練り上げた仕事のキレ、生地へのこだわり。
柄を染める、というメイン以外にも見る箇所は多い・・そう、多ち花さんの染める摺型友禅の帯です。
柄の種類にもよりますが、想像を超えるほどの型の枚数で作られる、型友禅の最高の形の一つです。それだけにとどまらず、生地との相性など妥協なく作り込む、こだわりのブランド。
様々に種類はありますが、私はこの「ガルーダ」が特に好きで、当店の定番として取り扱いをしております。
正直に言えば、そこまで大量に仕入れをする当店ではありませんので、別注&別注を許されるのはご厚意でしかないのですが、制作を統括する河合社長にはお世話になっております。
今回、数ヶ月を掛けて企画から参加いたしました「千成堂別注 ガルーダ更紗帯」は思い出がありまして
「photoshopのデータで参考画像を作る」
という、私初の経験をいたしました。
着物の世界は今でも職人さんの感性が最優先です。そのため、photoshopで配色を制作するのは非常に新鮮でした。
私自身、千成堂着物店に関するデザインを自分で行っており、photoshopは一応大丈夫な人間です。
ですが・・配色をデザインするのは非常に難しくスタッフ達と一緒に話しながら「あーでもないこーでもない」と10枚以上配色を制作いたしました。もう、デザインチームで良いですよね。
その中で、「これはきれい!」と全員がOKした配色がこちらです。
正直かなり苦労しました。配色のトーンはもちろんなのですが・・一番苦労したのは「地色」です。
そう、普段に比べて「白い地色」であることは最大のポイントだったのです。
アッシュなトーンでまとめて、白い地色に上に柄を浮かせれば・・きっとスッキリ今っぽい帯ができると踏んでいました。
実際は、このグレー系の色味ではなく絹糸の生成りを含んだ生地なのですが、これは多ち花さんがオリジナルで制作している、河合社長いわく「モタっとした」質感の生地です。
これは染め映えはもちろん、その質感が摺型友禅の雰囲気に映え最高に相性が良い。
そして、帯として「きちんと着物の上で主張する」役割を果たすべく「金茶系の糸目」をコーディネートいただきました。
その結果、アッシュな色目、生地の質感、糸目の主張が合わさり、独自の帯が出来上がりました。
制作した画像ほどには青みはないのですが、生地の質感を生かした上で、糸目の主張を発揮した逸品に仕上がりました。
染めの着物や帯というのは奥が深くて、糸目や地色、生地など様々に影響を受けて作品が完成します。
ある程度仕上がりは読みますが、上がってみると面白いほどに作品は「ゆらぎ」を持ちます。
即興の演奏、そう、ジャズのように。
想定を超えた素敵な作品が生まれていくことを、私は、楽しんでいきたいな・・と思っています。
今回のガルーダ更紗帯も想定を超えた雰囲気の作品でした!大好きです!
作品担当 井上英樹