いよいよ五月も残り僅か、九州や関西は梅雨入りが発表され、いよいよ、関東もまもなくといったところでしょうか。(例年よりかなり早いらしい)
そんな絶妙のタイミングで和歌山県の橋爪玲子さんから届いたのは「紫陽花(あじさい)」をモチーフにした扇子たちでした。
当店では不動の人気を誇る橋爪さんの扇子ですが、常にテイストはアップデートしており、その時の発送や時代の雰囲気を込めて、お願いしています。
最初は小花の集合したデザインを考えていたのですが、橋爪さんの作品のアーカイブを見ると「hydrangea」と記載された作品があり、なるほど!と思うと同時に、この季節にぴったり!と即決しました。
hydrangeaを日本語で発音すると、ハイドランジェアでしょうか、そう、紫陽花をモチーフにした作品です。
細かい花々が集まって丸く、ふんわりとその姿を見せますが、橋爪さんはもう少しクローズアップした視点でデザイン、小花の集合をグラフィカルに表現しています。
日本では梅雨時期の花のイメージが強いのですが、ちょっと調べてみると梅雨の無い海外では初夏から夏の花というイメージだそうです。
水が大好き、という花には違いがなく、その名前にもhydro(水)の意味を含みます。
もともとのデザインベースは存在しましたが、打ち合わせの時に「ちょうど、青系の漆があります」とお教えいただき、バイカラーも制作をお願いいたしました。
打ち合わせでは「華やかに」という単語が出てくるのですが、ただただに、花をたくさん描いたから正解というわけではありません。
その程の良さが絶妙、橋爪さんの作品に感じるのはその飛びぬけたセンスの良さです。
基本的なテイストを伝えて、あとは、しっかりとお任せができる。橋爪さんはそんな安心感がある方です。
絵画調のデザインよりも、ある意味では、抽象的なデザインの方がまとめる難易度は高いと思います。
ですが、届くすべての作品は常に完成されたテイストで、そんな心配は無用。
優れたグラフィックデザインを丁寧に眺めるような、独特の感動があるのです。
作品担当 井上英樹