
当店がオリジナル制作で得意とする全て1点モノの羽織たち。その新作コーディネート6選をご紹介いたします。特に注目したのは大小の「絞り」染です。
ご紹介する羽織は全て、ヴィンテージ期を中心に当店で厳選した着物を解き、風合いを引き立てる丁寧な洗い張りを施して用意した「裂(きれ)」を、手縫いで再構築した完全な一点ものの羽織です。(制作の特徴として衿の天に継ぎがあります)
オリジナル制作で自信を持ってご案内する一つに裏地へのこだわりもございます。合わせる裏地は、全て生地から織りあげ、職人が染める工芸的なお品です。京都の専門店よりこの一点のために取り寄せをしております。
そして羽織のコーディネートで注目するポイントとしましては、正面で着物・帯・帯揚げ・帯締めに加え、羽織紐まで重なることになりますので、その集中する帯周りの配色の重なりを見ることでしょう。
それでは、どのような「重ね」「合わせ」を羽織のコーディネートで魅せているか見てまいりましょう。
千成堂着物店 オリジナル「絞りの松と竹と花」 ちりめん地の羽織 赤墨色


落ち着きのある茶色のちりめん地に絞りで松・竹・花(松竹梅と思われます)をあしらった飛び柄です。一見、渋みのある地色ですが浮き立つ飛び柄が愛らしく、何より格子の羽裏が絶妙の羽織です。

絞りと花のみが可愛らしい甘さを楽しめるという、今回ご紹介する中では「カッコイイ」羽織がこちら。そのムードから重ねる色もトーンを合わせて控えめに。羽織の色に若干の赤味が入ることから、羽織紐には少し赤の入るものを選んでいるところが良いアクセントになっています。
千成堂着物店 オリジナル「絞りの花」 唐草花と縞の地紋の羽織 紫茶色


落ち着いたつやのある中に唐草花や縞の地紋が浮かびます。柄は愛らしい絞りの花の飛び柄です。こちらは、何より深みのある地色が魅力的な羽織です。
今回ご紹介する中では「すっきり」とした印象の羽織。一見、画像では寂しく感じるかもしれません。ですが、こちらは艶のある生地に華やかな地紋があり、実に深みがあります。魅力的な地色からも、コーディネートは幅広くお楽しみいただける羽織です。
そして、コーディネートでご覧いただきたいのは、上でご紹介した着物や帯周りが同一でも、合わせた羽織紐で変化するこの表情です。こちらの羽織には、白がアクセントに入りつつ、愛らしい絞りの花ということに合わせた中村航太さんの白練ドット柄のチョイスが効いています。
千成堂着物店 オリジナル「花と絞り」 紗綾形地紋の羽織 赤朽葉色


控えめなつやのある紗綾形の地紋の広がる中に絞りと花が愛らしく浮かびます。絞りの花の中心部には金彩が施されており、丁寧な手仕事と合いまって非常に高級感があります。
こちらは色も柄も「可愛い」印象溢れる羽織。この羽織の持つ世界観が一番引き立つコーディネートは鳥の子色系の少し黄味が入るトーンで合わせて。
そんな中でご覧いただきたいのは、羽織紐の「小田巻」の紫のカラーと、帯締めに入る「黒のライン」です。このアクセントが入るか入らないかで、印象は大きく変わります。可愛いだけで終わらない引き締める色使いは、真似したいポイントです。
千成堂着物店 オリジナル「黒の総絞りに生成り」 ちりめん地の羽織 黒


黒の紋意匠ちりめん地に総絞りを施した贅沢な裂は、現代では見かけることが難しくなった一品。奇跡的に状態が非常に良く、着映えする作風へと当店のニュアンスで再生いたしました。
今回の羽織の中で、圧倒的な「華やかさ」を持つ羽織はこちら。背中の柄合わせまでも見入ってしまう美しさです。羽織だけでこれだけ華やかなので、合わせる着物や帯の雰囲気は上のご紹介と比べると黄味を控えめに、もっと白よりに柔らかい色めで統一。着物では挑戦できなかった総絞りを、羽織で楽しめるというとても魅力的な一着です。
千成堂着物店 オリジナル「線画の草花と絞り」 ちりめん地の羽織 白鼠色


シボの控えめなさらりとしたちりめん地に線画ですっきりと描かれた草花と絞り。花は白山吹でしょうか、単彩にまとめられた小紋柄は不変に選ばれる素敵さがあります。上質な紬や織りの着物に合うムードがあります。
とても合わせやすく「大人」の印象が魅力的な一着。それでいて小紋柄なので、全体的に柄が入る控えめに漂う可愛らしさが素敵。何よりショールやストールでも印象がガラリと変わることが楽しめます。
今回のコーディネートでは、帯周りに紫を選びアクセントとしていますが、お好みの色や気分の色で楽しめる羽織です。春先には合わせる着物をピンクにしてピンク×グレーの配色を楽しんだり、少し夏の気配が近づいたらブルー×グレーなど…イメージを膨らませると、コーディネートの振り幅が大きくてワクワクします。
千成堂着物店 オリジナル「染疋田ぼかし」 羽織 墨色~銀鼠


味わいのあるシボが浮かぶ繊細な生地感に、染疋田が美しい羽織です。上質な紬や織りの着物は勿論のこと、袷の時期に幅広く合うムードがあります。裏地は淡い桜色の中に描かれた鳥獣戯画をお選びし、世界観を極めた完成度の高い羽織となっております。

参照 : 羽織 / 千成堂着物店 公式オンラインショップ
絞りをご紹介してきた中では、こちらは唯一「染疋田」という技法の羽織。一見、絞りに見える染疋田の何が良いかと言えば、厚み無くすっきりとした着こなしが出来るところ。そして流れるようなぼかしも染疋田ならではの美しい印象が魅力的。コーディネートで見るように、帯のアクセントも羽織紐のアクセントも全て楽しむことができる「美しい」一着です。
絞りの羽織は「可愛さ」と「美しさ」を大人のバランスで楽しむ
絞りは好きだけれど自分には似合わない、何より厚みが気になるということで選ばない方は少なからずいらっしゃるのでは無いでしょうか。かく言う私もその一人。それでも絞りを楽しみたい…という方には是非、今回ご紹介したような絞りの羽織がおススメです。ご覧いただいたように絞りにもさまざまなものがあります。きっとお似合いになる絞りが見つかります。
お好みの絞りのバランスが決まったら色味でもお迷いになるかもしれません。そんな時は是非ご自身の髪色なども参考に、お似合いになる色をお考えになるのはいかがでしょうか。似合う色というのは髪色で選んでいたりするものです。
さて、コーディネートでは正面からの配色に注目しましたが、羽織の着姿は後ろ姿も魅力的。背後の柄の流れから着物の色選びなどもご堪能ください。
<スタッフ マキコ>