当店の仕事の大半は「オーダーメイド」に関すること。
お客様からいただくお仕事はもちろん、弊店で発表するコレクション(いわゆる別注)も常に制作を続けております。これは言ってしまえば当店のオーダーメイドです。

当然毎回ではありませんが、洛風林さんのタイミングが許せば、私からリクエストを受け付けてくれることがあります。
もちろん、複数点制作されるため当店の独占販売ではありませんが、それにしても、「この作品があったらな」という願いが叶うのはとても嬉しいことです。(別注、と呼んで差し支えないとお許しももらっており・・実に光栄です。)

井:「柄は夾纈の花文なんですが」
洛:「あ、前に頼まれた柄ですね」
井: 「はい、とっても可愛い、あの柄です、あれを黒地で」
洛: 「なるほど、あとは差し色ですね」
井: 「はい」
洛: 「緑とか・・黄色とかどうでしょう」
井: 「良いです、とっても素敵です!黄色はいかがでしょう?」
洛: 「やってみましょうか」
と、当方の意向を含んでいただき、制作が進みます。
今回入荷した「夾纈花文」の誕生にはそんな経緯がありました。
緑や黄色はトレンド感があり、洒落ものに発表が多い色です。
しかし、気を付けないと派手になり過ぎるという難関ポイントがあり、私だけでは攻めあぐねていました。
洛風林さんにかかれば、なんのその、本当に程よく素敵な差し色として表現をいただきました。

コーディネートは相性の良い飛び柄小紋へ。
こちらの小紋「瑞雲」は成謙さんに制作をお願いした、当店の別注色です。
女性陣と検討を重ねた、華やぎと落ち着きのある配色を目指しました。
大人の配色を可愛らしいモチーフでまとめる、好サンプルだと思います。

こちらは「競花錦」名古屋帯です。
愛らしさと躍動感を両立した、名作柄のひとつ。
こちらも当店の意向をリクエストしてご制作いただきました。
ポイントは「薄いブルーグレー系の地色」と「暖色・寒色 両方に合うこと」です。
井: 「ブルーグレー系の地色の帯が欲しいのですが」
洛: 「なるほど」
井: 「競花錦の制作予定はありますか?」
洛: 「地色はブルーグレーですか?」
井: 「はい」
洛: 「青系で統一するイメージですか?」
井: 「秋の発表なので、暖色も差し色に入れて欲しいのです、寒暖どちらにも合うように」
洛: 「なるほど・・」
ということで、朱と灰青を加えた配色をいただきました。
さらに、前出のトレンドカラー「緑」を中央にすっきりと入れてあります。
まさに絶妙、想定をはるかに超えて素敵。

私が思うに、「メンズライクなグレー」へと合わせるのはいかがでしょうか?
濃い目のグレー系は男前になり過ぎてしまい、女性が手に取るのをためらう色だと思いませんか。
そこに、爽やかさとクールさを併せ持つブルーグレー系の地色を合せて、愛らしいモチーフ&トレンドの配色でとどめを刺す・・と。
帯留は当店でお願いしている「吉田史」さんの作品「向かい合う鳥」です。
洋服の感覚、という言葉はもはや使い飽きた感すらありますが、スーツの方の多いお席でも難なくお洒落を楽しめるのではないでしょうか。
「もらった着物が濃い色で渋いのですが、どんな帯ならすっきり着られますか?」というよくあるご質問にも、自信を持ってご案内できる帯です。
今回、作品が上がって来るタイミングが揃い、二点のご紹介となりました。
どちらも本当に素敵でお勧めの帯です!大好きです。
作品担当 井上英樹