お召(御召)わおん 着尺 に フォリア 金銀粉押菊文×雪さらしの諸紙布 千成堂別注 八寸名古屋帯を合わせる
- この春、あなたの印象付けたいスタイルはどれ?
『スタイリッシュ』に着る 米沢紬 板締め絣の着尺 に フォリアのレース九寸名古屋帯 を合わせる
白の着物に黒の帯をあわせるのは、比較的誰でも挑戦しやすい、おしゃれでスタイリッシュなコーディネートの一つです。細密な蚊絣(遠目にはグレーの無地にも見える)は板締めの技法で作られたもの。米沢の織元 白根澤さんが手掛けた貴重品。帯は染色工房 Foglia 仁平幸春さんの代表作「アンティークレース」の九寸名古屋帯。図案から描き起こしてもらった、別注品です。
シンプルでありながら深みのある素敵な着尺に女性らしさと華やかさが表現された帯を合わせるスタイリッシュなモノトーンの世界。帯揚げや帯締め、バッグなどの小物の変化を楽しみながら春から夏まで駆け抜けて欲しいコーディネートです。
『クール』に着る 千成堂オリジナル色無地 着尺 に 多ち花 ガルーダ更紗 九寸名古屋帯 を合わせる
着尺は既に何度もブログに登場している当店オリジナルの色無地です。緯糸には野蚕の糸を加え、花織のような菱の柄を全体に立体的に織り出しました。青みの色はとってもシック。大人にこそ似合うお洒落さがあります。
合わせた帯は、何枚もの型を使い染料を摺りこむ京友禅の技法「摺型友禅(すりがたゆうぜん)」でジャワ更紗の伝統的なモチーフの一つでもある神鳥・ガルーダを染めた九寸名古屋帯地です。
「黒」と言っても色々ある中で、着尺も帯も青みを含んだところに統一感を持たせてクールに決めたコーディネートです。合わせる小物は茶系でカッコ良さを追求するのも有り、白やブルーを増やして少しぴりっとさせる女性らしさを加えるのも楽しそうです。
『ロマンティック』に着る 窪田織物 薩摩花織 着尺 に 多ち花 古渡金更紗 手描金彩 千成堂別注 九寸名古屋帯 を合わせる
窪田織物が手がけた薩摩花織の着尺は、名古屋帯や洒落袋帯との相性が良く、単衣や袷の着物にもお勧めです。明治維新150周年記念作品として企画されたこの作品は、古代染織・花織の着物へのオマージュ。華やかな着姿が楽しめます。
合わせた帯は、古裂の更紗のモチーフを摺型友禅で染めた九寸名古屋帯地。紺系の地色にニュアンスカラーの色味を加えた当店の別注色で、太鼓と前柄には手描きの金彩を加えた一点物。紬や麻の着物にも合わせられる、上質でお洒落な帯です。
帯は夏向けの生地で透け感がありますが、芯を変えることで単衣の帯にも対応可能です。優しいパステルカラーの着尺は、春らしい暖かく柔らかい色味で、合わせる帯も優しさの中に美しさをたたえたものがおすすめです。小物はニュアンスカラーで柔らかい世界観を追求すると、より雰囲気が出ます。
『レトロシック』に着る 山口良子 首里花織(首里織) 着尺 に 武村小平 ササユリ 千成堂別注 九寸名古屋帯 を合わせる
山口良子さんの手掛ける首里織は、完成度の高さと美しさに定評があり人気です。こちらの絽の入った作品は織られる数が特に少なく、プレミア級の作品として着物通から高く評価されています。絽の入った着物は「夏物では?」というイメージがありますが、地もしっかりしていて、透け感もないこちらは単衣向きです。人気の型染め作家 武村小平さんの九寸帯を合わせました。こちらは、当店の別注品として色味や素材をリクエストした作品になります。
こちらの着尺と帯は共に現代の作品、ですが、しっとりとレトロな雰囲気もあると思いました。渋みのあるシックな色めもさらにアンニュイな世界観を醸し出します。仕上げる小物はアイボリーなどですっきりまとめるのも良いですし、少しアクセントに黄色などをプラスするのも可愛いと思います。
『ポジティブ』に着る お召(御召)わおん 着尺 に フォリア 金銀粉押菊文×雪さらしの諸紙布 千成堂別注 八寸名古屋帯を合わせる
変わり格子のお召 着尺です。草木染を下染、さらに化学染料で仕上げた、きれいな発色の一反です。染料は刈安、これは優しく美しい黄色系を発色する代表的な草木染の染料です。地色は透明感のあるベージュ系に抑えてありますので、華やかですが華美になりすぎない着こなしが楽しめます。
帯は染色工房 Foglia 仁平幸春さんの作品。雪さらしを4回程度施すことによりその白さを強調した「諸紙布」の八寸帯を生地として、金属の粉を版で押し染めた作品です。
元気な春を着こなしで楽しみたい方にはこちら!黄色を活かしたポジティブなイメージでのコーディネートです。難しい「大人の可愛さ」を堪能する春も心が躍ります。合わせる小物は茶系や黒で「大人感」をプラスするも良いですし、もう少し「可愛さ」を満喫したい場合は白やグレーも宜しいかと思います。
この春、あなたの印象付けたいスタイルはどれ?
さて、コーディネートよりテーマ別に分けてみましたが、今回のご紹介した着尺は袷にも単衣にもなるもの、帯も単衣から夏まで楽しめる帯という優秀なものばかり。さらに組み合わせを変えれば雰囲気の変化を堪能できるものばかりです。着尺や帯の持つどの世界観を引き出すか?も、コーディネートの楽しみですね。この春から巡る夏にかけて、自分の楽しみたい印象を決めて着こなしを考えてみるのはいかがでしょう。
<スタッフ マキコ>