「さりげない」という凄み。柳崇(やなぎ そう)さんに特注した帯が届きました。

千成堂着物店 商品担当 井上英樹です。(@hidekiinoue_sennarido

なんと、当店の特注品として制作いただきました!「柳 崇(やなぎそう)」さんの作品をご紹介します。

染織家は日本工芸会や国画会などに所属する方や、フリーで自由に創作活動をする方など、数限りなく存在します。ですが、この方ほどに完成した世界感をもつ染織家はいないのではないでしょうか。

氏の工房は現在活躍する若手染織家が修行した場所でもあり、糸や染、織といった技術的な部分はもちろん、その哲学や仕事を納めた場所でもあります。

柳崇さんはあの民芸運動の中心人物「柳宗悦(やなぎむねよし)」先生を叔父にもち、 柳悦博さんのご長男にあたります。 色々と語ろうとすれば語ることはできる方ですが、今回はその作品にある「さりげなさ」に触れていこうと思います。

柳 崇さんに帯を頼もうと思った経緯

小倉商店 本場結城紬 100亀甲 白よごし
参照:小倉商店 結城紬 着尺

この作品は「本場結城紬卸商 小倉商店」さんの本場結城紬に経緯があります。

それは「100亀甲 細工 ベタ(総絣)白よごし」という究極の完成度を持つ一反です。(現在、腕の良い職人の高齢化もあり、ここまでの作品が流通にのるのは奇跡に近いことです。)

京都の紬問屋であり、小倉商店の別誂え品などを手掛けるO社の展示会で、その結城紬に出合ったことが、すべての始まりです。「真綿の結城紬は野暮ったい」そんな印象を全て吹き飛ばすような潔さと、手括りの総絣の不揃いな揺らぎがもつ、工芸的な美しさ。高額なためかなり悩みましたが・・思い切って仕入れました。

小倉商店 本場結城紬 100亀甲 白よごしたたんである画像
参照:小倉商店 結城紬 着尺

そして事件発生。コーディネート担当の井上和子が一生懸命考えましたが、あう帯が無いのです。あまりにも着物の質感が高く、生半可な帯では一切通用しないのです。また、総絣ということもあり、柄の主張のある帯は賑やかになりすぎてこれも合わない。そんなときに、柳さんの作品に吸い寄せられるように出合ったのです。

柳 崇さんの工房にお邪魔して、無理を言う

美しい着物2019年春号 河村久美のご自愛アイテム「柳崇」「柳晋也」
参考資料:美しいキモノ(ハースト婦人画報社)2019春号 河村久美のご自愛アイテム

よくよく調べてみると柳さんはO社長と親交があり、作品を取り扱っていることがわかりました。O社長が東京出張のとき、世田谷の某所にある柳さんの工房「柳舎」にアポイントを取ってもらい、一緒にお邪魔することにしました。

本当は「着物に合わせて帯を織る」ようなことは行っておらず、あくまでも、自分のインスピレーションで作品をつくっている方です。O社長も工房に出かける直前まで「着物を持って行くのはやめた方が・・」という論調でしたが、最終的には「だめもと」で持って行くことになりました。

柳崇さん、奥さま、ご子息で染織家の柳晋哉さんの3人に織物の話を伺い、最後に思い切って「この着物に合わせた帯を織っていただきたい」と頼みました。すると、奇跡的にもOKをいただき、製作いただけることになったのです。

柳崇の帯アップ
参照: 柳 崇(やなぎ そう) の作品/ 千成堂着物店公式通販サイト

半年ほど待ち、いよいよ帯が到着しました。ですが、着物は先に売れてしまい・・帯だけでのスタートになりました。(例の本場結城紬は小倉商店さんに頼み、新たに織っていただいています。納期1年以上予定。)

さて、織り上がった帯を見てみましょう。「緑と墨」の題が付けられた「縬間道染め分け九寸(しじらかんとう)」、いわゆる先染めの九寸名古屋帯です。

色と柄は落ち着いた雰囲気ですが、どことなく「愛らしさ」があります。 柳さんは幼いころより民藝に馴染み、目を鍛えたそうです。無名の職人が作ったものに宿る、さりげなさと美しさを愛でる「用の美」が民藝の基本的な思想ですが、この帯にもその思想が生きているのではないでしょうか。肩肘張って作りこんだ美しさとは一線を画して、どこかさりげなくも愛らしい、そんな高次元の織物です。

柳崇の帯前アップ
参照: 柳 崇(やなぎ そう) の作品/ 千成堂着物店公式通販サイト

「きれいになあれ、きれいになあれ、と想いながら織るのよ」 と織を手掛ける奥さまから伺いましたが、雑念なくやさしい気持ちで織らないと、この雰囲気は出ないのだと思います。奥様はもちろん、柳さんご本人の人柄の優しさが印象的でしたが、その生き方が糸を通じてこの帯の上に「さりげなく」存在しているのです。

柳崇の帯証紙
参照: 柳 崇(やなぎ そう) の作品/ 千成堂着物店公式通販サイト

柳さんは絹糸をつくる繭の段階からこだわります。群馬県の養蚕家の育てた 「ぐんま200」 という品種の蚕の繭から純国産絹糸をひき、工房にある50年前のものという撚糸機でゆっくりゆっくりと優しい撚りの糸をつくります。糸にこだわる染織家は多いですが、ここまで糸をつくり込む染織家は多くはありません。

柳崇の帯アップ、灰色のところ
参照: 柳 崇(やなぎ そう) の作品/ 千成堂着物店公式通販サイト

糸は草木染を基本に染めますが、灰汁をつかいこちらもゆっくりと発色・定着させます。 糸にダメージやストレスを与えないということが、優しい織上がりにつながります。また、手でゆっくりとつくった作品がエレガントな雰囲気をまとうのも、作品の特徴です。おそらく、適切な圧力をかけた砧打ちが行われていると思いますが、控えめなつややかさがあります。

柳崇の帯アップ花織
参照: 柳 崇(やなぎ そう) の作品/ 千成堂着物店公式通販サイト

題にもある「藍」「墨」は経糸の絣を組み合わせて、色を表現しています。またその絣の足がすっすっと生成り地にまで伸びて、単純ではない豊かな表情をあらわしています。また、緯糸に浮き織りを仕込み、地に立体感と緊張感を加えています。 総絣の結城紬に合わせて制作されていることもあり、格子は他の作品に比べていくぶんシンプル。ですがよく見ると格子の縁取りが生成り地にほんのりと彩を加えており、実に高度な設計の織物です。

ですが、その高度さに頼らない「さりげなさ」がこの帯の世界だと思います。水彩画や抽象画をぼんやりと眺めて、作者の世界に浸り、我に返るときのような静かな心の動き。穏やかですが、確かに「感動」しているのです。

ここまで来て言うのもなんですが・・あまり語りつくすのも無粋です。是非、店頭で手に取ってそのやさしさとさりげなさを感じ取って下さい。

三才山紬の着尺に柳 崇さんの帯をコーディネートする

柳崇の帯と三才山紬のコーディネート
参照: 柳 崇(やなぎ そう) の作品/ 千成堂着物店公式通販サイト

現時点、白の本場結城紬は切らしているので別の着物とのコーディネートをしました。こちらは三才山紬の着尺。優しく雰囲気がある紬ですが、こちらもしっくりと馴染みました。コーディネートは帯の持つ質感と優しさを着物とリンクさせるのがコツだと思います。

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