千成堂着物店のあり方を考えることが増えました。かつて、母が生きていた頃は「コーディネートの天才」である母 井上和子の世界観を増幅していくことが私の仕事の大半でしたが、今はその母はいません。
優秀なスタッフ陣は全員は変わらず仕事をしてくれていますし、お客様も増えたり減ったりしながら一定に安定、特に変わらずコツコツ仕事をしています。
現状、コロナの影響もあり、正直に言って着物や帯がたくさん売れる状況ではありません。
ですが、素晴らしい世界観を持つ作家さまや、死力を尽くしてメーカーさんと調整をしてくれている問屋さまのおかげもあり、少しづつですが動きはあります、本当にありがたいことです。その結果、当方のやりたいこと・やるべくことはなんとなく浮き彫りになってきている気がします。
まず、私は何が一番やりたいのかといえば「新しい才能の発掘と増幅」です。
新しい、というのはキャリアの長短ではなく、アパレルや工芸、クラフトなど様々な畑で強い輝きを放つ「人」を、なんとかその気になって、一緒にやってくれないかなという誘いを出すことです。そして、最大の活躍までアシストし続けることです。
和装の世界は「風合いと色味」への驚異的な追求と作り込みで、評価を高めることが可能です。作品を構成する要素のうちの絞られた分野に特化できることは、それだけでも可能性の一つだと思います。
色々な世界から帯留めをフックにして、作家さんとの接点がありますが、その人の手から生み出される世界に、何かの化学反応を起こせることは、楽しくてやりがいのある仕事です。増幅された世界観は、確実に新しい付加価値を持って、世界の人々を喜ばせることができるはずです。
キャリアの長短・業界のいろいろ、そんなところを飛び越えて、様々な才能を見つけて、世に問うお手伝いをする、と考えています。
そして、私は「オーダーメイド」の可能性を極限まで引き出したいと思っています。
和装の世界は幸いなことに、織物、染め物、お仕立てと職人さんによる1点もの制作が多い世界です。また、草履や下駄の履物、バッグ、帯締めや帯揚げなど少ないロットで動くことが普通であり、オーダーメイドは比較的しやすい環境です。
また、お仕立てもオーダーメイドと言って差し支えないほど調整を加えており、こちらも喜ばれています。
自分に合わせてつくり仕立てる「お誂え」という文化もあり、オーダーメイドには馴染み深いのは和装ならではです。現物で選ぶだけではなく、自身のこだわりやスタイルへの想いを込めたオーダーメイドのさらなる浸透を考えています。
自分の好きなスタイルを究極に表現できたら、こんなにも嬉しいことはないのでは?という想いです。
さらに、制作をいただく作家さんやメーカーさん、問屋さん、全てに仕事がスムーズに行き渡るように簡易化されたシステムの構築も必要だと思っています。
ただでさえ制作サイドにとっては複雑で手間の多い仕事です、ここの通りをなんとか整理しないと多分、受けて貰えなくなるでしょう。(自分なら受けない)
やりたいことを大きく2つに分けます。
「才能の発掘」
「オーダーメイドの発展」
これが、今、私がやっていきたいことの2つです。
よく言うのですが、一つだけのメリットではもはや足りることはありません。「うまい・はやい・やすい」は吉野家さんの有名なキャッチコピーですが、3つ揃うことで強力なメリットを生み出していると思いませんか?
私は、もう一つ足せるのならば「素敵にしていく」も加えていきたいと思います。あくまでも、ファッションとして着て楽しいものを作っていくのは必要なこと。
あまりまとまりはありませんが、「発掘・オーダー・素敵に」をこれから掘り下げていこうと思います。
文章にすると整理できますね、これから頑張ることが見えてきました!
作品担当 井上英樹