今回、ご紹介したい作品はこちら、「まゆ織工房 上原美智子氏 の九寸帯地(夏帯)」です。
染織作家 上原美智子さんの表現する帯地は、独自の感覚で操る琉球藍の配色と、糸つくりの面白さを詰め込んだ単衣・夏帯です。
染織作家 上原美智子氏について
1949年那覇市生まれ / 柳悦博氏、大城志津子氏に師事した後、まゆ織工房を南風原町に設立。独自の技法”あけずば織”を極めるアルティザン。あけずばとは琉球の古語でとんぼのことです。蚕の吐き出す糸そのままを生かして織り出し、風に舞うとんぼの羽のような軽さと美しい透明感を実現した”わずか3グラム”のストールが代表作ではないでしょうか。沖縄の光と風を映す、とは資料にあった言葉ですが、まさにそのもの。
また、そのセンスが素晴らしい。作品は東京都国立近代美術館に収蔵される美術品でもあります。人の手から生み出される織物は数ありますが、その中でも最も美しいものの一つです。
また、氏の世界観や視点は常に前を向いています。
あけずば織にとどまらず、糸の面白さ、染の面白さをふっと力を抜いた作品に変えていく・・しかしそれは「挑戦」というような気張った言葉ではなく、「生き方」の素直なあらわれのような気がします。
工房にもお邪魔いたしました。「かわいい」「たのしい」「でも、適度な緊張感」のある、織物だけにとどまらないコレクションの数々、チャレンジングな糸の素材を常に視界に入れて、織ること、生きることを楽しむ姿が本当に印象的な方です。
「織ることが好き」
その言葉にすべてがあるような気がします。
その織物を帯にする、ということ
こちらの作品にフォーカスしてだけ言えば、涼しげな雰囲気を生かした夏帯が最も素直な理解でしょう。
琉球藍を強く発色させず、グレイッシュなセンスの良い色味に表現。シャリ感のある赤城の節糸の雰囲気と合わせて、夏の、単衣の着姿を楽しく素敵にしてくれるはずです。
糸で愉しむ、上原美智子さんの帯
赤城山麓で極少量生産される赤城節糸を使ったこちらは、一本一本の糸が表情豊かです。昔ながらの技法(平廻し座繰機)でゆっくりと引かれた糸は独特な凹凸があり、光を優しく返してくれます。染めは琉球藍、自然な色合いの薄藍色~薄紫色を染めています。
光に透かすと、琉球藍で染め上げられた色合いが浮かび、また表情を変える。決して派手さはありませんが、不思議と説得力があるのです。すっきりとした柄行なのですが、どこか優しくふうわりした雰囲気があります。
上原美智子さんの帯のコーディネート
実際にコーディネートしてみましょう。優しい色合いの帯です、締まった色のきものに合わせて、また中間色的なコーディネートに合わせてみてはいかがでしょうか。夏結城や宮古上布、八重山上布、または夏塩沢や夏大島・・上質な夏きものにきっとニュアンスを加えてくれるはず。
吉野織の技法でつくられていますが、よくある緊張感のある吉野織ではなく実におおらか。実際に優しいお人柄の方なのですが、帯のやさしさにも表れている気がします。
まゆ織工房の正規品取扱いについて
こちらの一反は希少な染織や工芸品を主に取り扱う、京都の老舗問屋さんよりご推薦をいただいた名品の一つです。
着想・試作・一つ一つの糸作り・染め・織る。数か月ともいえる時間と手仕事による制作のため、取り寄せなど確約はできません。現物でのご紹介、次回作品の入荷情報など限りなくのんびりとお待ちいただくことになります。せっつくような無粋なことはできません。ですが、お待ちいただく価値は十分にあります。確実にあります。
お、と思った。気が付いた方は一刻早くご連絡ください。ある時にしかないものです。
ご購入後の洗い張り加工や、クリーニング、しみ抜きなど、全て完全にサポートさせていただきます。
デリケートなお色みのこちらも、安心して末永くご愛用くださいませ。