華やかな琉球花織の魅力と種類5つ

素朴な紬から華やかな花織へ

結城紬や大島紬など織りの着物を愛する方々の間で、今注目が高まっているのが「琉球花織」です。

糸を浮かせて作る小さな点で、さまざまな紋様を織り表す花織は、一目でそれと分かるほどに特徴的。

浮糸部分は絹の艶やかな光沢が感じられ、見る角度によって華やかに煌めきます。

戦争の打撃からの復興と新しい花織の誕生

花織は沖縄の各地で織られていましたが、いずれも戦争によって壊滅的な打撃を受けています。

一度途絶えた伝統は、戦後になって復興に取り組んできた人々の地道な調査と研究によって現在に甦りました。

伝統的な技法やデザインだけでなく、新たな技法やデザイン・色使いも取り入れられ、上品な色彩のものなどは特に人気があります。

一口に琉球花織といっても、作られる地域によって織り方やデザインが異なります。

今回は、沖縄各地に伝わる花織の特徴についてご紹介していきます。

琉球花織の種類

琉球花織は地域によって特徴があります。

読谷山花織(ゆんたんざはなうい)

600年の歴史を誇った読谷山花織は、明治時代中頃には時代の変化とともに衰退し、戦後には「幻の花織」となっていました。

復活を遂げたのは1964年。復活に貢献した與那嶺貞氏は1999年に90歳で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。

読谷山の花織は、地となる経糸に緯糸を浮かせることで、模様となる点を表現します。

模様として使われない糸は裏面で浮糸となり、表の模様から模様まで糸が渡った状態です。

そのため裏地を付けて袷に仕立てて着用します。

基本となる「花」の模様は下記の3つです。

 

銭花(じんばな)

お金をかたどった模様で裕福になりますようにという願いをこめて。

 

 

扇花(おーじはな)

末広がりの扇形を写した扇花で子孫繁栄の願いをこめて。

 

 

風車花(かじまやーばな)

97歳になると風車を配る習慣から長寿の願いをこめて。

 

 

画像元:読谷山花織事業協同組合

知花花織

読谷山花織と異なり、経糸を浮かせることで模様を作る「経浮花織」が特徴です。

他にも「縫取花織」という別の糸を縦に織り込む技法もあります。

ウマハラシーと呼ばれる馬乗り競争や、ウスデークと呼ばれる五穀豊穣を願う祭りのための衣装として、知花花織が織られていました。

琉球王府への貢物としてではなく、祭りの衣装として作られた知花花織は、自由なデザインが生み出されました。

戦後ほぼ断絶した状況の中、2000年に幸喜新氏を中心として復興のための活動がスタートし、2012年には国の伝統的工芸品として指定されています。

首里花織・首里花倉織

首里花織も首里花倉織も『首里織』という、首里に伝わる製織法のひとつです。

様々な技法の残る首里織は、大城志津子氏と宮平初子氏によって現在に再び甦りました。

首里花織

士族以上の階級の着衣として用いられたもので、主な技法には下記の両面浮花織・緯浮花織・手花織・経浮花織の4種類があります。

首里花織の中でも特に人気のある両面浮花織は、片面は経糸を浮かせ、もう片面は緯糸を浮かせて柄を織り出します。どちらを表にもできる織物です。

 

 

両面浮花織

 

 

 

 

緯浮花織

 

 

 

 

手花織

 

 

 

 

経浮花織

 

 

画像元:那覇伝統織物事業協同組合

首里花倉織

 

 

 

 

 

花倉織は、王家の妃や王女のための夏衣として用いられたもので、花織と絽織・紗織を組み合わせ透け感を持たせ、市松又は菱形模様に織られています。

絹が用いられており大変薄く、ハリのある質感です。

 

琉歌にも花倉織は「トンボの羽のように透き通り軽くて美しい」と歌われたそうだ。

出典:『残したい手しごと 日本の染色』 片柳草生 世界文化社

花倉織がどんな織であるか、この一文で伺えます。

与那国花織(よなぐにはなおり)

日本の最西端にある与那国島で織られる与那国花織。

500年の歴史を持つという与那国花織は、島に自生する草木で染められており、天然染料ならではの落ち着きのある優しい色合いです。

首里花織にもある「両面浮花織」で、裏表が決まっておらず、単衣向きの織物です。

代表的な柄には下記のものがあります。

八つ花(ダチンバナ)

四つ花(ドゥチンバナ)

五つ花(イチジンバナ)

画像元:与那国町伝統織物協同組合

南風原花織(はえばるはなおり)

南風原は沖縄のほかの地域との交流の中で徐々に織物の技術を高めてきました。

明治頃には、花織を母から娘へと伝えていたようです。

特に生産が本格化したのは大正頃で、大正3年に南風原村立女子補修学校が設立され、その後村内に3つの工場が建設されるなど、産業として栄えてきました。

沖縄のほかの地域同様に、沖縄戦によって織物産業は壊滅状態になりましたが、戦後に復興機運が高まり、現在に織り継がれています。

2017年1月には南風原花織は国の伝統的工芸品に指定されています。

「両面浮花織」のほか、「クワァンクワァン織」と呼ばれる裏面に遊びの浮糸が出る織り、「チップガサー」という竹べらを使って模様となる糸を差し込む織り、「紗紋織」という地となる糸で模様を織り出す方法など種類が多いのも特徴です。

南風原ならではの独特の呼び名があり、両面浮花織の技法の中に「タッチリー」「喜屋武八枚(きゃんはちまい)」など独特の呼び名を持つ技法もあります。

出逢える機会はごくわずか

人気の高まりとは逆に、琉球花織のお品と出逢える機会はごくわずかです。

帯ではなく着物を探すとなればなおのこと。

花を織り込むためには糸の数も多くなり、一反を織るための手間は格段に上がります。

出回る反物数は決して多くはございませんので、出逢えたときには「一期一会」と思って向き合いたい逸品であることは間違いありません。

参考文献

琉球布紀行 澤地久枝 新潮社 2000年12月20日

私の花織・花絽織 鳥巣水子 求龍堂 2004年11月10日

残したい手しごと 日本の染色 片柳草生 世界文化社 2017年6月15日

美しいキモノ ハースト婦人画報社 2017年夏号 2017年05月20日

沖縄染織王国へ 与那嶺一子 新潮社 2009年5月25日

図説 琉球の染めと織り 児玉絵里子/天空企画 河出書房新社 2005年6月30日

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