お客様はもちろんですが、当店に縁のある染織家さん、スタイリストさん、問屋さん・・皆が声を揃えて「あの人はだれ!?」と話題になっております。
染色作家「佐藤碧さん」の手掛けた帯揚げがお店に到着しました。
自身のインスピレーションから力強生み出されるタッチはまさに絵画の表現。
布を舞台にしているため、技法的には糸目を駆使した友禅染めに近い仕事です。
今回の帯揚げは「筆での彩色」も取り入れたとのことで、さらに絵画的技法への発展が感じられます。
こちらは新作帯揚げ「クレマチス」。
8月にオーダーしており、「濃色の表現」「深い緑」をお題にしていました。
そこに「森の中にすくすく育つクレマチス」という、見事な回答をいただいたのがこちらです。
佐藤碧さんのインスタグラムではラフ案が展示されていますが、水彩画をそのまま帯揚げへと昇華していく過程は実に興味深いです。
もう一点は「鶏頭」枯れた茎、種の表情など、各所の面白さや「弾み」に着目、抽象的に描き出された作品です。
佐藤さんらしい、ぼかしやにじみの表現は白地に映え、また、どこにこの柄を出すか・・と楽しく悩むことができます。
秋色にカラーコーディネートされているのも、良い。
こちらもインスタグラムで制作中のラフが展示されています。
佐藤さんの帯揚げはいわゆる和装の枠には収まらず、額装にも堪える絵画の表現という感じがします。
当店はファッションの感覚を生かした着物屋でして、あくまでもコーディネートが作品の制作や品揃えの主軸にあります。
配色やテイストにはある程度こだわりがあるのですが、佐藤碧さんの作品については「ただ、欲しくなる」というアートを見る時の視点が欠かせないと思っています。
もちろん、秋色の今にピッタリの帯揚げではあります、様々な色味が出せて楽しいと思います。というのは佐藤さんも意識されたポイントだと聞いています。
しかし、小難しいことは抜きにして・・単純に心が動いて、単純に欲しくなる。
佐藤さんの手掛ける作品にある、無二の「アート」感覚、これは大切にしていきたいと思っています。
今回の作品も、帯揚げとして使わないで飾っておいても絵になるな、と思っています。
眺めてよし、使ってよし。
こんなに心動く帯揚げは、私は見たことがありません。
<おまけ>

ちなみに、こちら横浜のシルクミュージアムで展示のあった「第26回 全国染織作品展」の図録より、佐藤さんの作品「頬をくすぐる」です。夏の訪問着という踏み込んだ作品ですが、やっぱり持ち味の爽やかさと素敵さが出ています。

子供と妻と一緒に行ったのですが、展示されていた蚕さんのもこもこ具合が・・ちょっと苦手だった模様。私自身、虫関係は苦手なのですが、蚕だけはなんだか大丈夫です。不思議。

作品担当 井上英樹