ギャラリー的な何か、を目指していくのでしょうか

「もっと、呉服業界には”文化的な何か”が無いと駄目だと思う」

「遠回りかもしれないけれど、急がば回れというか」

11月は展示会や個展が多く、様々なアーティストや作家さんと話す機会が多いです。

土曜日に国画会主催の国展を訪れた際、ひとりの染織家さんにいただいたお言葉が心に響きました。

私、作品担当 井上英樹ですが、そもそも出身は呉服業界ではなく、いわゆる「修行」ということをしたことがありません。

一緒に千成堂着物店を作った母も着物は好きですが、特に呉服の仕事をしたことはありませんでした。

そのため、呉服業界の慣習や一般的な常識が無く、フラットな視点でものごとに向き合っています。

自分の目で産地を見て、染織家さんたちと話をして、機屋さんや問屋さんと行動をともにして実地で覚えたことが全てです。

いわゆる、文化的なことというのは従来の呉服業界でも盛んに言われており、一見すると、呉服業界の行動は文化的なものであるように見えます。

しかし、販売的な要素が強すぎて文化的な行動の香りを消している部分も正直あるのではないでしょうか。

当然ですが、作ったものを問屋さんが流通に乗せて、お店がお客様に届けていくことは小売業の本質であり、これは一切に否定ができないことです。

しかし

お店は仕入れから売り上げを引いた分が利益のため、高く設定して割引する手法に走る。仕入れリスクを嫌うため委託しか扱わない。委託品だけでは作品の勉強ができず知識が付かない。

問屋さんは返品が常態化するため、委託の値段を高くしないと採算が取れない。店は知識がないため問屋さんを売り子として呼ぶ。

作り手は問屋さんに買い支えてもらわないと、仕事を自分でとるのが難しく依存するようになる。また、催事で受けの良い商品を作りがちになるため、シンプルなものなどが市場に出なくなる

といった循環を少なからず生んでいきます。

こうなってくると、文化も何も挟まる隙間はありません。右から左に流していくしかできません。

余裕や時間のかかる遠回りが全てとは言いませんが、文化的な含みはその遠回りに潜んでいたりします、よね?

作家さんの個展を開くと言っても、「採算」という言葉があまりにも重く、どうしても奥行きにかけた「販売会」テイストになってしまいます。

私のお店にも、色々な問屋さんや作家さんから展示会をやってくれ、と依頼が来ます。

しかし、これはずっと断っていました。

実店舗にそこまでの集客力がない当店は受けたところで迷惑になりそうですし、期間限定のものでは、とても勉強して丁寧に販売することはできないでしょう。

では、仮に文化的な要素や奥行きを感じさせ、きちんとした丁寧な紹介を織り込んだ、展示会や個展は開く事はできないのでしょうか。

外から眺めた情報であれなのですが、有力なギャラリストは若手を育てて、個展を開き、応援して世界に羽ばたかせていくということもあるそうです。(場所貸し業というより、企画業?に近いのでしょうか)

今、現代アートは強烈なバブルで投資にも値する勢いになっています。若手の現代アーティストを育てていけば、アーティストもギャラリストも強烈なリターンを得ることができる可能性があります。ベンチャーキャピタルにも似ていますね。

私は、もしかして、この要素を上手に織り込んでいけば、もっと文化的で良い循環を持った呉服の世界を作れるのでは?と考えました。

良く、問屋不要論を言う方がありますが、私はこれは全て正しいと思っていません。

作家さんや作り手に不要なプレッシャーや負担をかける問屋さんや変に価格を釣り上げる問屋さんは論外ですが、作品を責任を持って買取って作り手が制作に集中できる環境を作るという目的を果たす機関として問屋さんはすごく優秀なシステムだと思っています。

小さな店である当方はとてもすべての作品を買い取るようなことはできず、問屋さんのこの機能においては一切かないません。

仮にですが、作家さんや問屋さんの作品を丁寧に咀嚼して繋ぎ、お客様に最適な形でご覧いただくことができれば、「作家さんの世界観」「問屋さんの購買力」を組み合わせた、中々規模感のある仕事ができそうな気がしています。

これは文化的な要素を伝えるコンテンツにもなりそうですし、お金の循環も同時に良くできそうです。

見せ方やご購入への道のりを整備して、お客様からダイレクトに仕事が作り手や問屋さんにつながっていくパイプ作り?的なことでしょうか。

色々な意味で、その良さが伝わらずに引っ込んでいるものを、浮かばせていくような丁寧で心を込めた仕事で、何か役に立っていきたいと思うのです。

頭に思い浮かんでいることを文章にするには、まだ煮詰まっていないのですが、この形態を完成させるには「着物店」ではなく「ギャラリー」としての立ち回りが遠からず必要になると思います。

さて、千成堂着物店の店の字はいつか外す時が来るのでしょうか?それとも、新しく何かを立ち上げていくでしょうか?

前回の投稿で書いた「発掘・オーダー・素敵に」ともつながりますが、これからやることは多そうです。

作品担当 井上英樹

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常に産地に足を運び、作家さんとものを作り、お仕立てを知り、そして繋ぎ手の問屋さんとも情報を共有しています。

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