前回のブログでは、フォーマルに着る色無地をご紹介いたしました。素敵な式典などの行事が終わりましたら、会食や趣味の観劇などに同じ色無地をスマートに着こなしてしまいましょう。「色無地をカジュアルに楽しめる九寸名古屋帯」を集めてみました。
- 千成堂着物店 「野蚕白着尺 菱」 青黒色 に 玉井佐知 「夜の街 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
- 村江菊枝 「白段格子花織帯地」 九寸名古屋帯 を合わせる
- 染の川勝 色無地に しょうざん 「花更紗文様 手描×生紬一珍染帯 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
- 関美穂子 「花園 千成堂別注色」 九寸名古屋帯 を合わせる
- 貴久樹 ナチュラルタッサー雪織に 織楽浅野 「花雪輪 千成堂別注色」 九寸名古屋帯 を合わせる
- 大月俊幸 「綾織の絣帯 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
- 染の川勝 色無地に 井上美央 「trace 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
- 桑原牧子 「六瓢のはな 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
- 千成堂着物店 「野蚕白着尺 菱 一尺三分」 に 洛風林 「リヨンの花」 膨れ織 九寸名古屋帯 を合わせる
- 洛風林 「競花錦 千成堂別注色」 膨れ織 九寸名古屋帯 を合わせる
- 洛風林 「花十字文」 紬地 九寸名古屋帯 を合わせる
- 色無地をお勧めする理由
千成堂着物店 「野蚕白着尺 菱」 青黒色 に 玉井佐知 「夜の街 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
染色作家 玉井佐知さんに別注した九寸名古屋帯「夜の街」です。かつて手掛けた額装作品から展開した帯で、とある冬の夜・きらきらとした瞬きが表現されています。紬地の染め帯です。紬や織の着物、紋の無い色無地といった着物にあう洒落帯です。
玉井佐知さんは京都在住の染色作家。20ｍを超える大型作品、洒落たムードの額装やパネル作品に特に高い評価を受けています。線はもちろん、その色味には多くのファンがいます。高級家具ブランド内での作品取り扱いもあり「飾る」ことでの評価が特に高い方です。衣類など装いに関する領域では作品を発表しておらず、今回は特別に制作をいただいた一点ものとなります。
一点ものの帯を締めれば、それは勿論、世界に一つしかない自分だけの着こなしとなります。特にこちらは、この帯の雰囲気から夕刻から夜にかけての会食や観劇などのお出掛けに素敵なコーディネートとなるでしょう。
村江菊枝 「白段格子花織帯地」 九寸名古屋帯 を合わせる
帯は、格子と絣をすっきりと組合わせた品の良さと、都会の雰囲気を感じさせる現代的な感性。東京在住の染織家 村江菊枝さんの手掛けた作品です。
村江さんはその瑞々しい感性に高い評価を受けています。毛織・花織・染織界の重鎮に師事し、磨き上げたその表現力の幅は随一。現在は国画会会員として活躍しています。
浅緑色と白で表現された世界は瑞々しく爽やか。当店オリジナルのこんなに深みのある色無地も爽やかな世界観に導いてくれる帯です。どこか味わいを感じながら、現代的に爽やかな風が通るようなコーディネートが楽しめるのは奥深い逸品ならでは、です。
染の川勝 色無地に しょうざん 「花更紗文様 手描×生紬一珍染帯 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
「しょうざん」京都鷹が峯、言わずと知れた染織の名門老舗。縞の生紬地に更紗文様を染め上げた上質な紬の染め名古屋帯です。
乾くとひびの入る特殊な糊で防染することで染めに風合いを出す古典的な染色技法「一珍染」を使用、柄の部分は「手描き」となり、型の更紗からもう一歩踏み込んだこだわりの仕上がりです。
図案から打ち合わせを繰り返し、配色までにこだわった千成堂着物店オリジナルの作品です、お太鼓の部分は「間」の取り方から作りこみ洒落みを追求、着姿のアクセントになるよう帯前は広めに華やかにと緩急を付けてあります。
こんな風に色無地と帯を合わせれば、深みのある紫と茶色を行き来するような絶妙なワントーンコーディネート。帯揚げや帯締め、帯留めなどの小物をシンプルにも、逆にアクセントを効かせても、と、コーディネートは幅広く楽しめ、その小物使いで幾通りもの雰囲気が生み出されることでしょう。ワントーンで、上品からカジュアルダウンまで気分に合わせて、小物を選んで遊べるコーディネートをご堪能ください。
関美穂子 「花園 千成堂別注色」 九寸名古屋帯 を合わせる
人気の若手型染め作家 関美穂子さんの名古屋帯「花園」です。
ポップで可愛らしい世界観が持ち味ですが、しっかりと主張のある線の表現が特徴的。愛らしいだけではないその作品は「着物に合う帯地」として帯回りを印象的に魅せてくれます。今回、当店の別注作品として、ある「スカーフ」をモチーフに関美穂子さんに考えていただいた配色です。
さて、こちらは「花園」という作品です。文字通りですが、花たちが咲く風景の描写です。くるくるとした線の表現が特徴的で、濃い地色に白い線が残るような作風をかつての作品に見かけることができます。
今回、別注として制作をお願いするにあたり、地と差し色を反転させた新たな表現に時間を割いていただきました。他色のかわいい作品ですが、地色は薄いキャメル系を重ね、落ち着きのある「慣れた」雰囲気に仕上がっています。地色の部分は数回の染めを繰り返し深い色味を表現。ポップではありますが決してチープではない。いわゆる、「若手作家」という世界から一つも二つも抜け出した、表現の妙味をお楽しみください。
渋めの色無地には是非ポップな帯で大人の可愛らしさを取り入れていただきたいと思うコーディネートです。あるようで無い…簡単そうで難しい…大人の「可愛い」。そこをいとも簡単に魅せてくれるのが関美穂子さんの作品です。垂れの部分は着物と色を合わせるのもカッコ良く仕上がる一つです。お太鼓部分がまるで飛び出す絵本のよう。締めたくなる帯、なかなか出会えるものではありません。
野蚕の糸を使った色無地を染め紬のような感性で着る、そんなイメージです。
貴久樹 ナチュラルタッサー雪織に 織楽浅野 「花雪輪 千成堂別注色」 九寸名古屋帯 を合わせる
帯は、古典の意匠を中心に無駄のないシンプルさの中に確固たる奥行きのある世界へと織り上げる、織楽浅野の九寸名古屋帯。現在は浅野裕尚さんが中心となり、個展などでも作品を発表。確かな感性を世に問い続けています。
浅野裕尚さんに直接お会いする機会があり、緒方乾山の器から愛らしい花を写した帯「花雪輪」に弊店のテイストを入れて配色別注を依頼しました。
真ん中にほのかにピンクを挿した愛らしいふんわりとした花です。あまり甘くなりすぎないようにニュアンスのあるグレイッシュな緑茶系へ地色を変え、大人の女性に似合うようテイストを変えていただきました。
極控えめな金糸と銀糸を使ってあることにより、組み合わせ次第で格上げにもカジュアルダウンにも活躍する帯です。優秀な帯は幾通りのコーディネートも堪能できます。色無地と帯のトーンが合っているので小物の配色は自分らしい色で選び放題。イメージするだけで気分が上がるコーディネートです。
大月俊幸 「綾織の絣帯 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
染織家 大月俊幸さんに別注。当店オリジナルの名古屋帯です。
大月さんは本郷孝文氏の工房で学び独立、国展（国画会）に入選も果たした実力派の若手染織家。
こちらは綾織りの地に経絣を組み合わせた大月さんの代表的な作品です。絣の足の表現や、メインとなる菱柄、配色を当店の作品担当 井上英樹の考えたイメージで創作いただきました。
意匠は生成色地にベージュ色の格子柄。その格子柄の間に、茶と焦茶の経絣がリズミカルに続きます。絶妙に引き締め感のある甘味が表現されています。「吉野織だと平織のため平面的な表情になるが、綾織りを選び、格子を織り出すことで立体感を出した。」と語る大月氏のこだわりが楽しめる帯となっております。
力のある帯です。幅広い色のお着物に対応できますが、今回は柔らかい茶色の雰囲気を大切に組み合わせてみました。引き締まった菱柄ですが、この全体のふんわりとした甘味をまとった雰囲気は唯一無二。まるで足取りまで軽くなるような世界観をお楽しみください。
染の川勝 色無地に 井上美央 「trace 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
テキスタイルアーティスト 井上美央さんに別注した九寸名古屋帯です。パネル作品「trace」から弊店のニュアンスを含み、帯に再構築いただいきました。
生地には風合いの良い紬を使用。パネル作品のtraceは「花や植物の持つ美しさに憧れ、近づきたい」というコンセプトの作品。ロウケツならではの繊細なグラデーションとにじみは美しく植物を描写し、幻想的で奥行きのある世界観を見せます。草花のモチーフですが描いたのは井上さんの想う草花であり、特に季節は限定しません。地色は青の上の灰色を引き重ね発色に奥行きを出しています。
井上さんは大阪でギャラリーを主催しており、また写真も手掛ける多彩な方。独特の色の感性は本当にお洒落な帯をお探しの方にこそ響くのではないでしょうか。上質なセンスを堪能できる快作です。配色やぼかしのニュアンスは再制作が難しく、基本的に1点ものとなります。
ここにしか咲かない花。あなたの着姿だけに咲く花。なんて魅力的でしょう。色無地と楽しむ青の世界。合わせる小物は是非、引き算でシンプルに…ご自身が華となるコーディネートをご堪能ください。
桑原牧子 「六瓢のはな 千成堂別注」 九寸名古屋帯 を合わせる
東京友禅作家 桑原牧子（クワバラマキコ）さんに別注した配色と生地をアレンジした手描友禅の染め帯です。作品名は無病を意味する六つの瓢箪（ひょうたん）を花のように合わせた「六瓢のはな」。
もちろん愛らしいだけではありません。繊細な糸目で描かれた瓢箪と蔓、金彩の表現はまさに上質。実直で美しい手仕事の作品です。紬地ですが節感は控えめでさらりとしています。優しい色ですが透け感はありません。
惹き込まれる繊細さに流石！という感情が溢れる桑原さんの作品。生地の質感も是非、手に取って感じていただきたい素敵な帯です。水色のお着物と合わせたコーディネートの場合、合わせる小物を白で優しくするのは勿論良いですが、深みのある紺で引き締めたり、グレーでクールな雰囲気に仕上げるのも魅せ方のひとつです。
千成堂着物店 「野蚕白着尺 菱 一尺三分」 に 洛風林 「リヨンの花」 膨れ織 九寸名古屋帯 を合わせる
洛風林の手掛ける膨れ織の九寸名古屋帯「リヨンの花」。光沢が美しい白の地色に、ゴールドからベージュの濃淡と淡いピンクで花々が表現され、気品が漂います。大胆な柄ゆきながら絶妙な配色、上品で魅力あふれる帯です。
こちらは、名古屋帯ですが、小物使いをアップして袋帯同様に格を上げた美しい着姿もぜひご堪能いただけます。控えめでありながら奥底に印象を残す帯…軽い柄の訪問着から付下げ、色無地、艶のある上質な織りの着物に好相性の帯ですので、まさにフォーマルからカジュアルまで楽しめる万能帯。
優しいピンクの色無地とのコーディネートでは、是非、その優しさを崩さない配色の小物で透明感溢れる世界観を極めてください。
洛風林 「競花錦 千成堂別注色」 膨れ織 九寸名古屋帯 を合わせる
帯は、膨れ織の九寸名古屋帯「競花錦（きょうかにしき）」は洛風林に配色をリクエストした別注品です（副反あり）。競い合い咲く花を抽象的に表現した意匠。上に向かい伸びていくような躍動感を感じさせます。寒色と暖色どちらにも合うイメージで配色。幅広い季節に合わせやすい帯に仕上げました。
白系の帯が好みだけれど、もっとカジュアル感を楽しみたい方に合わせていただきたい帯はこちら。力強さと可愛らしさが絶妙なバランスで堪能でき、独自の雰囲気を醸し出すコーディネートとなります。合わせる小物はニュアンスカラーで楽しんで。
洛風林 「花十字文」 紬地 九寸名古屋帯 を合わせる
洛風林の手掛ける紬の九寸名古屋帯「花十字文」。
鍋島緞通と呼ばれる日本で最も歴史のある絨毯の柄からのインスピレーションです。節感のある紬地ですが風合いはさらりとしており、洗練された雰囲気。
帯にアクセントを持ってきた間違いの無いコーディネートです。やはりこの帯は、紫茶の絶妙な地色が魅力的。どんなお着物もアクセントを効かせてランクアップさせてくれる帯はコーディネートの強い味方です。
色無地をお勧めする理由
多くを語らずとも、帯の組み合わせから、色無地がどんなに幅広く雰囲気を変えて楽しめるかお分かりいただけたでしょうか。簡単に言えば、「色無地×帯」をワントーンにするか、帯のアクセントを効かせるかをお好みで決めたら、後の小物をプラスするか引き算するかの2択で完成です。そんなに気楽に楽しんで良いの？となれば…やっぱりこの春、色無地も帯も少し増やしてお出掛けしたくなりますね。
＜スタッフ マキコ＞
