さて、2022年の1月21日から26日まで作品展「千成堂の別注展」が開催されています。
趣向としては私、作品担当 井上英樹が別注として制作した着物や帯、帯留めや小物たちを一堂にご覧いただこう、という感じでした。
初日から3日間はフリー来店としてお店を開けていましたが、コロナウイルス再拡大もあり終始のんびりムードな3日間でした。(残念、暇ということです)
しかし様々な作家さんを応援できるギャラリーを併設する意味で、練習という意味でも必ずやってみようと思っていた会でして、まあ・・というところです。
後期からはオンラインに舞台を移すのですが、それを待たず、お声がかかったのは「オーダーメイド」やそれに関する依頼。
■ 着物を初めてお求めになる方の一式
■ お草履
■ 染色家さんへの別注帯オーダー
■ 反物のご注文
といった話をメールでいただきまして、そちらに取り掛かっていた時間の方が長いくらいに。
今回、店頭でご紹介していたのは当店でもかなりの人気を誇る方々の作品、しかし、現物というよりオーダーメイドやトータルコーディネートの依頼に終始・・これは一体何を意味するのでしょうか。
まず「展示だったらみんなとにかく見たいはず」というのは私の思い込みではないか、ということ。
私自身は仕事柄もそうなのですが、年間で軽く百人以上の作家さんの作品は拝見します。
作品展に足を運ぶのも大好きで、ハシゴすることも珍しくありません。
ですが実際問題、個展や美術館、展示会にはとにかく行く、という熱量はきっと私ほどはお客様には無い(?)。
言ってしまえば、この駆け出し千成堂ギャラリーには動員はそこまで・・という感じです。
しかも、このコロナウイルス再拡大というのは想定外、いきなりハシゴを外されたような状態です。
しかし、私の日曜大工のたまものである「帯を天井から吊る」という新たな展示スタイルや、初めて目にする大型の染色作品に「感動した」という声もいただき、スペースを使いこなさない手はないとも同時に感じました。
このことから、「ギャラリースペースの新たな活用術」を編み出す必要があるな!と思ったのです。
私がここにギャラリースペースを開設した理由は「作家さんの飛躍をベンチャーキャピタルばりに本気で手伝う」という一点に尽きます。
ノーリスクでお借りした作品をぼやーっと並べて、売れたの売れないのなんて話をするためではありません。
(今回の展示は当店がオリジナルとして発注して買い取った作品が大半、お借りした作品は作家様のご厚意の賜物です)
まず、このスペースを「展示する」という視点から「喜んでもらう」という視点に変えてみましょう。
確かに作品を展示することには意味があり、世界観の演出という意味では絶対のものです。
しかし一歩間違えると、お客様を置いてけぼりにしてしまうリスクがあります。
そして、展示会の開催には実感としてかなり準備期間が必要です。ある程度の規模感ともなれば、相当に大変になります。(今回は内装も触りましたが一か月かかりました)
お客様は十把一絡げにすることはできず、様々な思いや欲するところがあります。
この、一人ひとり異なるところをすくい取り、必要に即した効果的な展示をスピーディーに、素敵に実現出来たら・・いわゆる展示会よりも規模は小さくなるかもしれませんが、準備の負担を軽減しつつ、最大に喜んでいただくことはできるのではないでしょうか。
ポップアップストア、という言葉があります。
突然に表れる、という意味と店を合わせた言葉ですが、商業施設の小さなスペースなどに期間限定で立ち上がるコーナー型のお店のことです。
トランクショー、という言葉もありますね。
文字通りトランク一つのような小さな規模の受注発表会のことです。小売業的には眼鏡やアクセサリー、靴などで行われています。また、海外のメゾンが顧客を招待して先行で行うイベントもこういわれることがあります。
いまや当店のメインコンテンツに育ちつつある「オーダーメイド」とこの「ポップアップストア」「トランクショー」を組み合わせると何か見えてくる気がします。
例えば、平日昼の1時間限定の受注会、のような極めてミニマイズされたイベントを顧客限定で行うイメージでしょうか・・?作家さんの制作の負担にもなりにくいはず。
そして、このイベントを喜びのある体験に変えるためには、このギャラリースペース以外にも、出張的な販売会なども視野に入れても良さそうです。
そして、さらに言えば、オンラインとの融合は絶対になると思いました。
12月のクリアランスはあまりにも店頭でのご予約が多く、実験的に店頭を優先してみましたが、今回のようにコロナウイルス拡大、また大雪など気象状況による来店の減少は避けようがなく、仮に作家さん在廊!としてしまおうものなら、その貴重な時間を無意味にしてしまいます。
とにかく負担になること、それだけは避けたいのです。
しかし、オンラインでは手に取れないし、体験を作る意味では本当に弱いです。
作品は実際に手に取ると全く色合いや印象、迫力が違うことはよくありますし、単純に作品展のその場にいるのは楽しいことです。これは現在のオンラインではどうしようもないことだと思います。
そのため、このギャラリーというスペースを使った、オンラインでも臨場感の伝わる演出を考える必要があります。場合によっては機材に投資が必要かもしれません。
もはや箇条書きのようですが、今回の展示会にはたくさんの反省が残りました、ですが、いろいろなとっかかりも同時に見つかり、今後の展開に影響をすることは間違いがありません。
ギャラリースペース 一年生。
走りながら考えていきます。
作品担当 井上英樹