色無地の選び方が大きく変わりました
お世話になります。千成堂着物店 商品担当 井上英樹です。(@hidekiinoue_sennarido)
着物の選び方はどんどん変わっています。「着物には流行がない」とはもはや誰も信じていないと思いますが、特に大きく変わったのは「色無地」の着物です。
昔の色味の色無地は、今風の着こなしは難しい
では、色無地のどこが変わったのでしょうか?大きく変わったのは「色」と「質感」です。
特に色味は大きく変わりました。具体的にはリユースで見かける「紫色」「臙脂(えんじ)色」「抹茶色」「金茶色」「重いピンク色」のような色味を今っぽくコーディネートするのは難しいと思います。
また、昔に誂えたと思われる「肩に力の入りすぎた、妙に豪華な色無地」なども今風の着こなしには向きません。
さらに、時間が長く経っていると生地の風合いにも「劣化」が生じます。(最悪、裂けます)
今、色無地は「透明感のある色味」「すっきりと、でも、つややかな質感」のものが選ばれています。そこからかけ離れた色無地は、どうしても旧さ(ふるさ)を感じてしまいます。
もちろん、リユースの商品でも今っぽい雰囲気の色無地が無いわけではありません。当店もリユース品からでも最高品質の提案ができるよう努力をしています。
しかし、現実問題としてあまりにも中古の物量がリユース市場から減っており、ご紹介は難しいです。
値は張りますが「川勝の最高級色無地」には間違いがない
リユースから最新作までを横断して見続けた結果、見つけたのは「川勝の色無地」。これは心からお勧めできる色無地です。その色彩のセンス、控えめでも美しいツヤのある生地感、しわになりにくい堅牢度・・全てが完璧です。
リユース品に比べれば当然値は張ります。ですが、実際にお見せして、顔回りに合わせていただくと、皆さま納得の様子。その完成度で選ばれるのがこの色無地です。
川勝の色無地のこだわりを解説します
そもそもデパートやチェーン店系、催事系には品物が流通しない「染の川勝」。京都や東京銀座の老舗や、各地の有力専門店でしか手に取ることはできません。ものづくり、作品づくりに一切の妥協がなく、色無地にもその気合がみなぎっています。
色無地の品質は「生地」「染め」の二点でシンプルに評価できます。川勝の色無地はその二点で圧倒的に優れています。
色無地は生地で決まる
まず、色無地など染めの着物は生地の質で染め上がりが変わります。上質な絹のちりめんになればなるほど、染めが映え、底から光を放つような美しい着物が仕上がります。
川勝の色無地は、その作りこまれた生地に特徴があります。川勝の色無地は「三重織り」というオリジナルの特殊な白生地です。「染の川勝」とネームも織り込んだ完全にオリジナルの白生地です。
まず、糸から違います。川勝の色無地は繭からひく糸を、特に上質で美しい中央部分に厳選しています。これは非常に贅沢ですが、極上の生地を織り上げるためには必要なことです。また、艶感の強い天蚕(ヤママユガ) の糸を緯糸に加えて、地紋を際立たせています。染め上がりもよく、生地自体に非常に高級感があります。
また、最大の特徴として「しわになりにくい」です。三重織りは細かく調整された織物で堅牢。 お茶や和のお稽古で気になるあのひざ裏のしわができにくいです。
地紋には種類がありますが、当店では慶弔を問わない、小花や正倉院文様をセレクトしています。
色無地は染めで決まる
そして、生地の次には染めです。色無地の染めには大きく分けて「炊き染め」と「引き染め」の二種類の加工方法があります。炊き染めというのは文字通り、釜のなかで一反丸ごと煮て染めます。引き染めは一反を長く張り伸子(しんし)と呼ばれる棒でピンと張り、専用の刷毛で染めます。
どちらも優れた職人の技術で色無地の染めに使われます。一般的に炊き染めの方がコストが安いのですが、微妙な色の差を再現することが難しいです。川勝の色無地は繊細な発色と色彩をコントロールするために引き染めが選ばれています。
「グレイッシュな青、色の奥にほのかに緑と桜色があるように・・」と文章にするのも困難な色味が多いこだわりの色無地には、やはり引き染めが合うと思います。コスト優先という感覚はなく、妥協の無い染めはさすが「染の川勝」です。
また、写真のように濃い色味でニュアンスを出すのも川勝の色無地の得意技。濃い色はムラになりやすく染めるのが非常に難しいです。この発色は見事としか言いようがないです。
準礼装的に色無地をとらえると、様々に着られて良いと思います
非常に増えているのが「付下げに次ぐ着物」として色無地を誂え、帯を揃えるお客様。着物一枚に帯三枚とはよく言いますが、色無地は三枚どころか、相当の帯を楽しむことができる着物です。お勧めは「すっきり軽めの袋帯」「金糸使いのフォーマル名古屋帯」「カジュアルでお洒落な名古屋帯」を揃えて楽しむことです。
色々な意見がありますが、特にお茶などのお稽古で着用しない場合、紋を入れずに「紋なし」として誂えておくと、街着として着られるため、着られるシーンが増えると思います。(入れるとしても同系色の刺繍の一つ紋がお勧めです。目立たないので。)
写真のコーディネートは川勝の色無地と城間栄順(城間びんがた工房)さんの名古屋帯のコーディネート。洒落みのある帯に合わせて楽しめるのは紋の無い色無地ならではです。
「式典など色無地に袋帯を合わせて付下げ感覚に着る」着こなしが人気ですが、気を付けないと寂しい着こなしになってしまいます。ですが、川勝の色無地はその地紋が華やかなこともあり、見劣りせず素敵に着られます。実際にその感覚で選ばれる方も増えています。
単衣にもつくることができます
川勝の色無地は裏にも染めが通っているため、単衣のお仕立ても可能です。その場合同系色の八掛け(共八掛け)が付属しますので、のちのち袷に仕立て直すことも可能です。
今、川勝の色無地が選ばれています
生地・色味。言ってしまえばそれだけなのですが、やはり、良いものは良い!のです。たくさんの色無地を見て、触れて、品定めをしてきましたが、川勝の色無地には格別の味わい感じます。
なんとなくリユースで着物や帯を集めてしまった方もあると思います。そんな方にほど、この格別の味わいを知っていただきたいと思います。大げさかもしれませんが、人生が変わってしまうかもしれません!
されど色無地、されど着物。でも、知ってしまうと楽しいのがこの世界です!是非、店頭で体験してみてください。ご予約お待ちしております。