小島沙織さんから帯の染め見本が届きました。
紙のパネルに丁寧に納まって、この時点でもう好きすぎる。
九寸名古屋帯地 「Palazzo della Ragione(ラジョーネ宮)」を弊店のイメージで配色いただいた新作となります。
生地も複数のご提案をいただいた中から、丁寧に選びました。全てに良いのですが、現時点、最も雰囲気に合う「ある紬地」で決定です。
まだ、ここには詳細は書けませんがお問合せいただければ、分かる範囲でお答えします。
完売後のお問合せも多いです。ご予約や入荷情報が欲しい、また配色オーダーをご検討の方は、必ずお早めにご連絡下さいませ。
おそらく、弊店の別注作品の発表は4月?頃かと思います。
前回の配色はこちら「真夜中」のイメージです
小島沙織さんという人
小島さんは現在デザイン事務所「SHIMA ART & DESIGN STUDIO」を運営しています。
美術展の企画、エディトリアル、WEBのグラフィックやイラストのディレクション、また、パートナーの島田さんと共に「WARP WOOF 139°35°」という手織布プロダクトのブランドも運営されています。
染色作家というよりはデザイナーという捉え方がしっくりきます。図案から染色までを手掛ける「型染め」もご自身で手掛けており、この帯もその表現の一つです。
そして、全てにおいて説得力があるのは、小島さんという人のルーツにもあります。まず、御祖父様はあの芹沢銈介に師事し、民藝運動に参画した型染め作家「小島悳次郎」さんです。
上記のinstagramアカウントも小島さんが運営、貴重な資料が盛りだくさん。
「WARP WOOF 139°35°」の手織り布を手掛けるお母さまも国画会の染織家。妹さんも国展で新人賞を受賞した若手の染織家です。
ご本人もヨーロッパ各国を巡り、実地で見た景色や感動を蓄積。デザインに生かす様々な紙や布を膨大にストックして、さらにどんどん増やしているそうです。
何というか向き合い方が全く違う。
この手の話はどうしても「先代はすごかった」的になりがちなのですが、はっきり言いまして、小島さんはその話では説明ができません。
受けた影響を咀嚼、感性と融合。妥協なく収集された素材の上に描きあげるのは他ならぬ自分自身の表現なのです。
日本民芸館の公募展でも作品は入選。
実際に現地で見ましたが、まさに火の玉ストレートの民藝。生地との染のマリアージュが半端ではなく、見とれてしまいました。
技巧だけでも、意匠だけでもなく、まさにそれは「空気感」懐古趣味ではなく、フレッシュでもある。一階と二階をうろうろしながら見えた映像を噛み締めました。
なんというか、文章にはしにくいものです。
ちなみに、譲ってもらえるように頼んでいたのですが公募展最終日に完売!手にした人は幸せ者です。
そして、「手を動かすのが好き」というのが表現に大きく影響していると思います。
これは2022年の年賀状です。
和紙を裂き平織に織り上げてあります。
この年賀状が届いたとき「この人は心底手を動かすのが好きなんだな」と感動しました。虎っぽい感じでもあり、布に携わる意思表示であり、プロダクト&グラフィックデザインでもある。
「アートは文字の情報量を遥かに超えた言語」
誰が言ったか、まさにそのものでした。
(※喪中なのにうっかり送ってしまった!とすごく謝られたのですが、年賀状は母にも見せたいくらい素敵なので、良く見せておきました笑)
私は作品への評価に没頭するのも好きなのですが、小島さんについては「生き方・表現・すべて作品」であって一つの作品だけをすくいあげて、評価するだけでは足りないと思っています。
これから伸びていく枝葉も、そこに実る実も。
すべてが楽しみな人です。
作品担当 井上英樹