古典を知的に装い、大人の余裕をまとう──今様に昇華された「江戸解」の帯
「今様にアレンジされた古典文様なら、知的にすっきり着られますね」
そう語るのは、弊店のコーディネートを手がけるマサエ。装いの“本質”をいつも大切に考える彼女がご提案するのは、時代に流されない美しさを、品よく、しなやかにまとうコーディネートです。
帯締めは同系色を選んでいます。絣の着物と古典柄の帯ですが、良い意味で古典に偏らない、都会的なワントーンコーディネートを意識しています。
工芸染匠 成謙さんに別注した作品
主役となるのは、京友禅染匠・成謙さんが手掛けた、千成堂別注の九寸名古屋帯。
研ぎ澄まされたモノトーンで描かれた江戸解文様はまさに今様の古典を体現しています。絶妙なバランスです。
生地は桐生の透けた紬生地を濃色に染めています。透け感が程よく調整され、夏芯を入れれば盛夏用に、通常芯であれば単衣用にも対応する仕上がりです。
江戸解文様の背景
「江戸解」とは、江戸時代に武家や大名家の女性たちがまとう小袖や打掛に描かれていた文様。
とりわけ、大奥の女中が拝領した衣を解いて仕立て直し着用したことから、その名がついたといわれています。
御所解よりも比較的「粋」を感じるモチーフが選ばれることが多いようです。はんなりとした雰囲気や公家的な意匠ではなく、自然や流水など、どことなく質実剛健的な世界観を思わせます。
夏塩沢｜本田利夫さんによる別注着尺
合わせたきものは、新潟・南魚沼の伝統工芸士・本田利夫さんにご制作いただいた「夏塩沢」。
強撚糸のシャリ感と、涼やかな透け感が心地よく、織の美しさが映える上質な生地です。
柄は、現地で過去の作品を紐解き見つけたもの。二色の絣糸を用い、大小を織り交ぜた凝った構成になっています。
引き算の美意識をベースにしながらも、どこかに遊び心を感じさせる意匠です。涼やかながらも印象に残る──夏の洒落着として、自信を持っておすすめできる一枚です。
「バリエーション」透けない単衣で愉しむ、知的で洒落た装い
こちらは透け感のない「単衣」に着物を変えた、もうひとつのコーディネート。濃い色の着物にあえて濃い帯を合わせることで、より一層際立つ粋な配色に仕上がりました。
きものには、千成堂の代表作とも言える野蚕白着尺の「濃藍色」を選びました。京都・丹後の機屋さんにオリジナルで制作を依頼する一品は、花織風の菱文様が立体的に浮かぶ印象的な着尺です。
染色は京都の手引き染工房に依頼し、色味の微調整を含め一反ごとに丁寧に仕上げたこだわりの一色になります。深みのある濃藍にほんのり紫が香る、知性的で華やかな色味が魅力です。
今回の江戸解の帯は芯の入れ方で季節に対応したお仕立てが可能です。単衣の時期を中心に締める方に最適な組み合わせです。
古典をいまに装い、大人の美しさを映す
知性をまとうように、静かに、でも確かに印象を残す。
控えめな華やかさと、大人の余裕が自然に感じられる。
古典の意匠を現代的に楽しむ、感性にふれる着こなしは、まさに着物の醍醐味ではないでしょうか。
この装いが、皆さまの豊かな時間に、そっと寄り添うものでありますように。
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