実はかなり難しい小紋のコーディネート・・
当店では、着物コーディネートの相談を承っていますが、小紋は「どんな場面に合う着物ですか?」という質問がかなり多いです。
「最初に総柄の小紋と色無地をつくろう、どこでも着られるって聞いたから。」こんなことは意外と多いのではないでしょうか。
ですが、総柄の小紋はかなりカジュアル色が強く、意外と着る場所が難しい着物です。
なければ、つくるしかない
そうはいっても、素敵な小紋が欲しい!という声は当店にもたくさん届きます。
まず、仕入れ品でその声に応えることができるのか?と考えました。
当店は大手の問屋さんと数多く取引をおこなっており、大抵のものは探すことができます。
ですが、感じの良い小紋というのは、本当に見つからないのです。
非常に凝った総柄やエキゾチックな柄はありますが、この場合には当てはまりません。
それならリユース・・と探しましたが、基本的に昔の年代のものであるリユース品では、現代の着こなしにあう小紋は見つかりません。
だったら、自分たちの考えるおすすめ小紋をつくってしまおう!ある日、そんな思い付きから、オリジナル小紋の企画がはじまりました。
飛び柄小紋、という提案
小紋のなかでも、幅の広い場面で着こなせる柄行きがあります。それは飛び柄といわれる小紋です。
隙間を広くとった、柄の飛んだ小紋のことです。これなら、すっきりとした着こなしができるはずです。
今回、程よい抜け感のある、お洒落な小紋を一緒に企画することにしたのは菱一さん。東京を代表する実力派、老舗染匠です。当店とも縁の深い正規取引先のひとつです。
様々な場面で着こなせる、現代的な着こなしが楽しめる便利でお洒落な一枚・・そのオーダーにきっと応えてくれるはず。
大人こそ似合う、着る場面を選ばないお洒落な小紋
今回は当店の考えた柄と色を商品科の担当さんに相談、豊富な知識を生かして、アレンジをしてもらいました。
幾度となく打ち合わせを重ね、営業担当さんにも足を運んでもらい、本当に妥協のない一反が完成いたしました。
当店の考えた万能小紋6つの条件
・場面を選ばない古典柄である
・すっきりした柄であること
・ちょっと金彩をきかせた、友禅染め
・落ち着いた品の良い大人色である
・しぼ感の少ないちりめん生地
・コストパフォーマンス
ということでした。きっとこの条件を満たした一反なら、良い提案ができるはず。さて、仕上がった一反を見てみましょう。
古典柄のすっきり小紋
柄は松菱、縁起の良い松を抽象的な菱型にデザインした代表的な古典柄を選びました。
古典柄を選ぶののには理由があります。あまり斬新な柄を選ぶと、似合う場面が狭くなるためです。
お茶の席など、和のお稽古の席に合う着物であること、それを使いやすい小紋の条件の一つと考えました。
また小紋柄の大きさにはかなりこだわりました、カジュアルになりすぎない程よい小ぶりな大きさに抑えています。
染めと色へのこだわり
最初に企画した地色は二色。数百色を超える色見本から妥協なく選びました。
まず、ひとつは極薄く青みがかったグレー。都会的ですが、冷たすぎないお洒落な色づかいを目指しました。
もうひとつは深い紫みの濃い茶色系、黒鳶色(くろとびいろ)です。着る人を美しく魅せる懐の深い色です。
染め加工は京友禅と引き染めです。繊細な色を表現する加工を選びました。引き染めは繊細な色を発色させやすいため、色にこだわる染めの着物には必須です。
落ち着いた大人色は明るい水色やピンクに比べて、新鮮なコーディネートが楽しめる色でもあります。
金彩を極軽くきかせたのもポイントです。少し改まったお席に合わせるフォーマル感と、さりげない上質感を演出してくれます。
生地はさらりとしたものを
しぼの少ないすっきりとした上質なちりめん地を選びました。
しなやかで品の良い光沢のある生地であれば、生地自体にも改まった印象がありますので、改まったお席にも映えますね。
でこぼこの大きい鬼しぼちりめんは、しっかりとした質感がありますが、洗練された雰囲気を出すため選びませんでした。
飛び柄の小紋は帯を変えることにより、どんなシーンにも対応します。
こうしてできた一反は、まさに現代的な着姿にふさわしい上質な逸品。ですが、現実感のない高すぎる一反では今回のコンセプトとは合いません。
大切にしたのはどんな場面にも合うこと、年代を選ばないこと、帯を買えれば新鮮なコーディネートが楽しめること。これが最高のコストパフォーマンスを生み出すのです。
限られた帯しか合わないことや、若いうちしか着られない・・など着る年代を選ぶことは、使う場面を制限してしまうため、結果として高い買い物になってしまうと思います。
シンプルな飛び柄小紋・大人色である意味
袋帯、名古屋帯と色々な帯が合わせられれば、席や場面に合わせて着物の格を細かく調整ができます。
メインのコーディネートとして考えたのは、白陵苑大庭さんの更紗柄を織り出した帯です。更紗柄はカジュアルに合う柄ですが、細かく金糸を散らし織り上げることにより、適度なキチンと感をプラスした帯です。飛び柄小紋に合わせるのは最適と考えました。
袋帯を合わせると格が上がります。こちらは河合美術織物さんの袋帯です。このように合わせれば、付下げと同程度のセミフォーマル的な着こなしが可能です。
例えば卒業式や入学式など各種式典、お茶など和のお稽古にもぴったりです。
レストランでのお食事会など少しカジュアルな場面には、名古屋帯を合わせます。クラス会など、頑張りすぎたコーディネートを避けたい場面にもおすすめです。
吉祥柄の帯を選べばお正月などイベントを楽しむ着こなしにもなります。(古典柄の着物であれば、帯の柄も色々と選べますね、これもポイントです)合せたのは塩瀬の名古屋帯、川勝さんのお品です。
年代を選ばない絶妙な色あい
年代を選ばないのもポイントです。30代の方は白系の帯ですっきりと着こなす。60代なら落ち着いた地色の帯を選んで落ち着いた着こなしに。ずっと着られ、飽きがこないことも大切。
紋は入れない
また、紋を入れないでお仕立てするのがお勧めです。紋を入れてしまうと格が高くなってしまい、幅広いお席に合わせにくくなってしまいます。
協賛により実現した最高の価格
価格にもこだわりました。手縫いお仕立て代(海外)を入れて、23万円(税別)でのご紹介です。
幅広い着こなしを楽しめる小紋をよい価格でお納めできるよう、菱一さんに協賛をいただきました。
菱一さんはじめ一流の染匠の扱い品は、色無地でも20万円を超えてしまうことを考えると、まさにお買い得です。
(※2018年11月現在の価格です。白生地など価格の高騰により、価格変更する場合がございます。)
お好みの色にオーダーメードも可能です
また、欲しいお色味をご相談いただければ、別染め品(オーダーメード)も一反から制作可能です。
納期は発注確定から約二か月となりますので、お早めにお申し付けくださいませ。
万能の小紋を持つことは賢い選択!
今回、お客様方の声を受け小紋を企画いたしましたが、あわせやすい小紋は一つ持っておくと大変重宝です。
とはいえ、様々な場面に合わせたコーディネートを考えるのはなかなか難しいものです。
当店はトータルコーディネートを含めてのご案内も頑張っておりますので、お悩みの方は是非「こんなときに着たい」とご相談ください。
店頭はもちろん、電話やメールでもご案内いたします!