注染作家 内藤早苗さんから、今年の日傘が届きました!
と思ったら、即日お嫁に行くことが決まりました、以上!
・・とこれだけではあまりにもなので、素敵な作品のご紹介を改めてさせていただきます。
内藤さんは注染という技法で布を染める作家さん。
去年(2020年)の作品展からのご縁で、主に日傘を発表していただいています。
柚木沙美郎先生の注染技法から、ご自身でのアレンジを加えて創作される柄は、活き活きと大らか。
壁を彩る大きなファブリックの作品や手ぬぐいにも見事な世界観がありますが、私的にはこの日傘は、内藤さんのデザインが格別に映える舞台だな、と思っています。
現在、内藤さんは女子美術大学に勤めており、クリエイターとの両輪でかなりお忙しいことと思います。
ですが、非常に打ち合わせが丁寧な方で、日傘の制作にあたっても「どんなお色が良いですか?」とお声をかけてくれたりします。
今回はメールで「グレイッシュな大人っぽい配色はどうでしょう・・?」といったニュアンスのお話をしており、きっと、気に留めていただいたのかな、と勝手に思っています。
タイトルは「風」です。
窓から吹き抜ける空気の流れ・風をミニマルに抽象的に表現しています。
注染ならでは「ぼかし」が柄に表現されているのがわかります、そのため、ミニマルな雰囲気の中、生き物のような有機的な気配を漂わせます。
配色は大人っぽい同色のトーンでまとまっており、「実際にさしたくなる」日傘であることもポイントが高い。
当店は一応着物業界に属する店なのですが、最近は様子が変わってきた気がします。
内藤さんをはじめ、クラフト系のギャラリーで主に作品を発表される方とも多くのつながりができており、「高級呉服店でございます」という感性で作品には触れていません。
その方が自由で、楽しい、気持ちがすっきりと晴れるような出会いがありますし、お店を気にしてくれるお客様方にも、新鮮な提案ができるからです。
「コンテンポラリー」
とは、現代的、時代的という意味ですが、まさに内藤さんの今回の日傘は、それがピンと来ます。
そして、内藤さんという作家さんの手や感性が生み出す「ゆらぎ」や「偶然性」は、新しい中にもどこか懐かしい、豊かな奥行きを感じさせます。
私が、内藤早苗さんという人の作品に強く感じているのは、奥行きとそこからくる楽しさです。
今回の日傘も最高です。
こぼれ話:
イメージ写真も私撮影です。柄の持つ揺らぎを表現するべく色々考えていましたが、何か「動」を仕込みたく、日傘を左右にゆすりながら撮影しました。水面下でも工夫有るのみ。
作品担当 井上英樹