千成堂着物店では毎年、着物コーディネートの流行を予測しています。2017年から毎年一回発表していますが、その移り変わりをみてみるのも楽しいものです。
着物には、流行があります
着物には流行がない、と言われることがありますが、それは間違い。着物には流行があります。着物・帯の色や、ブランド、産地、厚み、小物使い・・など、流行を見つけることができます。
まず、大きな流行から押さえましょう。
2019年は、「 使いやすさ 」 が流行になる
2019年に流行する着物の大きなテーマは、「つかいやすい着物と帯」です。
当店は10を超える問屋さん、個人作家さんたち、リユース品の市場など、たくさんの仕入れ先があります。
各所には個性があります、例えば、工芸品や超一流の染織家を専門に扱う問屋さん、大きな展示会の商品を供給する大型商社、帯締めや帯揚げなど小物を専門にするところなど、いろいろです。
仕入れ先で目立つもの=流行の発信元?
仕入れに出向いたり、問屋さんが営業に見えたりと、相当な量を見分けていますが、その時に気が付いたのは、「少し薄手のスリーシーズン系帯」「金糸を軽くいれたセミフォーマル対応の名古屋帯」「柄付けの量を抑えた、付下げ風の小紋」「軽い柄付けの訪問着」「つややかでエレガントな紬」のように、シーンや季節の幅の広い商品や作品が、かなり増えているということです。
共通するのは、「軽やかな質感」や「抜け感」です。シーズンや格を幅広くおさえると、どうしても生地や織の厚みは薄く、軽い柄付けになります。
シーンや季節を選ばない商品のほうが、買いやすい。(売り手も売りやすい)という視点は確かにありますが、その質感が去年より続く流行のひとつ「 重くない、軽やかな色合い&素材感 」にぴったり合うのです。
展開が多くなれば、当然手に入れる方も増え、目につくようになります。結果、「つかいやすい着物と帯」が最も大きな流行になると思います。
例えば、当店でも飛び柄の小紋に軽めの洒落袋帯などコーディネートを提案しておりましたが、「ピンとくる!」との声をよくいただきました。
着物や帯は軽くなり、素材感を楽しむものになる
着物や帯の流行ですが、「素材感が楽しい着物や帯」も見逃せないキーワードです。
当店には去年の12月から夏帯が入荷しておりますが、人気が集中したのは、芭蕉布や藤布、からむし織など、植物の糸の質感を楽しむ自然布の夏帯でした。
去年、銀座の某有力店で行われた本場結城紬展では、撚りを強く加えた糸を使った結城縮が結城紬より人気だったそうです。
また、洛風林さんの帯は常に人気ですが、箔を巻き付けたフシ感ある糸を使った飛天錦も特に人気が高い。(飛天錦は適度な透け感があって、スリーシーズン的に使える、というのも人気の秘密でしょう。)
いずれも、素材感が独特なものばかり。去年に比べて、問い合わせは増加しています。
「 素材感を楽しむ着物 」流行の予感がします。
カラーコーディネートに大きな流行、それは白。
カラーコーディネートで目立つ動きがあります。それは、「白い着物」と「洒落ものに緑&黄色」です。
春先に人気といえば、白大島。ご存知、大島紬の白いものです。当然注目の紬ですが、今年はそれに合わせて、結城紬にも白が目立ってきています。
織られているいる量は当然少ないのですが、「エレガントな紬」をお探しの方が増えている今、当店でも意識して仕入れています。
緑や黄色も外せないキーワード。ちょっとしたアクセントとして、糸の一色に加わっていたり、帯の地色に採用されていたり。また大柄の格子の一色が黄色だったり・・。紬のジャンルの中では確実に流行しています。
着物の流行をとらえる、ということ
細かい流行は上げていくときりがなく、流行を追いかけることが全て、という気は全くありません。
ですが、お洒落な着物コーディネートを考えるなら、トレンドは一つの基準になります。
着物と帯をファッションとしてとらえること。現代的な着こなしに基準を見出すこと。その感覚で着物と帯を吟味していくのも、また楽しいもの。
洋服を着こなしている方が、着物になると途端に見当が外れてくる、そんな場面をよく見ていますが、洋服と同じ、トレンドを見極める感覚で着物も見ていっては、と思うのです。
2019年も素敵な着物ライフを、是非。
文章:井上英樹 監修:井上和子